置き去りの願い
夢主の名前
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次にベルベット達が訪れたのは、他の部屋とは違い、几帳面なほどきっちりと襖が閉ざされた開かずの間。その重く閉ざされた襖の前に立っていた。
「開かないわね……」
ベルベットが力を込めても、戸は微動だにしない。ただ物理的に施錠されているわけではなく、表面には目に見えない力の膜のようなものが張られているようだった。
「構造はよく似ておるが、これは聖隷術ではないな。術式に流れる力に穢れが混じっておる」
「でも、何処かに結界の基点となる仕掛けがあるはずだ」
ロクロウの言葉に従い周囲を探索すると、隣接する部屋の死角に、一枚の古い札が隠されているのが見つかった。ベルベットが業魔手でその札を破り握り潰すと、空気がふっと緩み、襖を縛っていた目に見えない枷が解け落ちた。
「……行くわよ」
ベルベットが警戒しながら戸に手を掛け、勢いよく開け放った、その瞬間。
闇の中から、鋭い斬撃がベルベットの首筋を狙って、飛び出してきた。
「っ!」
ベルベットは咄嗟に後ろへ飛び退き、同時に横から踏み込んだロクロウが、その凶刃を己の剣で受け止めた。
数合、火花を散らすほどの鋭い剣戟が交わされる。相手の剣圧にロクロウが笑みを深め、互いの力が拮抗したところで、両者は弾かれるように大きく距離を取った。
静まり返った空気の中、中に閉じ込められていた“敵”を睨み付けた全員が、信じられない光景に固まる。
「キキョウ……!?」
エレノアが思わず叫んだ。
そこに立っていたのは、消息を絶って久しい、キキョウに瓜二つの女だった。
だが、纏う空気と、装いがあまりにも違う。
長い黒髪を高く一つに結う、凛とした勝気な佇まいで立つ彼女の背後。
本来なら厳かであるはずの当主の間は、刃物で何度も滅多斬りにされたように壁も床もズタズタに引き裂かれた、凄惨な状態となっていた。
女は、警戒するベルベットたちを見て、口元を弧に歪めた。
「ははっ!いい反応だ!特にそこのお前。
お前、ランゲツの剣士だろう?
それも號嵐を担いでいるということは、お前が当代のシグレか」
楽しげに響く声に、ロクロウはゆっくりと首を振る。
「いや、ランゲツの剣士なのはそうだが俺は業魔だ。シグレの名は継がない」
「うん?よくわからんがつまりランゲツの家はお前で途絶えるということか?」
女は不思議そうに小首を傾げた。その顔立ちは、やはりどう見てもキキョウそのものだ。
たまらず、ライフィセットが一歩前に出て問いかける。
「あなたはキキョウじゃないの……?」
その問いに、女は目を瞬かせた。
「キキョウ?……もしや、それは私の裔の名か?」
女は刀を鞘に納めると、堂々とした声で名乗った。
「私はクレハ。クレハ・ソウマだ」
「開かないわね……」
ベルベットが力を込めても、戸は微動だにしない。ただ物理的に施錠されているわけではなく、表面には目に見えない力の膜のようなものが張られているようだった。
「構造はよく似ておるが、これは聖隷術ではないな。術式に流れる力に穢れが混じっておる」
「でも、何処かに結界の基点となる仕掛けがあるはずだ」
ロクロウの言葉に従い周囲を探索すると、隣接する部屋の死角に、一枚の古い札が隠されているのが見つかった。ベルベットが業魔手でその札を破り握り潰すと、空気がふっと緩み、襖を縛っていた目に見えない枷が解け落ちた。
「……行くわよ」
ベルベットが警戒しながら戸に手を掛け、勢いよく開け放った、その瞬間。
闇の中から、鋭い斬撃がベルベットの首筋を狙って、飛び出してきた。
「っ!」
ベルベットは咄嗟に後ろへ飛び退き、同時に横から踏み込んだロクロウが、その凶刃を己の剣で受け止めた。
数合、火花を散らすほどの鋭い剣戟が交わされる。相手の剣圧にロクロウが笑みを深め、互いの力が拮抗したところで、両者は弾かれるように大きく距離を取った。
静まり返った空気の中、中に閉じ込められていた“敵”を睨み付けた全員が、信じられない光景に固まる。
「キキョウ……!?」
エレノアが思わず叫んだ。
そこに立っていたのは、消息を絶って久しい、キキョウに瓜二つの女だった。
だが、纏う空気と、装いがあまりにも違う。
長い黒髪を高く一つに結う、凛とした勝気な佇まいで立つ彼女の背後。
本来なら厳かであるはずの当主の間は、刃物で何度も滅多斬りにされたように壁も床もズタズタに引き裂かれた、凄惨な状態となっていた。
女は、警戒するベルベットたちを見て、口元を弧に歪めた。
「ははっ!いい反応だ!特にそこのお前。
お前、ランゲツの剣士だろう?
それも號嵐を担いでいるということは、お前が当代のシグレか」
楽しげに響く声に、ロクロウはゆっくりと首を振る。
「いや、ランゲツの剣士なのはそうだが俺は業魔だ。シグレの名は継がない」
「うん?よくわからんがつまりランゲツの家はお前で途絶えるということか?」
女は不思議そうに小首を傾げた。その顔立ちは、やはりどう見てもキキョウそのものだ。
たまらず、ライフィセットが一歩前に出て問いかける。
「あなたはキキョウじゃないの……?」
その問いに、女は目を瞬かせた。
「キキョウ?……もしや、それは私の裔の名か?」
女は刀を鞘に納めると、堂々とした声で名乗った。
「私はクレハ。クレハ・ソウマだ」