このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

先行く貴女を、見つめる僕は

アナウンサー(声のみ)「今夜のスペシャルゲストは今をときめく俳優、音葉星来さんです!」

優菜「皆さんこんばんは。よろしくお願いします。」

アナウンサー(声のみ)「最近は劇団での活躍に加えてドラマや雑誌モデルでの出演も多くある一方で、番組や舞台のスタッフからは星来さんが聖母のようだという声が多く上がっているんですよ〜その辺聞いちゃうけど、ぶっちゃけ、気遣いすぎて疲れることない?」

優菜「いえ全然!むしろ私がここに立てているのって…マネージャーさんだけじゃなくて、作品一つ一つを丁寧に紡いでくれたスタッフさんがいて、応援してくれる皆様がいて、私を一目でも見つけてくれる人がいるから…。感謝はきちんとしないとって!でも、今度決まった映画の役は、結構ぶっきらぼうだし口も悪くて…撮影中は態度悪くなっちゃわないか心配でした笑」

アナウンサー(声のみ)「そうなんですか?!周りからは意外という声もあがっていますが…初主演を努めるその映画の話も、たっぷり聞かせてください!」


春羽「もしもし優菜?1年ぶり!久しぶりに声が聞きたくなって連絡しちゃった…忙しかったかな?すごいよね優菜!映画の主演決定、おめでとう!舞台も忙しいし、無理しないでね。…また連絡してきてよ!いつでも待ってるから」


スタッフ(声のみ)「星来さん!次の撮影のスタンバイお願いします!」

優菜「はい!今行きます!」


優菜「…現実から逃げる様に、運命から目を背けるように。私は…俳優として生き続けた」

春羽(声のみ)「優菜!この間の映画の再放送見たよ。すっごい良かった!あの映画で優菜の劇団で舞台化したり、続編決まったんだもんね。本当にすごいよ。思わず連絡しちゃった!忙しいと思うけど身体壊さないようにね。私も自分の幸せを、ちゃんと追いかけるから。また、いつでも連絡してきて!」

優菜「春羽…私は…」

春羽(声のみ)「そういえば、何年か前に言ってたもの忘れ。診断結果出たの?というかちゃんと病院行った?仕事ではすごい活躍してるみたいだけど、案外優菜って自分のこと後回しにしちゃうから心配だよ」

優菜「…もの、忘れ…?そんなこと、あったかな…最後に春羽に会ったのって…いつ…だっけ…?」


優菜「もしもし、すみれさん?オフの日にすみれさんから連絡してくるなんて珍しいですね」

すみれ(声のみ)「…何…言ってるの?優菜…今日この後次の舞台に向けて打ち合わせがあるから優菜を迎えに行こうと思ったんだけど…」

優菜「…え?」

すみれ(声のみ)「…いいえ。話したいことがあるの。迎えに行くから場所教えてくれる?近頃病院に行っていないみたいだし…話は…その後ゆっくりしましょ」


優菜「でも…運命はいたずらで…時を超えてでも追いかけてくる。逃げるな、これがお前の…運命だって」


すみれ「どういう…ことですか…?!」

医者(声のみ)「…星来さんは、若年性アルツハイマー症候群にかかっています。今までも脳のMRIを撮ったり、普段の話を聞いたりしていましたがその時はまだ健康で…この数年、星来さんが歳を重ねたこともあり、今まで遅かった進行が一気に来たのでしょう…。」

すみれ「そんな…!!どうすることも出来ないんですか?!星来は…今まで皆に愛されて、大きな一番星として輝いてきた!でも優菜はまだ…!これから先があって…!!叶えていないことがあって…それに…!!!」

優菜「すみれさん…ごめんね。もう、大丈夫」

すみれ「でも…!!」

優菜「若年性アルツハイマー症候群…調べたことはあります。治療法…ないんですよね?」

医者(声のみ)「進行を遅くする治療薬はあります。ですが…完全に進行を止める、治す方法はないんです」

優菜「…先生。教えてください。私は笹岡優菜として…音葉星来として。あとどれくらいいられますか」

医者(声のみ)「副作用が強く出ますが、進行スピードを抑える薬を飲めば、優菜さんとしてはあと2〜3年といったところです。ですが…副作用を望まず、今のまま活動を続ける場合…出演できる作品は…良くて、あと2本だとお考え下さい」

すみれ「2本って…あと…1年…???」



優菜(声のみ)「運命は…残酷だ。いたずらなんて言葉じゃ足りない。己の望みとすれ違うように流れて、運命に抗っても結果が変わることは無い。まるでそう…言われた気がした。」

優菜「でも…だから思い出せた。私にとって運命は…常に隣にあって、心の中に痛いくらい絡みついている。だから…だからこそ、定められた運命に抗えることって、勇気がいる。痛みも伴う。結果は…きっと変わらない。それでも、その選択肢を選べることが…本当の幸せなんだって」


優菜「…すみれさん。次の舞台。演じたい作品があるんです。私が…音葉星来と、笹岡優菜が生きているうちに...遺しておきたいことがあるの」
11/13ページ
スキ