Vol. 2 ヤキモチだったら嬉しい。 ・3

  • アイリ

    …体、辛くないの?

  • レン

    ああ。大丈夫だ。

  • レン

    仕事が忙しかったせいで、忘れてたくらいだしな。

  • アイリ

    ふーん…

  • どこかじっとりとした視線を投げつけてくるアイリに、

  • 俺は柔く眦を歪めて揶揄するように見つめ返した。

  • レン

    なんだよ、

  • レン

    風邪なら大丈夫だって。

  • アイリ

    ……それならいいけど。

  • レン

    …怒ってるみたいに見えるぞ?

  • アイリ

    別にー。

  • レン

    (……まさかだとは思うが…、)

  • レン

    もしかして、妬いてんのか?

  • アイリ

    なんで妬くのっ。

  • レン

    合コンで、<お兄ちゃんが誰かに取られちゃう>…とか?

  • アイリ

    違うよっ。

  • アイリ

    風邪気味だったの知ってるから、普通に心配してるだけ。

  • レン

    …そりゃどうも。

  • レン

    (そんなわけねーか…)

  • アイリ

    ……

  • ふくれっ面を晒して、目玉焼きの残りを口に放り込んだアイリの力強い咀嚼は

  • モグモグと漫画みたいな効果音が聞こえてきそうで、

  • 俺は笑いを漏らしながら空いた皿を手に取る。

  • レン

    おそらく帰りは遅くなるから、ちゃんと戸締りして先に寝てろよ?

  • アイリ

    ……

  • レン

    …どうした?

  • アイリ

    風邪、ひどくなっても知らないよ?

  • レン

    平気だって、心配すんな。

  • アイリ

    そんなこと言って、

  • アイリ

    この間なんて熱出してぶっ倒れたくせに。

  • レン

    あれは…、

  • レン

    仕事で徹夜も重なって仕方なかったんだよ。

  • アイリ

    ほんとに知らないからね、

  • アイリ

    出先でしんどくなっても。

  • レン

    心配ねーって。

  • アイリ

    あ、そっか。

  • アイリ

    集まった女の人にいっぱい囲まれて、モテモテの合コンだもんね、

  • アイリ

    しんどくなってる暇もないよね。

  • レン

    あのな…、

  • アイリ

    かっこいい兄貴を持って、

  • アイリ

    私って幸せ者だなー。

  • 目の前のアイリは、どこか投げやりとも取れる態度でやや声高に言葉を並べた。

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