-
走り慣れた車道も、
-
季節が移り変わるこの時期は、どこか真新しく感じるから不思議だ。
-
ソウタ
……
-
夜の街灯をくぐり抜けるようにして私の車を走らせるソウタは、黙ってハンドルを握っている。
-
ソウタらしい、無言でいることの気遣い。
-
そのことを当たり前のように思っているわけではないけど、
-
何も言わない自分は、やっぱり大人げなくて。
-
ユヅキ
…なんかごめんね、ソウタ。
-
ユヅキ
ちょっとイライラしたところ見せて…ごめん。
-
ようやく紡ぎ出せた言葉は、ちょっぴり掠れていた。
-
ソウタ
いや、いいってそんなのは。
-
ソウタ
それより…なんつーか、大丈夫か?
-
ユヅキ
うん…ごめん、平気だよ。
-
ソウタ
やっぱあれだよな…、
-
ソウタ
突然知らねー男と一緒に暮らすことになっちまったんだ、
-
ソウタ
気も遣うし、なんか凹むよな。
-
ユヅキ
…うん。
-
ソウタ
そんなのもあって、ついイライラするっていうのもアリだと思うし。
-
ユヅキ
……
-
ソウタ
ただ、まあ…、
-
ソウタ
庇うわけじゃねーけど、
-
ソウタ
サクヤくんってさ、誤解されやすいところもあるけど、
-
ソウタ
悪いヤツじゃねーから。
-
ユヅキ
それは……なんとなく分かる。
-
ソウタ
だろ?
-
ソウタ
昔から、後輩の俺にも上下関係ナシで、先輩風吹かさないしさ。
-
ユヅキ
…分かるんだけど…、
-
そもそもああいった人、私の周りにはいないタイプだから。
-
できれば避けて通りたいのに、そうもいかない現実がちょっとだけキツい。
-
ユヅキ
色々と見透かされてる感じっていうのかな、
-
ユヅキ
なんかそれが、気に障るというか…、
-
ソウタ
見透かされてる、かあ…。
-
ソウタ
サクヤくんは探偵の仕事してるから、
-
ソウタ
そのせいもあるのかもしれねーな。
-
ユヅキ
……、
-
ユヅキ
確かにそれはあるかも…。
-
ソウタ
そんなに気にすんなって。
-
ソウタ
俺もちょくちょく遊びに来てやるからさ。
-
ソウタ
つーか、遊んでくれよ?
-
ユヅキ
…ふふ、分かった。
-
ユヅキ
……ありがとう。
-
幼馴染のさりげない優しさが改めて身に沁みて、元気を出そうと気持ちを切り替える。
-
…でも。
-
ユヅキ
……
-
キザキさんのように、
-
こんな感じでイライラさせられた人に今まで出会ったことはなかった。
-
ユヅキ
……、
-
ユヅキ
(やっぱり仲良くなんて…、)
-
ユヅキ
きっと無理だよ…。
-
たとえ父の頼み事だとしても、
-
懇意な関係を築くなど、今は想像も出来ない。
-
ソウタ
ん?
-
ソウタ
なんか言ったか?
-
ユヅキ
ううんっ、なんでもないよ。
-
普段と変わらない笑顔で誤魔化した後、
-
フロントガラスの先を見据えながら、また一つ、溜め息を零した。
-
Vol. 2 END
タップで続きを読む