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キザキ
今日は、結構お酒飲んだの?
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ユヅキ
…あ、やっぱり臭い分かります…?
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キザキ
ううん、それは平気。
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キザキ
少し気怠そうだから気になっただけ…、
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キザキ
大丈夫?
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ユヅキ
平気です…、
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ユヅキ
私のことより、キザキさんの具合の方が心配ですよ。
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キザキ
えっ、
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ユヅキ
…ん?
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ユヅキ
…あ、
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ユヅキ
なんでもないです。
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ユヅキ
(…ヤバイ、ほんとにちょっと酔ってる…)
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さりげなく誤魔化したつもりだけど、
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この人にそれが通用するのかどうかは分からない。
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不自然な笑みを晒してしまいながらリビングに戻ると、
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背後から続いたキザキさんが壁のからくり時計を見遣った。
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キザキ
思ってたよりも、帰ってくるのが早かったね。
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ユヅキ
…そうかな。
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キザキ
だってまだ、22時過ぎたところでしょ?
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キザキ
二次会へは行かなかったんだ?
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
行くつもり…だったんですけどね。
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キザキ
飲み過ぎたから、行くのやめたの?
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ユヅキ
…、そう言うわけでもない…
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コートを脱ぎ、ダイニングの椅子に掛けてひっそり呟くと、
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酒気が回るせいで普段よりスローダウンした思考のまま
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持ち帰った袋をテーブルの上に乗せた。
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ユヅキ
おいしいアイスクリーム屋さんが、目に留まったので…
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キザキ
え?
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キザキ
アイスクリーム屋さん…?
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よほど不可解に思ったのか、言葉尻が見事にフェードアウトしている。
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ユヅキ
ちょっと、いいなって思って…
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キザキ
アイスクリーム屋さんが?
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ユヅキ
そう…、
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ユヅキ
だから、二次会へ行くのをやめて帰ってきた…と。
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キザキ
…、うん??
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いまいち把握できないのか眉を顰めて小首を傾げるキザキさんを、ぼうっと見ていたが、
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このままだと、また出かけるときのようなやり取りのループが続きそうだったので、
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ユヅキ
これ、アイスです、シャーベットみたいな…、
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ユヅキ
喉越しがいいかな、と。
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対話の進展を試みて、袋の中身を確認しながら告げた…が、
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キザキ
…、
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今もなお、目をパチクリさせるキザキさんの面持ちに、
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今度は私が眉根を寄せた。
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ユヅキ
…なんです?
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キザキ
ユヅキちゃん…、
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ユヅキ
はい。
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キザキ
確か僕の知る限りでは、
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キザキ
スイーツってあまり好きじゃなかったよね?
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ユヅキ
ええ、まあ…
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キザキ
じゃあ、どうして、
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キザキ
アイスクリーム屋さんを見て、『いいな』って思ったの?
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ユヅキ
え…?
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キザキ
どうして、そう思ったの?
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ユヅキ
まあその…、
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キザキ
うん。
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ユヅキ
シャーベットとかは、お酒を飲みすぎたときとか、
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ユヅキ
ちょっと食べたくなることがあるっていうか…。
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キザキ
……そう。
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ユヅキ
…何か?
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キザキ
うん?
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キザキ
こういう嘘って、かわいいなと思って。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
嘘ではありません…
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ユヅキ
(…お酒をいつもより飲んだということに関しては)
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内心言葉を添えて、空威張りみたく開き直る。
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ユヅキ
(ああでも、たぶん、ちょっと見破られてる…)
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〔嘘も方便〕という
諺 を隠れ蓑にしながら、再び袋の中のアイスに視線を投じた。 -
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