一足遅く
夢主の名前
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対魔士達の魂を贄に捧げ、四聖主の復活を成し遂げたベルベット達は、カノヌシの領域が消えた世界の影響を見てみたい、と、エレノアが言い出したことで、ひとまず王都ローグレスに訪れた。
聖隷達が意志を取り戻したことで、対魔士達は聖隷術を使えなくなり、聖領も民衆も慌ただしく混乱し、民衆の不安の言葉がそこかしこから聞こえる。
けれど、今のロクロウにとっては、それらはどうでもいいことだ。
メイルシオから今日までの数日間、キキョウが一度も夜に自分の部屋を訪れなかったことが、ロクロウはこのところ気に掛かっていた。
無論、理由はわかっている。
シグレとの決着、メルキオルとの死闘、四聖主の覚醒。
怒涛の如く過ぎ去った日々、さらにまだ導師アルトリウスとの決戦だって控えている。
単純にそれどころではなかった、というのは百も承知だ。
それに、別に来ないなら来ないで、ロクロウにとって何か不都合があるわけでもない。
ただの体だけの関係、とうの昔に互いに割り切っているはずだった。
それなのに、一人になるとどうしてこんなにも胸の奥がもやつくのか。
「(俺は一体、何を気にしてるんだ……?)」
宿屋の壁に寄りかかり、腕を組んで無意識に眉根を寄せていたロクロウに、突然に声がかけられた。
「ロクロウ?どうしたの?」
「ん……ああ、ライフィセット。いや?なんでもない」
考えを振り払うようにしていつもの調子に寄せた声で返すが、当のライフィセットは納得のいかない様子でじっとロクロウの顔を見上げている。
「なんでもなさそうには見えないよ。ロクロウ、時々今みたいな顔してることよくあるし」
「そう、なのか……?自分じゃよくわからん」
ライフィセットの言葉に、ロクロウは思わず目を丸くした。
今までも、自分は何かを抱え込んでいるような、そんな顔をしていたという。
「うん。なんて言うのかな……」
ライフィセットは少し首を傾げ、今までの旅路の中で見聞きした様々なことを思い返し、その中から拾い上げてきた言葉をロクロウに告げた。
「“寂しそう”?」
「は……?」
突きつけられた無垢な一言の意味を、ロクロウはすぐには理解出来なかった。
「そう、見えるか?」
「うん」
「そうなのか……」
独り言のように呟いて、ロクロウは自嘲気味に息を吐いた。
業魔になって、そんな人間らしい感情はとうの昔に失くしたと思い込んでいた。
なんなら、今でさえライフィセットの勘違いなのではないか、と思ってしまっているぐらいだ。
けれど、キキョウと肌を重ねた翌日の朝はいつも、今と同じように胸がもやついていて、そうでなかった日は、珍しくキキョウが隣で朝まで寝ていた時だと、思い至ってしまった。
「ああ……そうか。寂しいのか、俺は……」
自分でも気付かないうちに、キキョウが隣にいないことに戸惑い、寂しいと感じていたという事実に、ロクロウは自分で自分がわからなくなった。
聖隷達が意志を取り戻したことで、対魔士達は聖隷術を使えなくなり、聖領も民衆も慌ただしく混乱し、民衆の不安の言葉がそこかしこから聞こえる。
けれど、今のロクロウにとっては、それらはどうでもいいことだ。
メイルシオから今日までの数日間、キキョウが一度も夜に自分の部屋を訪れなかったことが、ロクロウはこのところ気に掛かっていた。
無論、理由はわかっている。
シグレとの決着、メルキオルとの死闘、四聖主の覚醒。
怒涛の如く過ぎ去った日々、さらにまだ導師アルトリウスとの決戦だって控えている。
単純にそれどころではなかった、というのは百も承知だ。
それに、別に来ないなら来ないで、ロクロウにとって何か不都合があるわけでもない。
ただの体だけの関係、とうの昔に互いに割り切っているはずだった。
それなのに、一人になるとどうしてこんなにも胸の奥がもやつくのか。
「(俺は一体、何を気にしてるんだ……?)」
宿屋の壁に寄りかかり、腕を組んで無意識に眉根を寄せていたロクロウに、突然に声がかけられた。
「ロクロウ?どうしたの?」
「ん……ああ、ライフィセット。いや?なんでもない」
考えを振り払うようにしていつもの調子に寄せた声で返すが、当のライフィセットは納得のいかない様子でじっとロクロウの顔を見上げている。
「なんでもなさそうには見えないよ。ロクロウ、時々今みたいな顔してることよくあるし」
「そう、なのか……?自分じゃよくわからん」
ライフィセットの言葉に、ロクロウは思わず目を丸くした。
今までも、自分は何かを抱え込んでいるような、そんな顔をしていたという。
「うん。なんて言うのかな……」
ライフィセットは少し首を傾げ、今までの旅路の中で見聞きした様々なことを思い返し、その中から拾い上げてきた言葉をロクロウに告げた。
「“寂しそう”?」
「は……?」
突きつけられた無垢な一言の意味を、ロクロウはすぐには理解出来なかった。
「そう、見えるか?」
「うん」
「そうなのか……」
独り言のように呟いて、ロクロウは自嘲気味に息を吐いた。
業魔になって、そんな人間らしい感情はとうの昔に失くしたと思い込んでいた。
なんなら、今でさえライフィセットの勘違いなのではないか、と思ってしまっているぐらいだ。
けれど、キキョウと肌を重ねた翌日の朝はいつも、今と同じように胸がもやついていて、そうでなかった日は、珍しくキキョウが隣で朝まで寝ていた時だと、思い至ってしまった。
「ああ……そうか。寂しいのか、俺は……」
自分でも気付かないうちに、キキョウが隣にいないことに戸惑い、寂しいと感じていたという事実に、ロクロウは自分で自分がわからなくなった。