Dreamers!!

オスカー「はいお疲れ様。二人とも歌は良い感じだけどそれぞれ課題が残っている感じかな」

フウ「ウ”っ…」

エミリア「はい…」

オスカー「まずソラ。君は歌の技術は一番持っている。どこでその綺麗な発声法を習ったのか僕も聞きたいくらいだ」

エミリア「あ、ありがとうございます!」

オスカー「ただ…感情がついてきていないシーンが多々ある。午前中の芝居稽古でもベルに指摘されていたでしょう?上手い歌と心に響く歌は違うんだ。歌詞の横にその時に君が思った事とモナに対して感じたことを君自身の言葉で書きだしてくること。そうすれば必ず上達する」

エミリア「はい…」

オスカー「フウ、アーヤの感情や君が伝えたい事は歌にのっていて心に響く。だけど今の君の歌い方では公演期間中安定して歌い続けることは限りなく不可能だ」

フウ「はい…」

オスカー「僕がいつもボーカルレッスンの基礎でしている事を家でもしてくること。歌えない環境にあるなら発声の代わりに筋トレをすること。舞台で歌い続けられることはそのシーンを壊さない為に何よりも大切だ。いいね?」

フウ「はい!」

オスカー「よし、いい返事!まだ時間があるなら二人でお互いの課題を教え合うと良い。舞台に出てくるアーヤとモナは掛け合いが多く呼吸のあった演技が求められる。今のうちにお互いを理解しておくように。それじゃあ君たちのレッスンはここまで!」

エミリア・フウ「ありがとうございました!」



エミリア「歌って難しいんだね…」

フウ「うん。今までレッスンとか受けたことないから歌い方とかわかんないよ~」

エミリア「私も…歌ってなんだかお芝居みたいで…上手く歌えないや」

フウ「…そうだ!お互いの課題を教え合うといいって言ってたし、手伝うよ!ソラの課題!」

エミリア「ええっ?!そ、そんな悪いよ…!」

フウ「いいのいいの!気にしないで!そうだなあ…まずソラがモナに対して感じたこと、か…あっ!ソラは最初モナって言われてどうだった?」

エミリア「最初?最初は一国の王女様だって言われて…複雑、だった…本当だったらお姫様って誰もが憧れるはずなのに私には…翼をもがれた可哀そうな女の子にしか見えなくて…」

フウ「…そうなんだ。ソラとどこか重なるところがあったのかな?」

エミリア「重なる…?」

フウ「ほら、前にもクロエが言っていたでしょう?ソラが演じているモナとソラが似ているって…」

エミリア「…ねえ…フウはさ、最初ヒロインに選ばれたときどうだった?怖く…なかった?」

フウ「…怖かったよ。今でも怖い。他のメンバーの方が良いんじゃないかなって思う時だってあるよ。でも…アーヤのセリフの中にね、諦めなければいつかきっと笑える日が来るってあるの。そのセリフを初めて読んだときにね、アーヤは私がやりたいって思っちゃった。私、昔おばあちゃんに同じような事を言われたことがあって…私は人に幸せを届けられるような人になれるって、くちぐせのように言ってくれたの。それこそ…おばあちゃんが亡くなる直前まで…だからね、どんなに苦しくても前を向くアーヤの姿が私と似ていると思ったの。私にしか伝えられないアーヤの想いがあるんだって…だからどんなに怖くても向き合うって決めたんだ。アーヤとも…自分と、おばあちゃんの夢とも」

エミリア「…強いね…フウは…私は…」

フウ「ソラ…?」

オスカー「よし!これで全員のボーカルレッスンが終わったから今日は解散!自主練を見てほしいって言っていた人はそのまま残っておいてね。各自言われた課題を改善してくること!お疲れ様」

