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先行く貴女を、見つめる僕は

ファン(声のみ)「わ〜見てみて!星来さんの等身大パネルある〜!!」

ファン(声のみ)「ほんとだ!しかもこれ…パンフレットにのってない別カットじゃない?!」

ファン(声のみ)「は〜素敵…!ねね、写真撮って!!せっかくの星来さんが初めて演出に入った舞台だもん!記念に!」

ファン(声のみ)「了解!カメラ設定は、っと…」

春羽「あの、良ければ2人の写真撮りましょうか?」

ファン(声のみ)「えっいいんですか?!ありがとうございます…!」

春羽「いえ…じゃあ撮りますよ〜!はい、チーズ!」

春羽「どうぞ」

ファン(声のみ)「ありがとうございます!やっぱり星来さん綺麗…!」

ファン(声のみ)「あっ良ければ写真…」

春羽「いえ私は…!さっき撮ったので大丈夫です。ありがとうございます」

ファン(声のみ)「いえいえこちらこそ!ありがとうございました…!」

春羽「本当に…有名人になっちゃったな…優菜は。こんなにたくさんの人に愛されて、お花も…すごい数。あっ、これ昔優菜が好きだった花だ。ユキヤナギ…花言葉は…確か…」

スタッフ(声のみ)「それではこれより、開場しま〜す!中での写真撮影はフラッシュのみご遠慮いただきますようお願いいたします!」


春羽「客席の真ん中…すごいいい席じゃん…!優菜ここに招待してくれるなんて…!」


優菜(声のみ)「春羽。久しぶり。…ほんとに久しぶり。4年…5年かな?随分連絡取れてなくてごめん。今度、久しぶりに舞台で主演やらせてもらえることになったんだ。演出にも初めて挑む。作品は…「若葉が奏でる旋律」。私達が好きだった、セシリアを演じるんだ。その姿を…春羽に見て欲しい。席も1番いい場所を用意するよ。終わったら…楽屋に来て、感想聞かせて。春羽が中に入れるように、お願いしておくから…待ってる」

春羽「叶えてるんだ…優菜は。気づいたら、遥か遠く…本当、昔言ってたみたいなお星さまみたいな人になって。…私は…うわべの私しか見られなくて、愛されてない…。ほんとの私を…誰も見てくれないのかな…」



優菜「すみれさん…わがままを聞いていただき、ありがとうございます。」

すみれ「わがままなんかじゃないよ。星来がやりたいことが、一番大事。それに…今日の星来は、一段と眩しく輝いてる。意志を持った綺麗な目…やっと見れた」

優菜「ありがとうすみれさん。…笹岡優菜はきっと、今日が最期の日。見届けてね。」

すみれ「…あぁ…行ってらっしゃい。今度こそ…優菜の幸せな旅へ」


優菜「春羽…これが、私の伝えたかった想い。届かなかった願い。でも…今思えば、全部、この運命のためだったのかな…。それでも、最期まで…私は抗うよ」

優菜「春羽…貴女を…愛しているから」



優菜(音声)「セシル。私の村にはびこる、雑草。その役目は…私たちの命の糧、小麦を邪魔すること」

優菜(音声)「ウォルター。壁のこと。人々を希望から切り離し、視線を全て奪う…。セシリア・ウォルター。それが」

優菜(音声)・春羽「私の、名前」

村人役(声のみ)「お前に教師?ハッ!笑わせないでくれよ!金も学もねぇ女が!何ができるって言うんだよ。約立たずの名前を持つ、お前が!」

母親役(声のみ)「うるっさいね!!あんたはアタシのために生きてるんだよ!アタシがあんたを育ててやったんだ!!!その義理を忘れたっていうのかい?!あんたは…アタシのものなんだよ!!!」

優菜(音声)「そうだ…その通りだ。私を育ててくれたのは、母さんだ。私に名前をくれたのも…生きる理由をくれたのも、母さん。そして、周りはそれを覚えさせてくれるように、笑って、教えてくれる…全部。周りから貰ったものだ。全部…他人のものだ」

優菜(音声)「でも…それでいいのか?いや…違う。この命…生きていることだけは、今、自分が選んでいる。自分の…自分だけのものだ」

優菜(音声)「生きることを選ぶ理由も、生きる目的も。命も!全て…全て私のもの。私が自分の力で手にしたこと!もしもそこに己の意志が無いなら…それは、生きる理由という最後のものを、誰かに委ねてしまったから」

