菫の花と悠久の雫
第六幕
ミク「…」
ガク「…あまりにも、残酷でしょう?目の前にいる、貴女が望んだ家族こそが、貴女を…殺めているのですから。それも一度だけではない。何千、何万回と…終わらない世界で貴女を苦しめ続けたんです」
ミク「…それが、私の前からいなくなった理由ですか?」
ガク「えぇ。ビュルレ座を辞めたのは彼らが心から望んでいた劇団復興の兆しが見えたから。そして貴女の前から消えたのは…一度殺めてしまった私に、もう、貴女のことを想う資格などないと思ったからです。ですが…どこで私は変わってしまったのか…。あれほど残酷なことをしてもなお、貴女の…ミクさんの優しさが、笑顔が、演技が。ずっと忘れられないままでした。旅に出て、ウエストエンドを離れても…。許されないことと分かっていても、貴女の幸せを願うことを止められませんでした。だから、彼女が私に託した約束を果たすまでは見守ると決めていたのです。きっと、心のどこかで許しを乞うていたんでしょうね。貴女や、彼女に」
ミク「それでおばあちゃんの命日に、約束を果たしたんですね」
ガク「元々、Crazy∞nighTからしばらく経った後に渡そうと思っていました。それまでは命日に、彼女が好きだった菫の花束を贈り続けて…。そしてあの夜から10年が経った時、貴女に手帳を返すことにしたのです。この手帳が、彼女との最後の約束が、貴女の幸せを紡いでくれることを願って…。そしてもしも、今晩のように貴女が真実に辿り着いたなら…私は包み隠さずお伝えしようと決めていたのです。私の話を。私が犯した…罪を」
ミク「…私、Crazy∞nighT初日の朝に夢を見たんです。8人の役者が口論していて、主役が、死んじゃう夢…。でもそれは、本当は夢じゃなくて、私の身体が覚えていた【もう一つの現実】だったんですね。」
ガク「ミクさん…私のせいで危険な目に会わせてしまって、本当に…」
ミク「でも…皆は信じてくれたんですよね。助けて、くれたんですよね。こんな、何も知らなかった、何も覚えていない私を、ずっと…!」
ガク「…」
ミク「それだけじゃない。一人ぼっちだと思って、ずっと誰も信じられなかった私を…ガクさん、は。守ってくれていたんですよね…私より、もっとずっと長く独りで苦しんでいたはずなのに…!!気付けなくて、ごめんなさい…!でも、あの時。助けてくれて、ありがとうございます…!」
ガク「…謝るのも、お礼を言うのもこちらの方です。あの時、貴女が夢を目指し、前を向いていてくれたから。誰しもが望む未来と本物の絆を、皆さんと紡いでくれたから。私は…大切なものを。ミクさんを。最後の希望を。手放さずにこれました」
ミク「ガクさんっっ…!!」
ガク「…誰かのために行動出来るところも、誰かのために涙を流せるところも。彼女にそっくりですね。例え成長し、美しい花を咲かせても変わらない心…。とても…素敵ですよ。ミクさん」
ミク「へへ…」
ガク「私は…。今度こそ…本当に、幸せです」
ミク「…あの、ガクさん。聞いてもいいですか?」
ガク「はい。私で良ければ」
ミク「ガクさんは…これから、どうするんですか?」
ガク「これから、ですか…」
ミク「今までガクさんは、ずっと、私のことを守っていてくれました。側にいてくれて、信じてくれました。…でも、私がそのおかげで一人前の女優になったからガクさんは…おばあちゃんとの約束を果たしたから、また、独りを選ぶんですか…?」
ガク「そう、ですね…。しばらくは、このvin bourquetにいます。貴女の成長と幸せを見れたので、ここで彼女と語り合った夢を完成させようと思います…。ただ、先程もお話ししましたが有名になりすぎてしまうと、また誰かを巻き込む可能性が出てきてしまうので…時が来たら、新たな人生を演じるためにここを離れようと思います」
ミク「そう、なんですね…」
ガク「ミクさんは…と、伺ってもよろしいですか?」
ミク「私は…これからも生き続けます。女優として、ビュルレ座の団員として。まっすぐに…私達の、大切なおばあちゃんのように、生きていきます。永遠の終わりから、私を救ってくれた人のために。他の皆からしたら、何も変わらない…【何も知れなくて申し訳なさそうにしている私】にしか見えないと思いますが」
ガク「貴女らしい…一昔前はあんなにも不安や焦りを持っていたというのに。その瞳には、希望の灯りが宿っている…本当に素晴らしい女優になりました」
ミク「でも」
ガク「?」
ミク「でも、その代わり…またここに来てもいいですか…?会いたいって、言っても、いい……?」
ガク「…」
ミク「これは…?」
ガク「隠れ家バーvin boruquetのこの世にたった1本しかない、シークレットワイン。Pulcherima です。大陸西部に咲く花の名前で、花言葉は【いつまでもあなたの幸せを願う】」
