手を取って mi princesa

メイド1「よーっし!洗濯終わり!」

ラナ「お疲れ様~!まだ時間早いし、ちょっと休憩しよっか!」

メイド2「そうしよう!あ、私かごだけ片付けてくるね」

メイド全員「ありがとう!」


メイド3「はぁ~今日もいい天気だね~」

クラベル「そうだね」

メイド4「あ、こんな天気だと王女様が外に出ると思うけどクラベル行かなくていいの?」

クラベル「うん…今は、大丈夫」

ラナ「…最近、王女様も婚約が決まったからその準備で忙しいんじゃない?」

メイド1「そうよね。結婚準備って大変って聞くもの」

メイド6「そうよ!前王妃のエリー様が結婚されてお城に来られた時も大忙しだったもの!きっと私達には想像できないくらい大変なんだわ…」

メイド2「大変だとは思うけど、結婚の幸せを感じていらっしゃると思うよ、王女様」

メイド3「確かに!ウエディングドレス、綺麗なんだろうなぁ…」

メイド4「憧れるわ~!純白のドレスを着て、綺麗なブーケを持って…」

メイド5「バージンロードの先には最愛の王子様!!」

メイド「きゃ~!」

メイド1「素敵ね~!いつか私達にもそんな人が現れたらいいのにね~!」

ラナ「案外もう、皆の近くにいたりして!」

メイド「本当?!誰なんだろう~!」


メイド2「あ、もうこんな時間!そろそろ休憩終わりにして行かなきゃ!」

メイド1「私も!ラナとクラベルは?」

クラベル「私は、まだ持ち場の集合まで時間あるから後で行くね」

ラナ「私も!」

メイド1「分かった。じゃあまた後で」

メイド3「休憩しすぎて遅れないようにね~!」

ラナ「そんなことしないってば~!」


ラナ「…で?何があったの?」

クラベル「え…?」

ラナ「今日の元気の無さといい、仕事のミスといい、クラベルらしくないから」

クラベル「誰も気づかなかったのに…ラナにはお見通しだね」

ラナ「勿論!私はクラベルの側にずっといるもん!二番目にね!」

クラベル「二番目?」

ラナ「うん!一番目は…王女様でしょ?」

クラベル「マリア様が一番…か…」

ラナ「…」

クラベル「…しばらく、一人にしてほしいって言われちゃった…マリア様に。朝の支度のためにノックしたけど、それも断られちゃった」

ラナ「そうなんだ…じゃあ今は周りのことは一人で?」

クラベル「多分…そう。他の子たちが入ってなければだけど…」

ラナ「そっか…」

クラベル「…」

ラナ「クラベルはよっぽど王女様の事が好きなのね!」

クラベル「…え?!いやいやいや、あの、べっ、別にそういうわけじゃ!いやでも好きではあるけど…!」

ラナ「どうしたの?そんなに慌てて。普通に王女様を好きかどうか聞いただけだよ?」

クラベル「そっ、そうだよね!何でもないの…!でも…そうだね。マリア様のことは…お慕いしてる…」

ラナ「普段のクラベルを見てればわかる。王女様といる時のクラベル、すごく幸せそうだから」

クラベル「…マリア様とは、もう10年も一緒にいるの。勿論小さい時は喧嘩することもあったけど、マリア様の何気ない一言に支えてもらうことがすごくあったし、マリア様の優しさに救われることもあった。マリア様はよく、いつも色々助けてくれてありがとうって言ってくれるんだけどね…助けられてるのは私の方。マリア様の太陽のような笑顔が、天使のような優しさが…全部全部、私の支えなの。マリア様の全てが…。だからマリア様の夢や望みが叶うことを一番願ってるし、悲しい顔や苦しんでいるところは見たくない…。私が全部変わって、守ってあげたい。でも…身分も性別も、何もかもがそれを許してくれない…それがすごく悔しい。それに…私のマリア様に対する想いが、今マリア様を苦しめているかもしれなくて…そう考えたら今の私がマリア様の側にいる資格ないのかなって…」

ラナ「クラベル…」

クラベル「…あっ、いや!今のは本当に例えで!特に深い意味は…!」

ラナ「まだ何も言ってないよ~?」

クラベル「うっ…何でもない…から…」

ラナ「でも…そうだね…いっそ、全員がそれぞれの大切な人と一緒に、自由に生きられる世界があったらいいのにね…」

クラベル「…」

ラナ「…私、そろそろ時間だから行くね」

クラベル「うん…」



クラベル「大切な人と、自由に…そんな世界があるなら、探しに行きたい。私にとってのお姫様は一人だけ…でも…でも、私は女で…専属メイド。それだけは願ってはいけない。そんなことしたら余計にマリア様を苦しめる。でも…今の苦しみから救ってあげられるなら…駄目だ。私にそんなこと許されるはずがない…だけど…私は…どうしたら…」



セオ「自由に生きられる世界ね」

ラナ「何よ…盗み聞きしてたの?」

セオ「別に。廊下通ったらラナの声が聞こえただけ」

ラナ「それを盗み聞きって言うの」

セオ「悪い悪い。…なぁ。大丈夫か?」

ラナ「何がよ」

セオ「クラベルと話してた時、元気がなさそうだったから」

ラナ「…大丈夫。平気」

セオ「迷いを持ったまま剣を握れば、自分自身も飲み込まれちまうぞ。お前は一人じゃないんだから…」

ラナ「大丈夫だから!!」

セオ「…」

ラナ「迷いなんてない…!今の私に、ためらうことも迷うこともない…!私は、絶対負けない」
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