ひとやまアンソロ企画 Wer ist der wahre Teuful
月の光が微かに届く森の中をメイコは一人、歩いていた。涙を落とさないように上を向きながら。しかし森には木の根やら茂みやらがあって足元を取られるとあっという間に転んでしまう。メイコはバランスを崩して地面に倒れ込んだ。
「…カイト…カイト…。」
カイト。メイコにとって、何でも話せる人であり、ライバルでもあり、盟友だった人だ。今まで、色々なことを乗り越えて支え合ってきた。ずっと…彼は隣にいた。しかし今、メイコとカイトは別の道を歩んでいる。
蘇った惡魔を追放するための会議でカイトは自分が騎士であることを宣言した。皆はカイトが惡魔を成敗してくれるだろうと安心していた。だが、メイコは違った。いくらカイトとはいっても相手は人間じゃない。まさかのことがあってもおかしくない。一人で森を抜けて惡魔を倒しに向かうカイトを引き留めたが、彼の決意が変わる事はなかった。
「僕は皆を守る。それが仕事だ。そう誓ったんだ。君を危険な目に合わせたくない。分かってくれ、メイコ。」
「…そんなこと、分かりたくない!それなら、私も一緒に連れていって!私も惡魔と戦うから!!」
メイコは自分でも何てことを言っているのだろうと思った。私が行ったところで足を引っ張る事しか出来ないのに。カイトだって少し困った顔をしていた。しかし、少しの間を置いて、彼は言った。
「それならメイコ、約束してくれないか?僕は村を警備して惡魔が来ないか見張る。だから君には、村の皆の様子を見ていてほしい。安全な場所で。それで朝になったら合流するんだ。きっと皆今頃不安で仕方ないだろうから…これは君にしか出来ない事だ。お願い、メイコ。」
あぁ、この顔だ。お願いしてくる時のカイトの顔に私はめっぽう弱い。断るなんて選択肢を出す事すら出来ない。
「…分かった…。」
「ありがとう、メイコ…。」
「カイトの願いなら聞くしかないよ…私達、盟友だからね。」
カイトは黙って笑みを浮かべてくれたがその顔は何故か少しだけ悲しそうに見えた。言いたい事でもあるのだろうかと聞こうとした時、カイトは声をかけてきた。
「ねえ、メイコ。そのチョーカー…貰ってもいい?」
「…え?」
「分かってる。このチョーカーは僕達村人にとっては大切なものだ。だからこそ、貰いたいんだ。離れていても、一緒に戦っているように思えるから。」
離れていても、一緒に…。何ともカイトらしいことを言うものだ。ドジなところだってあるくせに…。でも、彼を一番知っているのはメイコだ。だからこそ、このまっすぐな彼の海のような碧い瞳が本気だという事はすぐに分かる。そして、メイコはカイトにチョーカーを渡して、一人村へ戻る事にしたのだ。
約束…。その言葉が再びメイコを立ち上がらせる。怖くない、怖くないと自分に言い聞かせて。
「カイト…約束だからね…。」
メイコは夜の森を駆け抜けて村へ戻っていった。
「…カイト…カイト…。」
カイト。メイコにとって、何でも話せる人であり、ライバルでもあり、盟友だった人だ。今まで、色々なことを乗り越えて支え合ってきた。ずっと…彼は隣にいた。しかし今、メイコとカイトは別の道を歩んでいる。
蘇った惡魔を追放するための会議でカイトは自分が騎士であることを宣言した。皆はカイトが惡魔を成敗してくれるだろうと安心していた。だが、メイコは違った。いくらカイトとはいっても相手は人間じゃない。まさかのことがあってもおかしくない。一人で森を抜けて惡魔を倒しに向かうカイトを引き留めたが、彼の決意が変わる事はなかった。
「僕は皆を守る。それが仕事だ。そう誓ったんだ。君を危険な目に合わせたくない。分かってくれ、メイコ。」
「…そんなこと、分かりたくない!それなら、私も一緒に連れていって!私も惡魔と戦うから!!」
メイコは自分でも何てことを言っているのだろうと思った。私が行ったところで足を引っ張る事しか出来ないのに。カイトだって少し困った顔をしていた。しかし、少しの間を置いて、彼は言った。
「それならメイコ、約束してくれないか?僕は村を警備して惡魔が来ないか見張る。だから君には、村の皆の様子を見ていてほしい。安全な場所で。それで朝になったら合流するんだ。きっと皆今頃不安で仕方ないだろうから…これは君にしか出来ない事だ。お願い、メイコ。」
あぁ、この顔だ。お願いしてくる時のカイトの顔に私はめっぽう弱い。断るなんて選択肢を出す事すら出来ない。
「…分かった…。」
「ありがとう、メイコ…。」
「カイトの願いなら聞くしかないよ…私達、盟友だからね。」
カイトは黙って笑みを浮かべてくれたがその顔は何故か少しだけ悲しそうに見えた。言いたい事でもあるのだろうかと聞こうとした時、カイトは声をかけてきた。
「ねえ、メイコ。そのチョーカー…貰ってもいい?」
「…え?」
「分かってる。このチョーカーは僕達村人にとっては大切なものだ。だからこそ、貰いたいんだ。離れていても、一緒に戦っているように思えるから。」
離れていても、一緒に…。何ともカイトらしいことを言うものだ。ドジなところだってあるくせに…。でも、彼を一番知っているのはメイコだ。だからこそ、このまっすぐな彼の海のような碧い瞳が本気だという事はすぐに分かる。そして、メイコはカイトにチョーカーを渡して、一人村へ戻る事にしたのだ。
約束…。その言葉が再びメイコを立ち上がらせる。怖くない、怖くないと自分に言い聞かせて。
「カイト…約束だからね…。」
メイコは夜の森を駆け抜けて村へ戻っていった。