ガク「…貴女が産まれ、出会えた日に作られたんですよ…ミク」
ミク「…」
ガク「…あまりにも、残酷でしょう?目の前にいる、貴女が望んだ家族こそが、貴女を…殺めているのですから。それも一度だけではない。何千、何万回と…終わらない世界で貴女を苦しめ続けたんです」
ミク「…それが、私の前からいなくなった理由ですか?」
ガク「えぇ。ビュルレ座を辞めたのは彼らが心から望んでいた劇団復興の兆しが見えたから。そして貴女の前から消えたのは…一度殺めてしまった私に、もう、貴女のことを想う資格などないと思ったからです。ですが…どこで私は変わってしまったのか…。あれほど残酷なことをしてもなお、貴女の…ミクさんの優しさが、笑顔が、演技が。ずっと忘れられないままでした。旅に出て、ウエストエンドを離れても…。許されないことと分かっていても、貴女の幸せを願うことを止められませんでした。だから、彼女が私に託した約束を果たすまでは見守ると決めていたのです。きっと、心のどこかで許しを乞うていたんでしょうね。貴女や、彼女に」
ミク「それでおばあちゃんの命日に、約束を果たしたんですね」
ガク「元々、Crazy∞nighTからしばらく経った後に渡そうと思っていました。それまでは命日に、彼女が好きだった菫の花束を贈り続けて…。そしてあの夜から10年が経った時、貴女に手帳を返すことにしたのです。この手帳が、彼女との最後の約束が、貴女の幸せを紡いでくれることを願って…。そしてもしも、今晩のように貴女が真実に辿り着いたなら…私は包み隠さずお伝えしようと決めていたのです。私の話を。私が犯した…罪を」
ミク「…私、Crazy∞nighT初日の朝に夢を見たんです。8人の役者が口論していて、主役が、死んじゃう夢…。でもそれは、本当は夢じゃなくて、私の身体が覚えていた【もう一つの現実】だったんですね。」
ガク「ミクさん…私のせいで危険な目に会わせてしまって、本当に…」
ミク「でも…皆は信じてくれたんですよね。助けて、くれたんですよね。こんな、何も知らなかった、何も覚えていない私を、ずっと…!」
ガク「…」
ミク「それだけじゃない。一人ぼっちだと思って、ずっと誰も信じられなかった私を…ガクさん、は。守ってくれていたんですよね…私より、もっとずっと長く独りで苦しんでいたはずなのに…!!気付けなくて、ごめんなさい…!でも、あの時。助けてくれて、ありがとうございます…!」
ガク「…謝るのも、お礼を言うのもこちらの方です。あの時、貴女が夢を目指し、前を向いていてくれたから。誰しもが望む未来と本物の絆を、皆さんと紡いでくれたから。私は…大切なものを。ミクさんを。最後の希望を。手放さずにこれました」
ミク「ガクさんっっ…!!」
ガク「…誰かのために行動出来るところも、誰かのために涙を流せるところも。彼女にそっくりですね。例え成長し、美しい花を咲かせても変わらない心…。とても…素敵ですよ。ミクさん」
ミク「へへ…」
ガク「私は…。今度こそ…本当に、幸せです」
ミク「…あの、ガクさん。聞いてもいいですか?」
ガク「はい。私で良ければ」
ミク「ガクさんは…これから、どうするんですか?」
ガク「これから、ですか…」
ミク「今までガクさんは、ずっと、私のことを守っていてくれました。側にいてくれて、信じてくれました。…でも、私がそのおかげで一人前の女優になったからガクさんは…おばあちゃんとの約束を果たしたから、また、独りを選ぶんですか…?」
ガク「そう、ですね…。しばらくは、このvin bourquetにいます。貴女の成長と幸せを見れたので、ここで彼女と語り合った夢を完成させようと思います…。ただ、先程もお話ししましたが有名になりすぎてしまうと、また誰かを巻き込む可能性が出てきてしまうので…時が来たら、新たな人生を演じるためにここを離れようと思います」
ミク「そう、なんですね…」
ガク「ミクさんは…と、伺ってもよろしいですか?」
ミク「私は…これからも生き続けます。女優として、ビュルレ座の団員として。まっすぐに…私達の、大切なおばあちゃんのように、生きていきます。永遠の終わりから、私を救ってくれた人のために。他の皆からしたら、何も変わらない…【何も知れなくて申し訳なさそうにしている私】にしか見えないと思いますが」
ガク「貴女らしい…一昔前はあんなにも不安や焦りを持っていたというのに。その瞳には、希望の灯りが宿っている…本当に素晴らしい女優になりました」
ミク「でも」
ガク「?」
ミク「でも、その代わり…またここに来てもいいですか…?会いたいって、言っても、いい……?」
ガク「…」
ミク「これは…?」
ガク「隠れ家バーvin boruquetのこの世にたった1本しかない、シークレットワイン。
ガク「…貴女が産まれ、出会えた日に作られたんですよ…ミク」