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ロスタージュ~無神論者のアルケミーと透明花~

がくぽ(声のみ)「研究日誌550日目。最近、夢を見るようになった。1つは幼い頃の私と…誰かが、話している夢。もう1つは…愛おしい、花の夢だ。休息を取る度に彼女が私の瞼の裏に現れる。私の研究の完成が近づいているのだろうか?だが根拠はない。油断は禁物。今宵も君のためにメスを振るおう。」



がくぽ「…花。今日も私の研究は終わったよ。上手くいかないことも多くなってきたけど…。私にだってけってんがあるのだから。いくら夢で逢いに来てくれる君が、私を天才だって言ってくれても失敗はするさ。こういう時こそ緊張感を持たなくては。…そうだ、今日も私は裁きを下したんだ。君のために行っていることで利益を得ようだなんて…。人間とは本当に愚かなものだよ。かくいう私だって…最近瞼の裏にいる君に縋ってしまう。それなのに、もう1年以上この塔にいるのに、私は君を救うことが出来ていない。…でも安心しておくれ。どれだけ時間がかかっても、私を縛るものがあったとしても…君のために、裁きのメスを振るおう。」



がくぽ「…今日は、雨か。私の気持ちと…同じだな」



花「…誰?」



花「…まただ…。また、あの人が私を呼ぶ声が聞こえた…。夢、なのよね…?そう、確かにずっと夢を見ている。男の子と女の子が楽しそうに話してて、あの人が…笑っている夢。幸せそうな夢。それに…何だか懐かしい声をしていた。その人が誰かも…分からないのに」



花「あ、れ…。涙が…。どうして…?涙が、止まらない。何で私は、あの人を見ただけで、こんなにも涙を流すの…?すごく…痛い。胸が痛くなる。どうして?何も分からない…。ううん、1つだけ分かる。私は…何も分からない、透明だから、この気持ちには気付いてもらえない。きっと、この雨と同じ。窓の向こうにいるあの人にも、夢の中の人にも…ずっと、気付いてもらえない。それが…こんなに、痛いなんて思わなかった」
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