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レン
おい、起きろ、アイリ。
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アイリ
…んん…、
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アイリ
おはよ…、お兄ちゃん…
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レン
……、
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長い睫毛を震わせてうっすらと開いた瞼はどこか妖艶で、
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俺は一瞬、気まずさを覚えて視線を逸らす。
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幼い頃から兄妹として一緒に暮らす俺たちには、なんの遠慮も隔たりもないはずなのに。
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アイリ
…う…?
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アイリ
アラーム…、
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アイリ
あれっ…、おかしいな…?
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ベッドの枕元に置いてあったスマホを鷲掴みにしたアイリは、
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寝ぼけ眼でそれをゆさゆさと揺さぶった。
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レン
ハハッ、なにやってんだ。
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アイリ
アラーム…、鳴らなかったのかなあって思って…
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レン
鳴らなかったんじゃねーよ、
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レン
おまえが寝ぼけて止めたんだろ。
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アイリ
…あ、そっか…
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レン
ほら、朝飯できてるから起きて食べろよ。
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頭をぽんぽんとしてやれば、アイリは目を擦りながら頷いた。
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アイリ
ふぁぁ…眠い…。
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のそりと退けた掛け布団から、躊躇うことなく白い両脚が現れる。
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大きめのTシャツをパジャマ代わりにしているアイリのその姿は、正直俺には目の毒で、
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すぐに目線を横にずらして眉を顰める。
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レン
…おい、アイリ。
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アイリ
ん…なあに?
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レン
下になにも穿かないのは、さすがに体に悪いんじゃねーか?
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アイリ
どっち向いて説教してんの、お兄ちゃん。
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レン
……、
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レン
…いや、気にすんな。
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そっぽを向いたまま少しばかり落ち着かなく答えた俺に、
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アイリは揶揄うようにクスクスと笑い出した。
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レン
……
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アイリの目には、俺が純朴な青年にでも映ったのだろうか。
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どちらかといえば<女>を知り尽くしていると言える俺が、
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相手がおまえだからこそ思うような態度を取れないだなんて、口が裂けても言えない。
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レン
(…とにかく、だ)
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レン
昔から、女ってのは、体を冷やすと良くねえって言うだろ?
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アイリ
もう、お兄ちゃんって、世間のオジサンみたいなこと言うー。
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レン
オジサン…、
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レン
あのな、
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レン
俺はおまえのことを心配してだな、
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アイリ
はいはい、分かってますよ。
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アイリ
…さてと、起きるかなっ。
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畳み掛けながら大きく伸びをしてベッドから立ち上がったアイリは、
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軽く俺の説教を受け流し、弾むような足取りで部屋を後にした。
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