太陽の在処~永久の約束
主人公の名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
瓦礫と化していた街はひなたの太陽の力で元の姿を取り戻していた。
あんなことがあったなんて誰も知らずに普通の日常がまた繰り替えされる。
あの戦いの後、ひなたは力の入らない体をなんとか奮い立たせている様子だった。
だから私はひなたの体を支えた。
ギャラクシアに激励を送り、見送ったひなたはやっぱりプリンセスなのだと改めて思った。
この銀河にはひなたの、太陽の光が包んでくれる優しい揺り篭のような場所なんだと、羨ましく、誇らしく思った。
少しの言葉を交してから地上にいる仲間を嬉しそうに見ていたひなたは力を使いすぎたせいか意識を失い倒れてしまった。
「ーひなた?!ひなた!!」
すぐに火球プリンセスが気が付きひなたを診てくれた。
「力を使いすぎたのでしょう。大丈夫ですよ、ファイター。」
突然いなくなってしまう恐怖を知っている私にプリンセスは落ち着くように声をかけた。
それはそうだ。
あんなに力を使ったんだ、ひなたが倒れてもおかしくない。
優しくひなたを抱き上げてひなたのマンションに向かった。
街は新しい一日が始まろうとしていた。
その何気ない平穏な時間はひなたや仲間達と勝ち得た普通の時の流れだ。
マンションに着くとヘリオスがその姿を確認して言葉通り飛んできた。
「ひなた様!!」
「大丈夫、疲れて眠ってるだけだから。」
そっとひなたをベッドに寝かせて穏やかな寝顔を見つめた。
「お疲れ様、ゆっくり休んでくれ。」
そう言って俺は額に優しくキスをした。
リビングに戻るなりヘリオスが歓喜の言葉を掛けてきた。
「星野様、本当にお疲れ様でした。
そしてひなた様を守っていただいて本当にありがとうございます。」
「いや、ひなたを守るのは俺の願いだし、当然の事だ。けど、心配してくれてありがとな。」
ソファーを勧められて俺は腰を下ろし、ヘリオスが入れてくれた紅茶の湯気に顔を撫でられながらそう答えた。
長い夜だった。
一瞬でたくさんのものを失って、そしてもう一度手に入れた。
何より一番大切にしていた人を失うことなくこの手につなぎとめたのだ。
「カオスをお二人の持つストーンに封印したのですね。」
「ああ、ひなたが言ってたんだ。太陽のクイーンが『身体に込められた愛の力と、溢れ出る太陽の力でカオスを封印する』って。
最初はひなた自身が封印の器になろうとしてたんだけど、俺は何度も俺達を繋いでくれたあのストーンにもその力があるんじゃないかって思ったんだ。そのことにひなたも賭けてくれた。
だから上手く行ったんだ。」
「そうだったんですね。
感じていました、その場にいなくても、お二人の愛の力を…。
さすがひなたの選んだお人です。」
改めて愛の力、と言われてしまうと急に気恥ずかしさが募って変な汗が出てくる。
「ところで封印したはいいけど、これはどうするんだ?」
恥ずかしさを隠す様に言葉を続けた。
俺が言ったのはテーブルの上で仰々しくガラスの箱に治まっているカオスが封印されたストーン。濃いピンク色の中に黒い影がちらついている。
「これはこれからひなた様が浄化していきます。長い年月がかかるでしょう。
それこそ、人の生きる年月よりも遙かに長く。
その為の太陽のプリンセスの力です。」
そうだ、ひなたはこの地球で高校生として生きてきたが本来は太陽のプリンセス。
記憶も戻り、プリンセスとしての力も使えるのだから当たり前だ。
ーひなたは太陽へと帰るのだろうか。
ー俺達はどうなるのだろうか。
漠然としたその思いだけが頭をよぎっていく。
けど、今だけはひと時の安らぎを感じていたい。
俺は戦いの疲れとひなたの家に溢れる温かな空間に眠気を誘われてソファに沈んでいった。
「ん、ん〜。まぶし…」
あれ、俺どうしたんだっけ…
ーそうだ、やっとギャラクシアを倒して、厳密にはギャラクシアの身体を乗っ取っていたカオスを封印して、火球プリンセスを取り戻して、ひなたを…ひなたを。
「ひなた!」
ガバッと飛び起きた俺はまず現在地を確認した。
そこは地球で住み慣れた俺の部屋ではなかった。
「あれ、ここは…。」
体重の重みで沈むくらいの柔らかいソファーにいる俺。
体の上には触り心地抜群のブランケット。
清潔感のあるリビング。
女の子らしい可愛いいぬいぐるみの乗っだチェスト。
カーテンの隙間らか太陽の光が差し込む。
「ここはひなたの家!」
