Dreamers!!

ベル(声のみ)「それじゃ作戦の最終確認。オスカーとエレナが既にソラの出席する晩餐会に呼ばれたゲストとして屋敷内に潜入している。二人にはソラとその居場所に関する情報収集、及びその連絡を頼む」

エレナ(声のみ)「…はい…」

オスカー(声のみ)「了解です」

ベル(声のみ)「エレナ…」

エレナ(声のみ)「私はやれます」

ベル(声のみ)「…わかった。シェリー。貴女は屋敷外の警備の状況を確認しつつ変装しながらソラがいない場所へ警備を上手く誘導して」

シェリー(声のみ)「はい!」

ベル(声のみ)「ルーカス、ドミニク、ユイはエレナとオスカーから送られてくる情報を基にソラがいる部屋を割り出して報告。執事とメイドに変装しているとはいえ周りからの目線には気をつけるように」

ルーカス、ドミニク、ユイ(声のみ)「はい!」

ベル(声のみ)「三人からの指示が入った後に、グレイとマルタでソラの救出準備、その間の見張りをリリア、クロエ、ラン、リンで協力して行って」

グレイ、マルタ、リリア、クロエ、ラン、リン「はい!」

ベル(声のみ)「アニー、アリア、ハディ。貴方達は屋敷内に侵入しているメンバーとソラの脱出経路の用意と誘導を」

アニー、アリア、ハディ「はい!」

ベル(声のみ)「フウ、貴女は基本的にグレイとマルタの補助を。それでもしソラに会えたら…」

フウ「…わかっています。私の…皆の気持ちを、ソラに伝えます」

ベル(声のみ)「…頼んだ…いいか、相手は伯爵家だ。侵入者が分かれば…どうなるか分からない。自分たちの安全を最優先に、仲間を救出するよ!!」

全員「はい!!」

フウ「待っててソラ。必ず…助けるから」



テネシー「ちゃんと支度は終わっているわね?」

エミリア「はい、お母様」

テネシー「今日は毎月我が家で行っている晩餐会だから貴女を出さないわけにはいかないけど…勝手な真似はしないでちょうだいね?」

エミリア「はい、お母様」

テネシー「…それでいいのよ。貴女はこの二週間メイナード伯爵家の長女としてふさわしい振る舞いを学んだはずよ。そして貴女がエミリア・メイナードであるから得られる幸せも…。今日は貴女にふさわしい相手も来て下さるからしっかりね?」

エミリア「…はい、お母様…」

テネシー「…後で迎えに来るわ。何かあったら部屋の外のメイドに言いなさい。それと…窓の外にも見張りをつけてあるし、ここは三階…何をしても無駄よ」



エミリア「…今頃、皆怒ってるかな…もうずいぶん練習行っていないし…フウにもひどいことを言っちゃったしな…もう、私の居場所なんて…ないよね…せっかく自由になれると思ったけど…皆を傷つけるくらいなら…ごめん、ごめんね、ごめんなさい…もう、私は…」



エミリア「何か…もめごと?廊下からかしら…」



エミリア「ねえ、大丈夫?外で何かあったの?」

ユイ(声のみ)「こっちは大丈夫だ。無事か?」

エミリア「その声…もしかして…!」


ルーカス「良かった、間に合って!」

エミリア「ルーカス!ドミニク!ユイ!」

ドミニク「怪我は…体調は?痛いところとか…」

エミリア「大丈夫。平気よ」

ルーカス「良かった。」

ドミニク「…こちらドミニク。屋敷の西側三階の角部屋でソラを見つけました。無事です」

ベル(声のみ)「オーケー。ありがとう。マルタ達救出班は部屋の下まですぐに向かって。ドミニク、ユイ、ルーカスはそのままソラを守りつつ救出班に引き渡した後に屋敷からの脱出を」

ドミニク「了解です」

ソラ「一体どういうこと?それに…どうしてこんな危険な真似を…」

ユイ「これは…皆で決めたことだ。ソラを助けに行こうって。そのために皆色々準備して、危険を顧みずに来たんだ」

ルーカス「俺たち三人は屋敷に侵入する為に礼儀作法とか武道まで教えてもらえてラッキーだったけどな」

ソラ「そんな…私は…もう戻れないわ…戻ったところで、裏切り者の私がいる場所なんてどこにもないじゃない!それに、もし私が戻れば…妹や貴方達を傷つけることになる!私はそんなことをしてまで自由に生きたいとは思わない…!!もう、放っておいてよ!!」

