クレハ
夢主の名前
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おまけ
未知の敵への警戒を強め、油断なく屋敷の奥へと進むベルベット達。
だが、少しだけ息が整ってきた頃合いを見計らい、エレノアが隣を歩くライフィセットに、こっそりと耳打ちするように口を開いた。
「あの……今だから言うのですが……」
「……うん」
ライフィセットも、エレノアが何を言おうとしているのか察したように、真剣な顔で頷いた。
「っ……怖かった……!!」
「うん……!!」
「別人とはわかっていても、キキョウそっくりの顔があんな恐ろしい形相に豹変するとは思わなくて……!」
「確かに、ちょっとぎょっとしたわね……。キキョウはあんな風に狂ったように笑ったりしないし……」
前を歩いていたベルベットも、わずかに顔を顰めながら同意する。
普段、物静かで穏やかなキキョウと同じ顔だったからこそ、あの血に飢えた狂気はひどく不気味で恐ろしかったのだ。
「クレハ自身が言っていたように、あれはクレハから切り離された“業”そのものだ。実際の本人は、もっと分別のある女だっただろう」
「いやいや。そもそも心を二つに分けるなどという荒業をやってのける時点で、相当イカれとるぞ。自ら自分の心を壊そうとしたようなものじゃ」
マギルゥが呆れたように肩をすくめる。
愛する夫を傷つけないためとはいえ、自分の心の一部を物理的に切り離すなどという発想は、常人のそれでは到底あり得ない。
「俺は嫌いじゃないけどなぁ。
あいつのご先祖様なだけあっていやぁ、強かった!」
そんな中、ロクロウだけは一人、クレハとの死闘を思い返して楽しげに笑っている。
恐怖よりも、凄まじい剣術の達人と斬り合えた充実感の方が勝っているらしい。相変わらずの夜叉としての顔に、ベルベットが冷たい視線を突き刺す。
「あんたが楽しかったのは勝手だけど、おかげで無駄に消耗したわよ……!」
「ははっ、悪い悪い。……でもまぁ、あれで少しは目が覚めたよ」
ベルベットに睨まれながらも、ロクロウの足取りに一切の迷いはない。
その背中には、先ほどまでの鬱屈とした後悔を振り払ったような、確かな熱が宿っていた。
未知の敵への警戒を強め、油断なく屋敷の奥へと進むベルベット達。
だが、少しだけ息が整ってきた頃合いを見計らい、エレノアが隣を歩くライフィセットに、こっそりと耳打ちするように口を開いた。
「あの……今だから言うのですが……」
「……うん」
ライフィセットも、エレノアが何を言おうとしているのか察したように、真剣な顔で頷いた。
「っ……怖かった……!!」
「うん……!!」
「別人とはわかっていても、キキョウそっくりの顔があんな恐ろしい形相に豹変するとは思わなくて……!」
「確かに、ちょっとぎょっとしたわね……。キキョウはあんな風に狂ったように笑ったりしないし……」
前を歩いていたベルベットも、わずかに顔を顰めながら同意する。
普段、物静かで穏やかなキキョウと同じ顔だったからこそ、あの血に飢えた狂気はひどく不気味で恐ろしかったのだ。
「クレハ自身が言っていたように、あれはクレハから切り離された“業”そのものだ。実際の本人は、もっと分別のある女だっただろう」
「いやいや。そもそも心を二つに分けるなどという荒業をやってのける時点で、相当イカれとるぞ。自ら自分の心を壊そうとしたようなものじゃ」
マギルゥが呆れたように肩をすくめる。
愛する夫を傷つけないためとはいえ、自分の心の一部を物理的に切り離すなどという発想は、常人のそれでは到底あり得ない。
「俺は嫌いじゃないけどなぁ。
あいつのご先祖様なだけあっていやぁ、強かった!」
そんな中、ロクロウだけは一人、クレハとの死闘を思い返して楽しげに笑っている。
恐怖よりも、凄まじい剣術の達人と斬り合えた充実感の方が勝っているらしい。相変わらずの夜叉としての顔に、ベルベットが冷たい視線を突き刺す。
「あんたが楽しかったのは勝手だけど、おかげで無駄に消耗したわよ……!」
「ははっ、悪い悪い。……でもまぁ、あれで少しは目が覚めたよ」
ベルベットに睨まれながらも、ロクロウの足取りに一切の迷いはない。
その背中には、先ほどまでの鬱屈とした後悔を振り払ったような、確かな熱が宿っていた。