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サクラ
ユヅキは、若くても、
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サクラ
どの先生よりも一流のお医者さんなんだからっ。
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ユヅキ
さっ、サクラ…っ?
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普段あまり聞くことのないサクラの突然の声量にビクリとなる。
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ユヅキ
いきなりどうしたの?
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サクラ
朝から満員の外来診察に対応して、
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サクラ
お昼ご飯を食べる間もなくオペに入って、
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サクラ
休憩なんてほとんど取らずにカルテチェックして。
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サクラ
ユヅキのこんな日々のルーティンを、
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サクラ
口ばかりの教授たちはこなしてないっ!
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ユヅキ
サクラ…、
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サクラ
これからも、教授たちなんかに負けたらダメだよ?
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サクラ
私はどんなときもユヅキの…、先生の味方だからっ!
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真っ直ぐに見つめてくるサクラの瞳はいつになく真剣で。
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最近は沈静化していると伝えたものの、彼女にはそれが虚勢だと感じたのか、
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私の元気のなさが、
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いつもの教授たちからのイビリ的なものだと思い込んでしまったらしい。
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ユヅキ
…、
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サクラのような人に出会えたのだから、
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一期一会もなかなか捨てたものじゃない。
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ユヅキ
ありがとう、サクラ。
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ユヅキ
これからも、元気に頑張るから。
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サクラ
うんっ、
ずっと応援してるからね。 -
彼女の頼もしい笑顔は、私の心にふわりとした暖かさを残した。
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ユヅキ
おかしいな…。
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ユヅキ
<私の予報>では、雨が止むはずだったんだけどな…。
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所詮、独自の天気予報なんてアテにはならない。
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夕方と変わらずに雨を注いでくる空を苦笑とともに仰ぎ見ながら、
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玄関ホール付近で立ち尽くす。
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ユヅキ
よしっ、走ろうっ。
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自分が濡れようが転ぼうが気にしない。
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駐車場まで、雨で水浸しの歩道を一気に駆け抜けた。
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びしょ濡れになった袖口を捲って腕時計に視線を落とすと、
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夜中の3時を回ったところだった。
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ユヅキ
っ、クシュン…ッ!
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ユヅキ
(思ったよりも、濡れちゃったな…)
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リビングには寄らず、
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冷えた体を湯船で温めようとバスルームに続く廊下を急いで進む。
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キザキ
おかえり。
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ユヅキ
…!
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ギョッとして振り返ると、
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リビングのドアを開いて顔を覗かせているキザキさんと目が合った。
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キザキ
遅くまでお疲れ様。
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ユヅキ
キザキさん…、
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ユヅキ
まだ起きてたんですか?
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キザキ
うん。
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キザキ
さっきまで、部屋でちょっと仕事してたから。
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言いながら静かに歩み寄る姿に、少しだけ緊張してしまう。
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ユヅキ
…キザキさんこそ、
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ユヅキ
遅くまでお疲れ様です。
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強張ったようになる心をほぐしながら、差し障りのない礼節を伝えた。
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キザキ
うん、ありがと。
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キザキ
たとえ社交辞令でも、そんな風に言ってもらえると嬉しいね。
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ユヅキ
……
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この人は、最初に会ったときからほんとに余計な一言が多いと思う。
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ムッとなってしまいながら、口元を引き結んだ。
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