いすかのはし
夢主の名前
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『精進しろよ』
言われなくたってやるに決まっている。
どれだけ技を磨いても、何百、何千とシグレに打ちのめされ、自尊心を傷つけられる。
せめて、何かとっかかりになれば、と前に一度、キキョウにせがんでソウマ家の奥義を見せてもらった。
心の何処かで、ロクロウはみくびっていたのだ。
キャスパリーグの双剣、そう呼ばれながらもランゲツには及ばない、ソウマの剣を。
けれど、キキョウが見せた剣は、ロクロウが見てきたソウマ家の人間達のそれとは、あまりにも一線を画すものだった。
風に散らされる花びら。
捉え難いはずのそれは、いとも容易く、キキョウの剣で次々と切られていく。
その横顔はあまりに清廉で、鮮烈で、しばらく呆けて見つめてしまった。
そして、我に帰ったロクロウが、キキョウに抱いてしまったのは、強烈な嫉妬だった。
気づけばその技を教えてくれ、とキキョウに迫っていた。
キキョウは、ロクロウの気迫に少したじろぎ、押されながらも教えること自体は拒まなかった。
むしろ、熱心に、丁寧にロクロウの修練に付き合ってくれた。
がむしゃらに剣を振るうが、花を切先に当てることすら難しい。
なんとか当てれるようになった頃のことだ。
ふいにやってきたシグレが、ロクロウの前で見せつけるように、花を切ったのだ。
ロクロウは絶句した。
ソウマの奥義。
それを、自分の方が前からキキョウに教わっていたにも関わらず、見ただけでそれをあっさりとシグレが成してしまったことに。
そして、いつものように意地悪く口の端をあげて、あの言葉を投げつけるのだ。
「精進しろよ。
悪いなキキョウ。こいつに付き合わせてよ」
「いえ、そんな……」
気まずそうにシグレを見送ったキキョウは、剣を握り直してロクロウに笑みを向ける。
「私もあの技を出来るようになったのはやっと最近ですから。
ロクロウ様も絶対に出来るようになります。
出来る限り付き合いますから」
それが下手な嘘でないことも、取り繕った慰めの嘘でないことも、わかっている。
けれど、やっと花を切れるようになって、キキョウがそれを自分のことのように喜んでくれても、ロクロウは心から喜べなかった。
殺しの仕事から帰って来る度に、キキョウはロクロウに泣き縋った。
子供みたいにぐずぐずと泣いて、しゃくりあげて、ロクロウの服を涙で濡らす。
そんなキキョウの哀れな様子で自分の自尊心を満たし、保たれている事実に嫌悪して、それが情けなくて、さらにキキョウの顔が見れなくなるの悪循環。
でも、まだ優しくはしてやれた。
いつしかキキョウは泣かなくなった。
帰って来るたびに顔色こそ青白くて、強張ってはいるものの、大丈夫か?とロクロウが尋ねると、大丈夫だ、と微笑む。
それは、悪いことではない。
キャスパリーグに仕える者として、そうなるのはむしろ成長だ。
けれど、自分がいなくても、キキョウは強くなる。
強くなれる。
言われなくたってやるに決まっている。
どれだけ技を磨いても、何百、何千とシグレに打ちのめされ、自尊心を傷つけられる。
せめて、何かとっかかりになれば、と前に一度、キキョウにせがんでソウマ家の奥義を見せてもらった。
心の何処かで、ロクロウはみくびっていたのだ。
キャスパリーグの双剣、そう呼ばれながらもランゲツには及ばない、ソウマの剣を。
けれど、キキョウが見せた剣は、ロクロウが見てきたソウマ家の人間達のそれとは、あまりにも一線を画すものだった。
風に散らされる花びら。
捉え難いはずのそれは、いとも容易く、キキョウの剣で次々と切られていく。
その横顔はあまりに清廉で、鮮烈で、しばらく呆けて見つめてしまった。
そして、我に帰ったロクロウが、キキョウに抱いてしまったのは、強烈な嫉妬だった。
気づけばその技を教えてくれ、とキキョウに迫っていた。
キキョウは、ロクロウの気迫に少したじろぎ、押されながらも教えること自体は拒まなかった。
むしろ、熱心に、丁寧にロクロウの修練に付き合ってくれた。
がむしゃらに剣を振るうが、花を切先に当てることすら難しい。
なんとか当てれるようになった頃のことだ。
ふいにやってきたシグレが、ロクロウの前で見せつけるように、花を切ったのだ。
ロクロウは絶句した。
ソウマの奥義。
それを、自分の方が前からキキョウに教わっていたにも関わらず、見ただけでそれをあっさりとシグレが成してしまったことに。
そして、いつものように意地悪く口の端をあげて、あの言葉を投げつけるのだ。
「精進しろよ。
悪いなキキョウ。こいつに付き合わせてよ」
「いえ、そんな……」
気まずそうにシグレを見送ったキキョウは、剣を握り直してロクロウに笑みを向ける。
「私もあの技を出来るようになったのはやっと最近ですから。
ロクロウ様も絶対に出来るようになります。
出来る限り付き合いますから」
それが下手な嘘でないことも、取り繕った慰めの嘘でないことも、わかっている。
けれど、やっと花を切れるようになって、キキョウがそれを自分のことのように喜んでくれても、ロクロウは心から喜べなかった。
殺しの仕事から帰って来る度に、キキョウはロクロウに泣き縋った。
子供みたいにぐずぐずと泣いて、しゃくりあげて、ロクロウの服を涙で濡らす。
そんなキキョウの哀れな様子で自分の自尊心を満たし、保たれている事実に嫌悪して、それが情けなくて、さらにキキョウの顔が見れなくなるの悪循環。
でも、まだ優しくはしてやれた。
いつしかキキョウは泣かなくなった。
帰って来るたびに顔色こそ青白くて、強張ってはいるものの、大丈夫か?とロクロウが尋ねると、大丈夫だ、と微笑む。
それは、悪いことではない。
キャスパリーグに仕える者として、そうなるのはむしろ成長だ。
けれど、自分がいなくても、キキョウは強くなる。
強くなれる。