太陽の在処~始まりの物語~
主人公の名前
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コンコン
「はい」
「火球、私だけど…」
「アイリア?どうぞ、入ってください」
「─おじゃまします」
火球は手元に持っていた資料から目を離した
そこにはニコニコととてもうれしそうなアイリアがいた
「なにかいいことがあったの?」
「これ、出来上がったの」
アイリアの手の中にはオレンジ色のリボンがついた小さな香水瓶があった
「まあ、やっとできたんですね」
「うん、メイカーに手伝ってもらって」
「…メイカーが?」
「最初は呆れられちゃったけど、分からないことを聞いたら最後まで手伝ってくれたの」
「そうでしたか」
初めは、三人のセーラー戦士がアイリアに対して関心がなく、冷たい態度をとっていることが悲しく、不安だった
しかし、ここ最近はアイリアに対してのまなざしが優しくなり
心を開いてきていると感じていた
そのことが火球にとってたまらなくうれしいのだ
「ファイターもヒーラーもメイカーもみんな優しいね」
「ええ、わたしの自慢のセーラー戦士ですもの」
「初めのうちはみんな全く相手にしてくれなかったけど、
困ったことがあれば助けてくれて渋々だけど手を差し伸べてくれた。
ただ三人も不安だっただけなんだと思う。
いきなり私という存在が表れて守るべきプリンセスに近づいてきたら…
でも少しずつ分かりあえることはできる。言葉を交わして、笑い合って少しずつ…」
ふわりと微笑むアイリア
幸せがあふれるような笑顔はまさに太陽のプリンセス
──ああ、あの三人はきっとこの笑顔に癒されたのだろう
太陽のように明るく照らしてくれるこの子の笑顔に…
「ありがとう、アイリア」
「…?どういたしまして?」
─どうして『ありがとう』と言われたかは定かではないが
火球が心から微笑んでいることにアイリアも嬉しく感じた
夜になりこの星のセーラー戦士は部屋で話をしていた
別段特別なことはないがこういうときは世間話をするのがひと時の楽しみでもある
今夜の会話の中心はアイリアに対するものだった
「なんか最初に比べるとあんまり嫌な気がしないのよね」
ファイターはベッドに腰掛けて二人に言った
「真っ先に懐柔されたのはファイターなんじゃないの?」
「確かに、あの子がこの星に来た次の日には警戒心は薄れてましたね」
ヒーラーとメイカーは椅子に掛けながらあの日を思い出して笑っていた
「そっ、そんなことはないわよ!私はプリンセスを守る戦士よ!そう易々と信じられる訳ないでしょ!」
ファイターは焦ったように言ったが二人には全く通用しなかった
「でも確かにあの子といるとプリンセスとは違う安心感がありますね」
「正直認めたくはないわ」
「素直じゃないわね、ヒーラーは」
「だって、こっちは怒ってるのに一度落ち込んだと思ったら次の瞬間にはもう笑ってるのよ!
こんな子が銀河を照らすプリンセスなんて信じられないわ!
朝会えばニコニコしながらあいさつして来て、
こっちが無視してるに毎日毎日!プリンセスとしての威厳はないのかしら!」
ヒーラーは興奮しながら言い切った
アイリアに対しての気持ちに戸惑っている自分にイライラする
「自分がプリンセスという立場にあることに無頓着という事は確かね。
分かっているなら木を登ったりしないわ…」
ファイターはあの日あったことを思い出していて苦笑いした
「私も彼女が香水を作っているところを見ましたけど、普通の女の子って感じでしたね。
でも香料の分量とか掛け合わせの知識もすばらしいものだったわ。
プリンセスとしての教養はきちんと身に着けているようですね」
三人の意見は三人三様
「不思議なんだけどあの子の笑顔は暖かいのよね。
すべてを包んでくれるような、それこそ私たちのプリンセスのような…」
「私たちのプリンセスと一緒にしないでよ!」
「でもヒーラーだって少しは思ってるんでしょ?」
「…少しだけ」
拗ねたようにヒーラーは顔を背けた
「もう少し認めてもいいのかしら、あの子のこと」
「私はもう疲れたわ…」
「やっぱりヒーラーは素直じゃないですねw」
「なによ…」
くすっ…
穏やかな空気が流れた
「─私、少し散歩してくるわ」
ファイターはそう言って立ち上がり部屋を出た