先行く貴女を、見つめる僕は
先生(声のみ)「…し。もしもし!優菜さん!」
優菜「はっ。はい!」
先生(声のみ)「大丈夫ですか?ぼ~っとしてたみたいですけど…受験疲れが残っていますか?」
優菜「いえ、すみません…大丈夫です」
先生(声のみ)「ならいいけど…皆さん。先程も説明したように卒業前最後の課題として作文を書いてもらいます。テーマは【幸せとは何か】。当たり前のように日々を過ごし、夢を叶えるために高校へ進学する皆さんへ改めて問いたい内容となっています。来週末までで構いませんので必ず提出してくださいね。では今日はここまで」
春羽「起立、礼」
優菜・春羽「さようなら」
春羽「優菜。大丈夫?さっきから心ここにあらずって感じ」
優菜「え?あぁ、うん…大丈夫。作文のテーマが難しすぎてぼ~っとしちゃった」
春羽「そうなの?まぁ確かに哲学的な意味で考えたら難しいかもしれないけど…」
優菜「その言い方だと、春羽はすぐに思いついたの?幸せが何かって」
春羽「うん!私にとって幸せは1つ!【愛する人のそばにいること】!」
優菜「あぁ~…彼氏との惚気ですか」
春羽「ちっ、違うよ!!そういう愛する人じゃなくて…!恋人だけじゃなくて家族とか、尊敬する人とか!そういう大切な人とか愛する人と一緒にいられることって当たり前じゃないなって思ったの。こんなにも心が温かくなる…それが私にとって幸せとは何かの答えなのかなって思うんだ。そう思うと、私は優菜と一緒にいられるから世界で一番幸せ!これからもずっと一緒にいたい!」
優菜「ありがとう。春羽いつもそう言ってくれるよね」
春羽「もっちろん!感謝はどんなかたちであれ、ちゃんと伝えなきゃ!…あ、そうだ。私の話はいいんだよ!」
優菜「え?」
春羽「優菜は?優菜にとっての幸せって何?」
優菜「幸せ…かどうかは分からないけど」
春羽「あ、それ!優菜と私が好きな本!」
優菜「うん。イギリス文学「若葉が奏でる旋律」」
春羽「イギリスの小高い丘にある貧しい村で暮らす少女セシリア・ウォルター。教師になることを夢見ながらも周りからは反対されたり、馬鹿にされたり…」
優菜「役立たない草、セシルと壁という名前を持つお前に何が出来るって笑われて…それでも彼女は諦めなかった。「私の人生だもの。幸せも夢も生き方も、自分で手にする」。そう言って努力して…」
春羽「街に出ても困難がたくさんあったけど、最終的には夢だった先生になって更に立派な教師になるためにヨーロッパへ渡るんだよね!素敵な話…!憧れちゃうな…とてもかっこよくて…優菜にとっての幸せってセシリアみたいになること?」
優菜「う~ん…教師になりたいわけでもないから違うのかな…でも、憧れ、というか…自分の道を誰かに委ねたり、諦めたりしない所はすごく尊敬してる。セシリアみたいになりたいなって思うことはあるけど…どうなんだろ。私は…何を望んでいるのかな…」
春羽「哲学だね~もっと力を抜いて純粋に欲しい物とか考えてみてもいいヒントになるかもよ?」
優菜「欲しい物か…それなら」
クラスメイト(声のみ)「春羽~隣のクラスの…!」
春羽「あ、待たせてたんだ。そういえば…!」
優菜「いってきなよ春羽。愛する人のそばにいて幸せにならなきゃ」
春羽「でも…」
優菜「ほ~ら!私とはまた明日の朝会えるから!」
春羽「うぅ、分かった…優菜、また明日ね!」
優菜「うん。また明日」
優菜「欲しい物…一つだよ。たった一つ…。でも、それは永遠に手に出来ない…【春羽の愛がほしい】なんて。無理だよ…!どうして女に生まれたんだろう…もし、私が男なら…つかめたかもしれないのに…!!もし気付かないままなら、忘れられたら…ずっと普通でいられたのに…!どうして…春羽を好きになっちゃったの…何で…!!」
優菜「あぁ。そっか…きっとこれだ…私の…私が一生手に出来ない幸せは…」