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ひとやまアンソロ企画 Wer ist der wahre Teuful

満月が天高く上る宵闇時。ルカは教会内の黙祷室でタロットカードと向かい合っていた。今日の会議では村の皆が疑心暗鬼にとらわれていたため惡魔どころか怪しい人ですら見つけることが出来なかった。少しでも早くこの村の平穏を取り戻すためには私が出来ることをしなければ…。そう思い、ルカはタロット占いで特定の村人を占うことにしたのだ。
今夜ルカが占った相手は…グミだ。彼女が最初から会議に参加しようとしなかったこと、あの緊迫した状況でそのような発言をしてきたことがルカから見て惡魔側の人間なのではないかという考えに至ったのだ。手先に集中して最後のカードをめくる。

「…Villager…。」

現れたのはVillagerのカード、つまりグミは村人だということだ。明日の会議でこの情報を出せば少しは惡魔の正体にたどり着けるだろうかとルカは思った。と同時に惡魔を探し出すことが出来なかったことを悔しく思った。もし今夜の占いで惡魔を引き当てることが出来たら皆を守れたかもしれない。
「…駄目ね。考えるのは止めにしなくちゃ…。」
一人は惡魔ではないと確信を得られた。それで充分ではないか。そう考えてカードを片付け始めた。この黙祷室は神官のルカにとっては神聖な場所だ。なるべく元の厳かな場所に戻したい。

神官として出来ることや、やらなければならないことがたくさんある。誰もが見えない恐怖に怯え、疑心暗鬼に駆られている状況で私がしっかりしないでどうするというのだ。しかしルカにとってもこの救済はおぞましい恐怖に包まれているものだと感じていた。先の見えない未来程、怖いものはない。

黙祷室を後にしたルカは教会の窓から満月を見上げた。聖堂のステンドグラスは月の光を受けて怪しくも美しい輝きを放っていた。
そうだ…ここは神聖なる教会。誰にも邪魔されることのない、唯一無二の場所だ。その未来を、勝ち取らなくてはならない。
「明日の夕刻までには…必ず。」
ルカは固い決意を満月に向けてそっと、されど力強く呟いた。
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