春羽「あ…あぁ…」

中学の春羽(声のみ)「私の幸せは、愛する人と共に生きること!」

中学の優菜(声のみ)「私の幸せは…定められた運命に抗えること」

過去の優菜(声のみ)「…好きなんだ。春羽のこと。今までも、今も。ずっと…ずっと、好き。」

過去の優菜(声のみ)「あたしにとっては、春羽が一番大切で…一番、大好きだからさ」

過去の優菜(声のみ)「また…何でも相談してよ。いつでも聞くからさ」

過去の優菜(声のみ) 「…私も。力に、なりたかったのに、気づけなくてごめん」

春羽「違う…謝るのは…!だって私は…今まで、ずっと…」

過去の優菜(声のみ) 「…今度からは、自分だって力になれるんだから。いっぱい頼ってよ」

優菜「そう…そうだ。道を選ぶことも、運命に抗うことも。誰かに委ねたりしない。誰かのために自分を犠牲にしない!自分は…自分のために生きるんだ…!それが…神様が与えた、最も幸福で」

優菜・春羽「最も…勇気のいる、試練なのだから!!」

春羽「でもその試練から…私は逃げ続けて…!怖くて、誰かに愛して欲しかった…!ただ守って欲しかっただけ…!!なのに…!!!」

過去の優菜(声のみ) 「春羽…。前も言ったけど、自分は春羽のこと、好きだ。今までも、今も、これからも…。心の底から…春羽が、1番好きだよ」

過去の優菜(声のみ) 「…勿論、あたしが春羽の隣にいて1番に支えてあげられないのは悔しいよ。すごく…。でも、今春羽が幸せならそれでいいの」

春羽「優菜…私…私は…!!」

優菜「私の人生だもの。幸せも夢も生き方も、自分で手にする。たとえこの先が、暗雲立ちこめる永遠の暗闇だったとしても…私は、」

優菜「自分の羽で飛んで行ける道を…今も。信じているから」

春羽「あ…」

春羽「優菜…優菜!!」

優菜(音声)「私達が好きだった、セシリアを演じるんだ。その姿を…春羽に見て欲しい。終わったら…」

春羽「優菜!!!」


春羽「優…菜…?そんな…」


優菜(音声)「本日はお忙しい中、音葉星空の臨時記者会見にお集まりいただきありがとうございます。今。舞台の千秋楽を終えた今だからこそ、私はこの話ができます…。私、音葉星空はこの度、俳優を辞め、芸能界を引退することになりました」

春羽「待って…待ってよ…優菜…」


優菜(音声)「俳優になって気づけば10年という時がたっていました。役者としてはまだまだこれからで、今私を見つけてくださる方に最大限の恩返しを。と思っていたのですが…今回演じたセシリアのように、私は運命に抗えませんでした。私は…若年性アルツハイマー症候群という病気を患っています。半年前から治療をしていますが、進行は止まることなく、日々私の記憶と生活を、役者としての残り時間を蝕んでいる状態です。進行を無理矢理遅くする薬を服用することも考えました。ですが副作用が重く、なかなか舞台に立つことができなくなってしまうものでした。どちらを選んでも修羅の道…。たくさん悩み、考えました。薬を服用すれば、私という人間はまだ少しの間生きることが出来ます。ですが…同時に役者の私は、消えてしまうんです。これまで私のことを見つけてくれた方を、やっと自分の生きる意味を見つけられた舞台という場所を失うことは…死ぬことと、同じなんです。だから私は、最期のその瞬間まで音葉星来として全力で生きようと決めたんです。…今後、事前に撮影していたCMや雑誌が発売されますが、それは全て病気がわかる前の私です。アルツハイマーを抱えて、それをお伝えした後の私が出演するのは来年の舞台。そしてその舞台が、音葉星来の最期の舞台です。命尽きるその瞬間まで…」

春羽「私やっと気づいたの…今までずっと誰かに愛されたくて…でも、本当の自分を否定されることが怖くて…いつも理想の自分を演じてた…!相手が望む私になっていた…!!守ってもらえる人がいることが…特別な人がいることが!私の生存価値だと思ってた…!!でも違う…私を、本当の私を!優菜は見てくれていたのに…!想ってくれていたのに…私は…!!私は逃げてた!自分から!本当の自分に向けられる感情から!!優菜から!!ごめん…ごめんなさい…!ずっと優菜は想ってくれていたのに…!気付けなくてごめん…!私も好き…!ずっと愛してる…!だからお願い…!!もう一度だけ…会わせて…!想いを言わせて…お願い…優菜…!!」


優菜(音声)「私が愛した誰かを想って…紡ぎたいと思います」
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