霍公鳥 -after if-
「♪〜♪…♪♪…?」
神威がくぽが声を取り戻してから数日後。マスターは早速カバー曲を作ることになり彼はその練習をしている、が。
「♪〜♪…?♬〜」
「……。」
あぁ、もう。まただ…。まだ声の感覚が戻ってきていないのか音を外したりリズムが乱れたりしている。ルカはマスターへの夕食を作りながらだんだん歌が気になり…いや何だか無性にイライラして、結局途中で火を止めた。
「だーーーっもう!!さっきから色々違う!!」
「ごっ、ごめんなさい…!!」
急な大声にびっくりしたのかがくぽの声は裏返り肩を震わせた。
「別に貴方の声に怒ってるわけじゃありません。せっかく作ってくれたマスターのカバー曲を間違えることに怒ってるんです。」
はぁ…とため息をつきながらがくぽが手にしていた楽譜を奪い確認する。間違えていたのは…ここか。この曲は歌詞を強調するためにBメロの音幅が急に広くなる。がくぽは声の調整が上手くできず、無意識に音を外していたのだろう。
「声が出なくてもVOCALOIDだ…とは思っていたんですけど…。でもまだ歌うことに自信が持てなくて…。マスターも不安になりますよね…」
「この間は私を突き飛ばしてまで叫んだのにですか?」
「…あれはどう見ても…いや、なんでもないです…。」
がくぽが何か言いかけたような気もするが他愛もないことだろう。何か顔が若干青ざめてる気もするけど。
それはそうと、とルカは再び楽譜に視線を落とした。説明しようにも上手く言葉にできない…。それなら、とルカは空気を吸いこんだ。
刹那、春の暖かな夕日がさす部屋にルカの声が響いた。
「♪〜♪〜♪♪ ♬〜」
がくぽは目を見開いた。ここまでルカの歌声をちゃんと聞いたのが初めてだったから、でもあるがそれ以上に。力強く響く、とても綺麗な声。「巡音ルカ」としての声だった。
歌い終わるとルカは楽譜に軽くメモしてがくぽに返した。
「はい」
「あ…ありが…」
「歌うことに自信が無いなんて甘いこと言わないでください。貴方のV2の声は正直今聞くと他の人は大分違和感を覚えるかもしれん。でもその声は、マスターが望んだ声です。」
「…。」
「前にマスターが言ってました。がくぽの声は…何色にでも染まる声だって…。認めたんですよ、その声を。だから自信が無いとか私の大好きなマスターに対して言わないでください。」
ただでさえ貴方のことが嫌いなのに。と小さな声でこぼし、再び夕食作りに戻る。するとがくぽから名前を呼ばれた。
「ルカ、ありがとう。それと…」
「…何ですか」
「声…綺麗だった」
「…はぁ?!?!急に何言い出すんですか?!当たり前です!!やっぱり貴方のこと嫌いです!!」
予想外のことに驚いて早口で返す。がくぽが余計に縮こまった気もしたが気にせずマスターの夕食作りに戻る。
それにしても…。どうして急に。綺麗だと言ってきたがくぽは…笑っていた。嘲笑などではなく春のような暖かな…そんな顔だった。どことなく大好きなマスターに似ていて…。
(わっ、私は一体何を考えて…?!)
こんなにも思考を乱されることはルカにとってはじめてだった。今までは大好きなマスターのことと、歌うことだけを考えていれたのに。
でも、ちょっとだけ…。
(…やっぱり嫌いだわ。あんなの)
ルカの顔に桜のような笑顔が咲いていたのは、誰も知らない。
神威がくぽが声を取り戻してから数日後。マスターは早速カバー曲を作ることになり彼はその練習をしている、が。
「♪〜♪…?♬〜」
「……。」
あぁ、もう。まただ…。まだ声の感覚が戻ってきていないのか音を外したりリズムが乱れたりしている。ルカはマスターへの夕食を作りながらだんだん歌が気になり…いや何だか無性にイライラして、結局途中で火を止めた。
「だーーーっもう!!さっきから色々違う!!」
「ごっ、ごめんなさい…!!」
急な大声にびっくりしたのかがくぽの声は裏返り肩を震わせた。
「別に貴方の声に怒ってるわけじゃありません。せっかく作ってくれたマスターのカバー曲を間違えることに怒ってるんです。」
はぁ…とため息をつきながらがくぽが手にしていた楽譜を奪い確認する。間違えていたのは…ここか。この曲は歌詞を強調するためにBメロの音幅が急に広くなる。がくぽは声の調整が上手くできず、無意識に音を外していたのだろう。
「声が出なくてもVOCALOIDだ…とは思っていたんですけど…。でもまだ歌うことに自信が持てなくて…。マスターも不安になりますよね…」
「この間は私を突き飛ばしてまで叫んだのにですか?」
「…あれはどう見ても…いや、なんでもないです…。」
がくぽが何か言いかけたような気もするが他愛もないことだろう。何か顔が若干青ざめてる気もするけど。
それはそうと、とルカは再び楽譜に視線を落とした。説明しようにも上手く言葉にできない…。それなら、とルカは空気を吸いこんだ。
刹那、春の暖かな夕日がさす部屋にルカの声が響いた。
「♪〜♪〜♪♪ ♬〜」
がくぽは目を見開いた。ここまでルカの歌声をちゃんと聞いたのが初めてだったから、でもあるがそれ以上に。力強く響く、とても綺麗な声。「巡音ルカ」としての声だった。
歌い終わるとルカは楽譜に軽くメモしてがくぽに返した。
「はい」
「あ…ありが…」
「歌うことに自信が無いなんて甘いこと言わないでください。貴方のV2の声は正直今聞くと他の人は大分違和感を覚えるかもしれん。でもその声は、マスターが望んだ声です。」
「…。」
「前にマスターが言ってました。がくぽの声は…何色にでも染まる声だって…。認めたんですよ、その声を。だから自信が無いとか私の大好きなマスターに対して言わないでください。」
ただでさえ貴方のことが嫌いなのに。と小さな声でこぼし、再び夕食作りに戻る。するとがくぽから名前を呼ばれた。
「ルカ、ありがとう。それと…」
「…何ですか」
「声…綺麗だった」
「…はぁ?!?!急に何言い出すんですか?!当たり前です!!やっぱり貴方のこと嫌いです!!」
予想外のことに驚いて早口で返す。がくぽが余計に縮こまった気もしたが気にせずマスターの夕食作りに戻る。
それにしても…。どうして急に。綺麗だと言ってきたがくぽは…笑っていた。嘲笑などではなく春のような暖かな…そんな顔だった。どことなく大好きなマスターに似ていて…。
(わっ、私は一体何を考えて…?!)
こんなにも思考を乱されることはルカにとってはじめてだった。今までは大好きなマスターのことと、歌うことだけを考えていれたのに。
でも、ちょっとだけ…。
(…やっぱり嫌いだわ。あんなの)
ルカの顔に桜のような笑顔が咲いていたのは、誰も知らない。
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