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ユヅキ
ソウター…、
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インターホンをもう何度押したのか、記憶は曖昧なまま。
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ソウタが一人暮らしをしているハイツの玄関ドアの前で、
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扉が開かれるのをゆらゆらと待つ。
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アルコールで十二分に満たされた自分の体は、コントロールが難しい。
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じっと立っているのも気怠くて、玄関ドアの横壁にゴツンと額を押し当てた。
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ユヅキ
……
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冷たくて硬い壁の感触に、額をもう一度、今度は強めに打ち付ける。
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ギザギザした痛みが自分を諌めるみたいで、気分がスッとした。
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朝からの雨は一向に止む気配がなくて、今もなお降り続いている。
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でもこんな日は、
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雨の冷たさも、耳障りなくらいの雨音も、今の自分には心地いい。
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ユヅキ
……、
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しばらくすると、急くようにドアが開かれて、
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当惑したような双眸が私を見つめた。
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ソウタ
ユヅキっ、
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ソウタ
どうしたんだよ、こんな時間に?
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ユヅキ
仕事帰りだから、遅くなった…、
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ソウタ
遅いのは別にいいけど、
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ソウタ
仕事帰りにうちに寄るとか珍しいじゃん?
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
久しぶりに、ソウタの顔見ようかなと思って…。
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ソウタ
この間会ったばかりだけどな?
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笑顔を貼り付けたソウタだったが、
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改めて私の風采を見定めてすぐに訝る。
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ソウタ
つーか、
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ソウタ
結構雨に濡れてね?
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ユヅキ
…そんなに濡れてないよ。
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ソウタ
いや、濡れてるって。
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ソウタ
しかも、おまえ…、
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ソウタ
もしかして、酒飲んでる?
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ユヅキ
うん…。
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ユヅキ
ね、ソウタ。
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ユヅキ
ちょっとこれから一緒に飲まない?
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ソウタ
いやいや、
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ソウタ
おまえ、もう結構飲んでるじゃん。
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ユヅキ
まだ飲み足りない気分なんだけど…。
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ソウタ
ダメダメ、今日はもう飲むな。
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ソウタ
とりあえず、風邪引いたらマズイから、中入れよ。
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私の心許ない足取りを気にしたソウタは、手を繋いで室内へと連れ立ってくれた。
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ユヅキ
……
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髪から滴り落ちる雨の水滴が点々と私の小さな痕跡を廊下に残して
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それをぼんやりと眺めながら足を進める。
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何度か遊びに訪れたことのある、さほど広くないリビングは前に来たときと変わらずなかなかの散らかりようで。
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でも、
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ユヅキ
(…なんだか、ホッとするな…)
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どこか太陽みたいに暖かくて、優しい匂いがした。
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ソウタ
どこで飲んだんだ?
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ソウタ
いつもの店か?
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ユヅキ
違う…、
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ユヅキ
コンビニで買って…
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ユヅキ
…外で飲んでた。
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ソウタ
はあ?!
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ソウタ
バカヤロ、雨降ってんのに何やってんだよっ。
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ソウタ
だから濡れてんだな、ったく…。
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ユヅキ
…雨に濡れるのも、そんなに悪くないときだってある…。
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ソウタ
なに訳分かんねえこと言ってんだ。
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ソウタ
…とにかくまずは、着替えねえと風邪引くな…、
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ソウタ
なんか探してくるからちょっと待ってろ。
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ソウタ
俺の服でいいよな?
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ソウタ
…つーか、ここには俺の服しかないけど。
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ユヅキ
このままでいいよ…、大丈夫だって。
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ソウタ
ダメだっ。
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自分が愛用している座椅子に問答無用で私を座らせたソウタは、
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矢継ぎ早に隣の寝室に駆け込むと、着替えの服を見繕いながら続けた。
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ソウタ
そういえば、
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ソウタ
この間の同窓会で会った女子がさ、さっき俺のところに電話あったぞ、
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ソウタ
ユヅキと連絡が取れないって。
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
ああ、そういえば、
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ユヅキ
他にも何件か入ってたかな…。
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ソウタ
なんだ、知ってたのか。
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ソウタ
それなら折り返してやればよかったのに。
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ユヅキ
…まあ、後でね…。
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ソウタ
どうせなら、飲むの付き合ってもらおうって思わなかったのかよ?