ドミニク「…ソラ」

エミリア「貴方達が知っているソラは…もう…いいえ、初めから…偽物だったのよ…」

ルーカス「偽物って…そんな言い方」

ユイ「そうだな。確かに私たちはベルオーナーからソラが色々隠していたことは聞いた。今、着ているドレスを見ても、部屋を見ても、それは一目瞭然だよ」

エミリア「なら…」

ユイ「でも!…私達がそんなことであんたを見捨てると思った?私達ってそんなに軽い存在だった?少なくとも私達から見たあんたは…たとえ危険を冒したとしても助けたいと思える仲間だって言える」

エミリア「…」

ユイ「それに…自分のせいで仲間を傷つけたくないってのは…誰かさんと一緒だな」

エミリア「え?」


エミリア「…バルコニー?」

ユイ「…行きな。ここは何とかしておくから」



フウ「ソラ!!」

エミリア「フウ…」

フウ「無事みたいね…良かった。」

エミリア「どうして…私、フウにひどいこと…」

フウ「確かに…私も苦しかったよ。どうしてって思った。でも、私は…私たちはソラのこと、何にも知らなかった。気付くことすらできなかった。苦しんでいることも、怯えて生きていたことも…勿論、今もソラのこと全部知っているわけじゃないけど…謝るのは私の方。無責任なこと言って本当にごめん。」

エミリア「私こそ…」

フウ「私…ソラにいてほしい。私だけじゃなくて、皆がそう思ってる。ソラ無しでこのカンパニーは存在できないの。モナは…貴女しかいない。お願いソラ、戻ってきて」

エミリア「…ごめんなさい…出来ないわ…」

フウ「やっぱり…未来が見えないから…?」

エミリア「…覚えていたのね…私が言ったこと…そうよ、私は自分に嘘をついて生きてきた。ただ、敷かれたレールの上を歩いてきたの。それしか…進む道が無かったから!道を外れることを許されなかったから…!そして、初めて自分の望むままに生きて分かった。私には自由も未来もないんだって!もし私が私を望めば…他の誰かを、フウを傷つける!!そこまでして…私は自由に生きたいとは思えない!!もう…疲れたの…」

フウ「…王女様、いいえ、モナ。私と一緒に逃げよう?」

エミリア「え?それ…アーヤの台詞…」

フウ「…」

エミリア「…何を…言っているのアーヤ…そんなことをしたら…貴女は…」

フウ「わかっています…わかってる。貴女を助ければこれから、色々なことを背負うかもしれない事も、貴女が言うように貴女が私を傷つけるかもしれないことも…」

エミリア「なら…!」

フウ「でも!!…それでも私は、貴女を…貴女の未来を、一緒に作りたいの!!」

エミリア「!!」

フウ「…あのね、ソラ。私はソラのこと何も知ることが出来なかったし、ソラが今背負っているものを全部持てるかって聞かれたら正直分からない。それを簡単に渡したくない可能性だってあるしね。でも…進む未来が無いなら作ればいい。生きたいと思える未来を。今の私なら、カンパニーならソラの未来を一緒に作ることが出来る。希望だって、夢だって紡ぐことが出来る!先が見えないなら…私がずっと隣でソラのこと照らすよ。私が、ソラの持つ輝きに魅了されたみたいに」

エミリア「…フウ…」

フウ「ソラ…一緒に行こう?もう…充分頑張ってきたんだから、自由になっていいんだよ…」

エミリア「…でも…もし私が自由になれば…今度は、ステラが、妹が…!」

フウ「あ、妹さんは…」

アリア(声のみ)「フウちゃん!聞こえる?!たった今ユイちゃんから、ソラちゃんの妹さんを預かったわ!無事よ!!」

フウ「やっぱり…妹さん話せる?」

エミリア「ステラ…ステラがそこにいるの?!」



ステラ(声のみ)「お姉様…お姉様?聞こえる?ステラよ!」

エミリア「ステラ!!」

ステラ(声のみ)「劇団メモリアのオーナーの方からある事情を聴いて、私もこの屋敷を出ることにしたのよ。今日の晩餐会に来ているゲストに扮装していた方から教えていただいたの。ここはまだ屋敷内だから話せないけれど…私は無事だから気にしなくて大丈夫よ。」

エミリア「…分かっているのステラ。ここを出るという事は…全てを捨てることなのよ…?」

ステラ(声のみ)「言ったでしょう?私はお姉様の味方で…お姉様が羽ばたいているところを見たいって」

エミリア「ステラ…!」

ステラ(声のみ)「…後はお姉様次第よ。私は屋敷を出て自分の力で生きてみようと思うの。誰かのためにね。そしてお姉様の夢を一番近くで応援するのよ。…じゃあ、先に行くわ」

