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ひとやまアンソロ企画 Wer ist der wahre Teuful

ギィ…という重厚感のある音を立てながらミクは会議場の扉を開けた。地下にあるこの会議場は村の重要な話し合いが行われる時に使用される。誰かがパニックになって逃げ出しても捕まえやすいように…なんてことを昔誰かから聞いたことがあるなと思いながらミクは自分の席の前に立った。

今日ここで惡魔の追放会議が行われたがその内容はひどいものだった。疑わしい人物を探すどころか惡魔の存在すら否定する者まで現れたため話がまとまらなかった。それどころか騎士を名乗り出て皆を守るさ、なんて言い出す者までいたくらいだ。
何も知らないまま救済されたリンが可哀想…。そう思えば誰もが惡魔を吊るすという一つの目標に向けて話し合うはずなのに。己の保身や死体の悲惨さにしか目にいっていない姿。それを思い出してミクは呟いた。

「あぁ、本当に…楽しいなぁ・・・・・。」

そう。今まさに恍惚な笑みを浮かべるミクはただの村人ではない。Madman…狂人だ。誰よりも人の歪んだ顔を見るのが楽しくて仕方がない。たとえ今は、少しでもこの楽しい茶番を見るために怯えた村人を演じている・・・・・としても。

今晩中には誰かの…おそらく騎士の死体が見つかるだろう。嘘をついているようには見えなかったし、何よりカイトが宣言した瞬間にどこからか、獲物を捕らえたような…そんな喜びと殺意に満ちた視線が飛んだ気がしたのだ。もし彼の死体が見つかれば、明日にはまた皆の絶望した顔が見れる。夢なのではないかというわずかな希望の光さえも絶たれた闇のような瞳が。あぁ、どうしよう。胸の高鳴りが止まらない…。暗闇に包まれた会議場に佇むミクの顔には、はっきりとSchadenfreude本性が浮かび上がっていた。


「誰かの不幸が気持ちイイ……」

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(Illustration: えま様)
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