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手を取って mi princesa

セオ「ラナ?大丈夫か?ラナ…?入るぞ」


ラナ「う~~~…うあああ…???」

セオ「やっぱり、書類の山の中でうなってた。悩んでいるところ悪いが追加の仕事だ。今度の国会の議題チェックと財務部からあがってきた予算案の修正。それから再来月にあるロナルド公国、アシュリー帝国との合同外交会議で提出する貿易協定案の作成。それから今月分の国民からの依頼をまとめたレポートも置いておくからチェックしてくれ…ラナ?」

ラナ「…あ~~~っ、もう!何でこんなに仕事多いのよ~~~~?!」


セオ「仕方ないだろう?!国を導く立場にはそれなりの仕事も責任もついて回るんだ!ほら崩れた書類の山片付けて!」

ラナ「うえぇええん…」

セオ「仕事は多くて大変かもしれないけど、その分俺たちがしてきたことは大きい。国の経済も安定しているし、隣国と平和協定を結んだことで貿易にも力を入れられている。何より国民がお前を信頼し、感謝しているんだぞ?ラナ大統領?」

ラナ「それは副大統領のセオも同じでしょ?それに大統領だって、革命が終わった時に一時的にリーダーになったのがそのまま引き継がれただけだよ…私には、何も無い」

セオ「ラナ…」


ラナ「分かってる。もうあの日から一年たつ。正式にここはビリア共和国になったんだし、いい加減前を向かなくちゃって思ってるし、あの時革命を起こせたことも後悔してない。でも…でもやっぱり脳裏によぎるの。もし…王女様がいたら…クラベルがいたら、もっと良かったのかなって…!」

セオ「…よし。ラナ、来週土曜の予定は?」

ラナ「え、何急に…土曜日は書類のチェックだけだけど…」

セオ「分かった、それ前倒ししておけ。土曜日名目上の休みにして出かけるぞ」

ラナ「休み?!もう半年ぶり…!って、名目上?」

セオ「本当は一日休み。でも今の仕事を考えるとそれは難しいから俺と二人でビリア共和国の農地改革の進捗を確認しに行く」

ラナ「…それだったら、半日もかからずに終わるじゃない」

セオ「…だから!その日!俺と!デートしてほしいんだよ!!」

ラナ「セオ…」

セオ「…俺、半年前にラナに告白した時に言ったよな?返事はいつまでも待つから、少しは俺のことも見て欲しいって。俺…ラナが頑張ってること、すげー知ってるからそうやって過去と比べて落ち込まないでほしいんだよ」

ラナ「…」

セオ「…悪かったな。変な話して。やっぱり嫌だよな、俺とは。土曜日はさっき言った通りのスケジュールになるように調整しておいてやるからゆっくり休めよ…」

ラナ「いいわ、そのままで」

セオ「え?」

ラナ「だから…行ってあげる。その…デート」

セオ「本当か?!」

ラナ「でもいいの?…あたしみたいな女は、面倒くさいよ?」

セオ「…あぁ。望むところだ」

ラナ「ふふっ…。」


ラナ「もう一年か…。」

セオ「あの二人、元気にしてるかな」

ラナ「うん…きっと今頃、夕日の綺麗に見える海辺で暮らしていると思う」

セオ「え、そうなのか?」

ラナ「分からないよ?ただ何となく、ね…。自由な二人だけの世界を望んでいたからそこを選ぶんじゃないかなって思っただけ。」

セオ「…そっか」

ラナ「うん」


ラナ「あの二人…今もずっと、幸せでいるといいな…。」



クラベル「そう…新しい日々が始まるのね…」


マリア「な~に読んでるのっ!」

クラベル「うわあああ!」

マリア「ふふっ」

クラベル「きゅ、急に驚かさないでくださいよマリア様!びっくりしたじゃないですか!!」

マリア「あはは、ごめんごめん。ずうっと真剣に何か読んでいたから気になって。ごめんね?…クララ」

クラベル「…あっ」

マリア「驚いた拍子で戻ってたよ?話し方も」

クラベル「…やっぱり10年で出来た癖ってぬけないね。ごめん…マリー」

マリア「うん!今は名前も変えて本当の2人として生きてるからそっちで呼ばれるほうが安心する!」

クラベル「そう」

マリア「…ところで、それ何を読んでいたの?」

クラベル「あっ、これは…」

マリア「もしかして…ビリア王国のこと?」

クラベル「いや、これは…」

マリア「見せて」

クラベル「それは…!無理だよ。マリーだって傷つくかもしれないのに…」

マリア「お願い…クラベル?」

クラベル「…!もう…その言葉と上目遣いで頼まれると断れないの知ってるくせに~!」

マリア「うふふっ。さっきのお返し!」



マリア「そう…やっぱり、そうなったのね」

クラベル「え?!やっぱりって…マリーはこうなることが分かっていたの?」

マリア「えぇ。もしも革命が成功したら、臨時ビリア王国が始まる。そして私達がいなくなって一年以内に再び見つからなければ…消息不明から、失踪という名の死亡届が出されて、臨時ビリア王国は、正式にビリア共和国になる」

クラベル「それを…全部分かって…」

マリア「…一人で逃げようと思っていた時にね、たまたまその法律を見つけたの。お父様が亡くなってもし私も戻らなければ、王位を継げる人は誰もいなくなる…。私は自由になりたいと思っていたけど、実はその先もちゃんと見ていたのよ?まさか、本当にこうなるとは思わなかったし、臨時リーダーが法律を変えてしまえば全て崩れてしまったけれど」

クラベル「でも、ラナとセオは、皆は…それを選ばなかった」

マリア「感謝しなきゃね。皆には」

クラベル「…うん」

マリア「…いつか、お礼言いに行かなくちゃね」

クラベル「そうだね…会いに行こう。いつか、二人で」

マリア「うん!楽しみ!」

クラベル「…ねぇマリー。一つ聞いていい?…マリーは今、幸せ?」

マリア「どうしたの急に?」

クラベル「いや、特に深い意味はないんだけど…あの日、二人で旅に出てここに来て一年がたったでしょ?私は、後悔はしてないけど…富も名声も、【普通の未来】も貴女から奪ってしまったから…だから、どうなのかなって」

マリア「…そうね。傍から見たら私は間違った判断をしたって言われるかもね。富も名声も【普通の未来】も…何もかも手放したんだから。」

クラベル「…」

マリア「でも!後悔なんてしてないわ!私は自分の手で、自分の未来を掴んで、今この瞬間、私の愛する人と共に生きられてるんだから!いつもありがとう、クララ。私は心から幸せ!」

クラベル「…マリー…!」

マリア「…ねぇ、私からも聞いていい?…クララは今、幸せ?」

クラベル「…うん!心から幸せよ、マリー!」

マリア「…良かった!」

クラベル「…ありがとう、マリー…」

マリア「ねぇ、クララ。久しぶりにワルツ踊らない?」

クラベル「え?!もう一年経つし踊れる自信ないよ?!」

マリア「それでも!私だって一年経つから自信はないし…何となく、お城で二人きりの夜を過ごしたことを思い出して!」

クラベル「…もう…上手くリード出来なくても許してね?」

マリア「私も上手く踊れなかったらごめんね?」

クラベル「私は、相手がマリーだから…世界で一番大切なお姫様だから」

マリア「…!ありがとう!私も…相手が世界で一番大切なクララだから嬉しい!」

クラベル「…さぁ」

マリア「さぁ…」

マリアとクラベル「手を取って…mi princesa!」
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