花へ送るアリア
夢小説設定
この小説の夢小説設定小説内に出てくる少女と花の名前を変更することが出来ます。
勿論変更しなくても楽しめますがせっかくなら…と思い設置してみました。草原で歌いたい方は是非。
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「…どうして、この一輪だけ…」
ある休みの日、いつものように少女が草原に行くとぽつんと一輪の花が咲いていた。柔らかな桃色をした見たことのない形をした花だった。何よりも不思議なことに…この花以外に草原には何も咲いていない。種が一つだけ紛れ込んでしまったのだろうか。
「まぁ…いいか。」
そう言って少女は花の近くに腰を下ろしてギターを取り出した。そしていつものように一つ、また一つと音を奏でていく。
少女の好きなこと…それは「音楽」だった。歌だけではない、ギターやピアノなどの様々な楽器に触れ、作詞や作曲、編曲まで手掛けていた。しかし、そんな音楽好きの少女の作品が世に出たことは一度もない。
(お前には、無理だ)
昔、少女より遥かに優秀だった両親にも、存在を否定してきた友達にも、心から信じていた先生にさえ、そう言われたのだ。言葉は鋭く冷たい凶器となって、今も少女の心に深い傷を残している。誰もいない、まるで世界に少女が1人取り残されたような感覚になれるこの場所だけが少女にとって好きなものと向き合える場所だった。
音を奏でていくと、草原に風が吹いていく。ふと足元の花を見ると風と音に合わせて揺れていた。その姿は可憐な女の子のようにも、優雅に踊る淑女のようにも、凜とした大人の女性のようにも見えた。でも、それよりも…。少女には花が、自分の望む姿のように見えた。自由に、好きなことを好きと表現しているようだった。あまりにも綺麗なその姿に見惚れた少女は気付けば演奏を止め、涙を流していた。
「綺麗…だな…。」
少女はその日、夕日が草原を染めるまで涙を流し続けた。