エミリア「…ステラ…ありがとう…」

フウ「さあ…ソラはどうしたい?。」

エミリア「私は…私は、自由になりたい…!メイナード伯爵の娘じゃなくて、ソラとして!!舞台で、皆と一緒に未来を、探しに行きたい!」

フウ「…うん!!探しに行こう!!ソラの未来!!」

マルタ(声のみ)「フウ!!これ使え!」


フウ「いたたた…何とか助けられてよかった…大丈夫?ソラ?…ソラ…?」

エミリア「…ごめん、ごめんね…!ありがとう…!!」

フウ「…うん…お帰り、ソラ…」


ルーカス「良かったな…無事にここを出れて」

ユイ「そうだな…まだまだ道のりは長いが…ひとまず、安心だな」

ドミニク「後は…全員で無事にこの屋敷を出るだけ」

ルーカス「そうだな。そろそろソラも屋敷から脱出する頃だろうし、俺達も…」

シェリー(声のみ)「ルーカス君?聞こえる?!」

ルーカス「シェリーさん?!どうしたんですか?!何かトラブルが…」

シェリー(声のみ)「今、貴方の妹さんがいる病院から連絡があったの!妹さんが目覚めたからすぐに来てくれって!!」

ルーカス「…え…?」

シェリー「ベルに許可は貰ったからチームから離脱してすぐに病院に行って!!」

ルーカス「セイラ…!!」

ユイ「行けルーカス!大切な妹なんだろ?!」

ドミニク「俺達は大丈夫だから…早く…!!」

ルーカス「…ありがとう!!」


ルーカス「セイラ…セイラ!!」

セイラ「…お、お兄…ちゃん…?」

ルーカス「ああそうだよ。ルーカス兄ちゃんだ。来るのが遅くなってごめんなセイラ」

セイラ「ううん、全部知ってたよ」

ルーカス「え?」

セイラ「お兄ちゃんが毎日お花を持ってきてくれたことも、舞台のお話、たくさんしてくれたことも…毎日…セイラのために…泣いていたことも…遅くなってごめんねお兄ちゃん…」

ルーカス「謝らないで…良かった…セイラ…!!ずっとひとりぼっちにして…ごめんな…!これからは…絶対俺が守るから…!!」

セイラ「お兄ちゃん…お兄ちゃんお兄ちゃん…!会いたかったっ…!!」



ベル(声のみ)「無事にソラとステラ嬢も含めて劇団員全員の脱出が確認できた。シェリーも撤収した。貴方達の調査のおかげで明日には、今までメイナード伯爵夫人が隠してきた悪事も全て報道にさらされ…あの子たちが本当に自由になって、全てが終わるわ。屋敷を無事に出れたみたいだし、貴方達もこのまま劇団で合流して頂戴。本当に色々ありがとう」

オスカー「了解です。では」

エレナ「…良かった…あの子たちが…皆が、夢を手放さずに済んで…」

オスカー「…エレナはいいのか?」

エレナ「どうして、そこで私の名前が出てくるの?」

オスカー「…エレナは…まだ夢を失ったままだろ?役者になりたいって…言っていたじゃないか」

エレナ「…昔の話よ…もう何年も前の。」

オスカー「時間なんて関係ないだろ…俺は、自分の意志で夢を後悔なく終えて、新しい夢を追いかけている。だけどエレナはまだ、後悔しているじゃないか。夢を諦めたこと…皆、自分たちの夢をつかんだのに、君だけ…」

エレナ「私は…!夢を諦めたんじゃない!!捨てたのよ!!!…捨ててしまったの…。今日だって貴方、私の両親に話しかけられていたでしょう?そして言われていたわよね?たかが庶民の夢のせいであの娘は私達を…不幸にしたのよって…!!そんな言葉を聞いたら誰だって夢を追いかけることが怖くなるに決まっているじゃない!!もう…いいのよ…オスカー…いいえ、ウェブスター男爵の息子、オースティン・ウェブスター。貴方が見ていた私は…バーナード公爵の娘、エリーゼ・バーナードは死んだのよ…エレナとして生まれ変わった…これ以上、夢を奪われる人が増えなければ、それがエレナから…私から昔の私への弔いと罪の償いになる…エレナの夢も叶う…それでいいのよ」

オスカー「…エリーゼ」

エレナ「もう二度と!!…その名前で呼ばないで」

オスカー「…」

エレナ「…皆の所に戻るよ。オスカー」
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