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ユヅキ
こんな夜遅くに…、女の子に危ない真似させられないよ。
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ソウタ
いやいや。
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ソウタ
おまえも女だろ?
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ユヅキ
…ふふ、そうでした。
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薄く笑って、座椅子の背もたれに身を預ける。
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開け放ったクローゼットで衣類を物色し続けている颯太に、緩く視線を巡らせた。
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ユヅキ
……ね、ソウタ。
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ソウタ
んー?
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ユヅキ
明日休みだし…、
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ユヅキ
今日泊まってもいい?
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ソウタ
…ええっ!?
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ユヅキ
家に帰りたくないんだよね…。
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ソウタ
な、なんでだよ?
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両手に服を抱えてリビングに飛び込むように舞い戻ったソウタは、動揺しながら私を見下ろす。
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ユヅキ
『なんで』って…まあ、その…、
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戸惑いつつも深意を探り当てようと射抜いてくるソウタと視線を合わせないまま、
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一瞬言い淀んで、溜め息に乗せるように声を紡いだ。
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ユヅキ
居候が、いるから…。
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ソウタ
…は?
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ソウタ
サクヤくんのことか?
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ユヅキ
うん…。
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ソウタ
なんでだよ、
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ソウタ
一緒に住んでわりと経つのに、今更別にいいじゃんか。
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ユヅキ
……なんとなく、
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ソウタ
『なんとなく』?
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ユヅキ
うん…。なんとなく……、
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ユヅキ
キザキさんに、見られたくない…。
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ソウタ
なにを?
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ユヅキ
……
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ユヅキ
……弱った自分。
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ソウタ
…、
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ユヅキ
ソウタ、時々私の家に泊ったりするじゃん。
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ユヅキ
たまには私がここに泊まっても良くない?
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ソウタ
…い、いや、でも、
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ソウタ
俺は一人暮らしだしさ、
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ソウタ
常に他の家族がいるおまえの家に俺が泊まるのとでは、訳が違うだろ…、
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ユヅキ
いいよ、それでも。
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ソウタ
よくねえよ!
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ユヅキ
…なんで?
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酩酊しているせいもあってか、
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聞き分けのない子どものようにムッとソウタを睨んでしまう。
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ソウタ
……、
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散らばった答えをかき集めるかのように逡巡した様子のソウタはしばらく押し黙って、
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やがてその場に静かに膝を着くと、
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戻した視線の先で私を捉えながら、決まりが悪そうに目尻を歪めた。
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ソウタ
それは…、
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ソウタ
やっぱほら、いくら幼馴染でも大人の男と女だし、
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ソウタ
色々と気を遣うっつうか…、
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ユヅキ
……そか。
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ソウタ
おう。
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ユヅキ
颯太なりに、気を遣ってくれてるんだ。
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ソウタ
ま、まあな。
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ユヅキ
……分かった。
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ソウタ
着替えが済んだら、家まで送ってやるからさ。
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ユヅキ
うん、分かった…、
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ユヅキ
じゃ、野宿する。
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よろよろと立ち上がって、元来た廊下へと足を向ける。
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ソウタ
っ!
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ソウタ
ちょっ…、
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ソウタ
おまえっ、人の話をちゃんと聞いてねえだろ?!
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焦燥に満ちたようなソウタがすぐさま立ち上がり、すでに数歩進む私のコートの袖口を引っ張った。
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ソウタ
いいよっ、分かったからっ!
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ソウタ
外で一晩過ごすよりは、ここの方がまだマシだ。
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ユヅキ
…ありがと、ソウタ。
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ソウタ
ったく、仕方ねーな。
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ユヅキ
ふふ…、
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ユヅキ
っ、あれ…?
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満足げにゆるゆると微笑んだが、くらりとよろめいてソウタの肩口に頭を預ける。
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ユヅキ
…う。ごめん、
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ユヅキ
なんか目が回る…。
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ソウタ
ほらみろ、大丈夫か?
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ソウタ
酔いが回ってきたんだろ…、
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ソウタ
とりあえず、コレ、隣の部屋使っていいから先に着替えろ…な?
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ユヅキ
…うん、分かった。
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ソウタ
俺、ちょっとドライヤー取ってくるから。
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ソウタ
洗面所寒いから、髪はこっちの部屋で乾かせよ。
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私の肩をぽんぽんとやったソウタは、
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そのとき指に触れた髪の濡れ具合を気にしながら、洗面所へと姿を消した。
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