夢追いチーム「ありがとうございました!」



フウ「…ソラ?」

エミリア「…え?あ、ごめん…ちょっと考えこんじゃった…き、今日は、帰るね!」

フウ「え?!ちょ、ちょっとソラ…!待って!!」



マルタ「ルーカス、ハディ!帰ろうぜ!」

ルーカス「あ…悪い今日はちょっと用事があるから…帰るな」

マルタ「お?そうなのかお疲れ!じゃあハディ…っていねえ…」



ハディ「ただいま、ナダル」

ナダル「ハディ…!おかえり。夕食準備するよ。」

ハディ「いやいいよ。俺がやるから座ってて」

ナダル「ううん、ハディは稽古頑張ってきたんだし奥の部屋ででも休んで。僕が出来ることはするから」

ハディ「ナダル…でも…」

ナダル「…前も言っただろう?僕は二年前の工場の大事故で左半身を上手く動かせない。もう普通に歩くことだって難しいんだ。役者という道は…今の僕には無理だ。それに、ハディは僕よりも才能があるんだ。劇団メモリアのメンバーにもなれた。絶対すごい役者になれる…僕はその夢を応援したいんだ。わかってハディ」

ハディ「ナダル…でも本当は…まだ、諦めてないんじゃないのか?」

ナダル「僕が?まさか…」

ハディ「俺はまだ…諦めてないよ。あの時の約束…二人で…役者になって、同じ舞台に立つ夢…」


ナダル「…僕は…僕だって…諦めたくないさ…でも…無理なんだよ…ごめんな、ハディ…」



ルーカス(声のみ)「こんにちは先生。セイラの様子はどうですか?」

医者(声のみ)「ルーカス君。こんにちは。まだ眠りの中だよ…セイラさんが夢を見始めてもう2年たつ。最近反射行動も減ってきた。…ルーカス君、親御さんにも伝えておいてほしい…植物状態はそう長く持たない。セイラさんがここまで生きていることも奇跡なくらいだ」

ルーカス(声のみ)「わかってます。でも…先生お願いです…妹を…セイラを助けてください。お願いします…!」

医者(声のみ)「勿論最善は尽くすけど…その時が近い事を覚悟しておいて下さいね」

ルーカス(声のみ)「はい…」


ルーカス「セイラ…遅くなってごめんな…ほら、今日の花を持ってきたよ。綺麗だろう?セイラの好きなスターチスだ…今日も舞台の稽古だったんだ。やっぱり劇団メモリアのレベルは高くてさ、毎日が充実してるんだ。カンパニーもすごい意識が高くて、学ぶことも多いよ。俺が演じてる役もさ、俺の良さを知っているかのようで向き合う時間が本当に楽しいんだ。でも…セイラがいないのは寂しいよ。セイラだったらきっと今頃舞台の上で輝いていたはずなのに…ごめんなセイラ。あの日…2年前俺がおつかいなんか頼まなければ…セイラは助かったのかな…工場の事故に巻き込まれることもなかった。こんなに長い時間病院にいる事にはならなかった。セイラは…こんなことにはならなかったのに…ごめん、ごめんな。セイラ…」

看護師(声のみ)「ルーカスさん、そろそろ面会時間が…」

ルーカス「あっ!す、すみませんすぐ行きます!…お前の分まで頑張るよ、セイラ…また明日な…お休みセイラ」



セイラ「…お兄ちゃん…お兄ちゃんは悪くないよ。私がお兄ちゃんを喜ばせたくて、お兄ちゃんが好きなものを内緒で買いに行っただけなの。謝らないでお兄ちゃん。笑ってよ…私もお兄ちゃんが舞台で輝いている姿を見たいよ…私も隣に立ちたい。だって…二人で舞台に立つことはお兄ちゃんと私の夢だったから…早く目覚めたいよ…毎日毎日起きようと思っても身体が動かないの。声が出せないの…ずっと、一人ぼっちで…でもね、お兄ちゃん。私も寝ている間にずっと踊りの練習をしているの。お兄ちゃんとの約束を叶えるために…早く覚めたい…この悪夢から…一人ぼっちは…怖いんだよ…毎日毎日一人で踊るの…待ってるの…お兄ちゃんともう一度話せる日を…」
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