俺は、ソファーから飛び降りてひなたの部屋に向かった。
「ひなた!」
ひなたの部屋の扉を勢いよく開けたが部屋の中は俺が出たときと変わらずベッドで眠り続けるひなたがいた。
「まだ、起きてないか…。」
起きているかもしれないという期待が外れて寂しい気持ちになったが、傍に行けばすこやか寝息を立てている様子に笑みがこぼれた。
「寝坊助、早く起きてくれよ。」
と、優しく頭を撫でて俺は部屋を出た。
それから俺はヘリオスにひなたが起きたら連絡が欲しいとお願いして自分のマンションに一度戻ることにした。
「おかえりなさい、星野。随分帰りが遅かったですね。」
「ほんとだよ、僕夜ふかししちゃったよ。
肌が荒れたらどうしてくれるのさ。」
「ああ、悪い。ただいま。」
マンションに戻るなり嫌味の1つ2つ言う大気と夜天に申し訳ない気持ちと、仲間だからこそ分かる、言葉の裏にある想いやる気持ちを感じて嬉しくなった。
それとどことなく2人の表情がいつもより穏やかに見える気がする。
ずっと戦いの日々だった。
これからもセーラー戦士としての日々が続くがここでひと息ついてもいいだろう。
「なに、ニヤニヤしてるのさ。気持ち悪いよ。何かその辺に落ちてるもの食べたんじゃないよね。」
「おい、俺が素直にただいまって言ってるんだから夜天も素直に受け止めたらいいだろ。」
「はいはい、仲が良いのは知ってますからその位で止めて、プリンセスのところに行きますよ。」
口喧嘩が始まる前に大気がパンッ、と手を打って俺達を止めた。
そうだ、プリンセスがいらっしゃるんだ。
きちんと報告しないと。
ーコンコン
「ーどうぞ」
「失礼します。」
部屋に一歩入ればプリンセスのまとう金木犀の香しい香りが鼻孔をくすぐる。
温かく優しい俺達のプリンセスがソファー似座っているだけでその場所が輝いて見える。
目の前にプリンセスがいることに思わず涙腺が緩み、泣いてしまいそうになってしまう。
ああ、取り戻したんだ、本当に。
この暖かい輝きを、俺たちのプリンセスを─。
プリンセスが俺達を向いのソファーに座るように促した。
「星野、おかえりなさい。この度の戦いは本当にお疲れ様でした。」
「プリンセス、ご無事にお戻りになってよかったです。」
「─ありがとう、星野。大気と夜天もお疲れ様でした。」
「「ありがとうございます」」
「肉体が消えてスターシードのみとなっても三人の戦いぶりを見ていました。
月のプリンセスを守り、太陽のプリンセスを支え、よく戦い抜いてくれました。
今再びこうして三人に言葉をかけることが出来て本当に嬉しいです。」
「勿体無いお言葉です。俺達は当然のことをしたまでです。またこうしてプリンセスにお会い出来て本来よかったです。」
「私もですよ、星野。
それでアイリアーひなたの様子はどうですか?」
「今はまだ眠っています。ひなたの側近によると力の使い過ぎでしばらくは眠っているだろう、とのことでした。」
「そうですか。
ひなたには本当に感謝しなければなりませんね。この星を、この銀河を照らせたのはひなたの力があったらからこそ。
それに加えてひなたはカオスを封印するとい大義を成した訳ですから。
ギャラクシアも無事に解放されてやっとこの銀河に平穏が戻りつつあります。」
「はい、ひなたさんにはほんとうに感謝しなければいけませんね。」
「僕達が挫けそうになった時もひなたは諦めなかった。僕達に前に進む力をくれたのはひなただった。」
「ひなたが目覚めたら改めてお礼を言わなければいけませんね。
そして、星野。この先はどうするつもりですか?」
「この先…。」
「ええ、先の未来が見えないと前に進めませんよ。
ひなたとの事、しっかり考えなければなりません。私は星野の出した考えを尊重します。
私もしばらくは英気を養うために地球で過ごしたいと思っています。あなた方もしっかり身体を休めてください。」
「「「はいー。」」」
プリンセスに言われた『先の未来が見えないと前に進めない』という言葉にその通りだと言わざるを得ない。
俺はこの先もひなたと一緒に生きて行きたいと思っている。
楽しい、と笑う笑顔を見て。辛いことがあれば傍で肩を抱き、幸せだと感じてこの先も共に歩んで行きたい。
けれど、それは俺の勝手な気持ちだ。
戦士としてキンモク星で生きる俺と、
太陽のプリンセスとしてカオスを浄化する使命を持ったひなた。
志すものは同じだが、同じ道を歩くことはできるのだろうか?
「なあ、ひなたーどうしたらいい」