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ひとやまアンソロ企画 Wer ist der wahre Teuful

「満月か…。」

自宅の寝室でグミは独り呟いた。いつもと同じ満月。そのはずなのに今日はその輝きが少し怖く見えた。いつも通りの日常、いつも通りの朝。グミは習慣として村の皆のためにパンを焼いて、それを配ることから一日が始まる。ところがリンの死体と一枚の羊皮紙が全てを変えてしまった。会議で惡魔を追放するとか、名乗り出ろだとか、皆血相を変えて話し合い…というか疑心暗鬼になっていた。

「惡魔だとか、ゲーム?だとか……興味ない」

グミから見たら阿保らしい、というのが正直な感想だった。グミは惡魔の存在は信じているがこの世に蘇るはずがないと思っていた。だから皆の様子を見てそう思っていたし、惡魔など非科学的というガクの言葉にその通りだと思った。結局話しあいも進まなかったし、カイトが騎士であると名乗ったため今日は惡魔も怯えて出てこないだろう。

いつも通りパンの仕込みも終わったからこれで安心出来る。いつもと同じ、何も変わらない夜。それなのに…。グミの背筋には冷たい汗が流れた。慌てて布団にくるまり目を閉じる。
「明日…明日だって変わらない日になる…絶対そうだ。」
目が覚めたら、いつもと同じ日に違いない。惡魔なんていなかった。いつもと同じように村の皆にパンを振る舞おう。
そう、誰も死んだりなんかしていない。命が狙われたりすることだって…でも、もしかしたら…。頭の中でよぎるリンの死に顔を打ち消しながらグミは眠りについた。
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