太陽の在処~追憶の記憶
主人公の名前
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夕暮れが中庭を包む中、ファイターは眠るひなたを抱えながらセーラーウォーズについて語る火球の話に耳を傾けていた。
「セーラー戦士とは星々の生まれ変わり。
そして銀河創世のころから銀河を脅かすものから戦い続けてきたのです。
そして銀河の邪悪の根源、混沌。
最強にして伝説の戦士が倒し封じ込めたのです。
しかし遥かな時を経ていま、混沌が再び現れたのです。」
「再び混沌が?」
「それがギャラクシアなの?」
「ギャラクシアはスターシードをことごとく奪い全銀河を再び混沌の渦に包み込もうとしています。」
それぞれが疲労や傷を負い、足取りもおぼつかいない状況だったので火球プリンセスが一度傷を癒しましょう、と解散を告げたことでセーラームーン達も眠るひなたを心配しつつ帰っていった。
その頃私は夢を見ていた。
それは遥か昔、前世の幼い頃の記憶。
『アイリアいい?今から大切なお話をするわ。』
『なあに、お母様?』
『それはこの銀河系に起こった悲しくて辛い、戦いのお話。』
『悲しくて辛いの?そんな話私聞きたくない…』
『そうね、悲しいお話を聞きたくない気持ちは分かるわ。
だけど、知っていなきゃいけないの。それはアイリアがこの太陽系のプリンセスだからよ。
同じことを繰り返してはいけないの。だから聞いて頂戴。聖なる戦い、セーラーウォーズの全てを─』
そうだ、私がまだ小さい頃お母様が話してくださったお話。
あの頃はただ辛くて、そしてどこか遠い星のおとぎ話のように感じていた。
それが今私の身近で起こっている出来事で
火球たちがこの星に来た理由…。
どうして忘れていたんだろう。
この銀河の成り立ちを…。
「…ん…」
眩しさに目を開ければ見知らぬ天井が目に入った。
ここ、どこだろ…。
重い腕をやっとの事で動かして身体を持ち上げた。
視界に入る物を見つめ、寝起きの頭でここがどこだか一生懸命に考える。
窓から入る日の光で朝だと言う事は分かる。
壁に目を向けると学ラン。
あれは星野が着ている学ラン。
と言う事はここは星野の部屋?
ベッドから降りてひんやりとするフローリングに足を乗せた。
光が差し込む窓辺に向かいカーテンを開けた。
眩しい…
太陽が今日の始まりを告げている。
「ひなた起きたのか?」
星野が部屋着姿で部屋を覗いていた。
「おはよう、星野。」
「体、なんともないか?」
心配そうに私の顔を覗き込む星野になにかあっただろうか?と疑問に思った。
「まさか覚えてないのか?」
「…確か学園祭に敵が現れて…そうだ!うさぎちゃんは無事!?火球はどうなったの!?」
「落ち着けって─」
星野が私を落ち着かせるように肩に手をのせた。
「まずお団子は無事だ。愛野たちが家まで送ってった。
プリンセスも無事だ。今は少し休んでいらっしゃるがお元気だ。」
「そっか─、よかった。」
胸を撫で下ろしたのも束の間
「全然よくない!」
星野が怒り出した。
「ど、どうしたの?」
「ひなた、自分が力の使いすぎで倒れたの忘れたのか?」
あー、だから私はここにいるのか…
「その顔は忘れてた顔だな。」
「ごめんなさい…」
「ったく…」
星野が私を抱きしめた。
「心配かけるなよ…あの大きな力の中でお前を失うんじゃないかと思って怖かった…」
「星野…ごめんね。」
耳元で話す星野の声が少し震えていた。
私はここにいるよと伝えたくて星野の背中に腕を回した。
「謝るんならもうしないよな?」
「それは…約束できない」
悲しげに見下ろされる瞳に嘘はつけない。
「私にできることがあるならきっと私はその選択を選ぶ。
それが星野を悲しませてしまうかもしれない…
けれどそうならないように出来る道を探す事も諦めないから。」
「はあ、─ひなたには負けるぜ。俺も諦めないからな。」
「うん。」
そんな星野の言葉が私に勇気をくれるんだよ─。
その後星野と一緒にリビングに行き、
朝食の準備をしていた大気におはようの挨拶と心配をかけた事への謝罪をした。
「本当にあなたは以前と何も変わっていないんですから。」
と、怒られたのか呆れられたのか、どちらとも取れる反応をいただき、その後も朝に弱い夜天から、
「もうこんな心配かけさせないでよね」
という言葉と共に鋭い眼光を受けました。
「皆アイリアのことが心配でたまらないのですよ。」
「─火球!」
部屋の入り口から朗らかな笑みを浮かべて火球が入ってきた。
久しぶりの再会に心が踊った。
火球は私のそばまで来てそっと私の手をとった。
「アイリア、久しぶりですね。また貴女に会えて本当に嬉しいわ。」
「私もよ、火球。貴女も元気そうでよかった。」
「ファイターも随分と心配していたのですからね。体の調子はどうですか?」
「心配かけてごめんね。もう大丈夫だから。」
柔らかい空気が広がる中、
「お二人ともまずは朝食を─。
星野のおなかと背中がくっつきそうになっていますよ。」
「どんな恐ろしい現象なの、それ。」
「たとえだろ、夜天」
3人の華麗なギャグが披露されたところで大気の用意してくれた朝食を頂く事になった。
*-*-*-*-*-*-*-*-
それから私は体のことを心配してくれた火球に言われ今日は学校を休む事になった。
リビングにあるソファーに火球と共に座り、大気の淹れてくれた紅茶を飲みながらお話をして過ごした。
「そっか、うさぎちゃん達にセーラーウォーズについて話したんだ。」
「ええ。大気たちに聞いていると思いますが、私は混沌を封印する為の“希望の光”を探してこの星にやってきました。
しかしそれはまだ見つかっていません。
セーラームーンには一緒に探してほしいと話をしました。」
「うさぎちゃんだったらきっと火球の手を取ってくれるよ。」
「はい、私もそう思います。─けれど意外でした。」
「なにが?」
そう言った火球を見ると面白いものを見たような顔をしていた。
「スターライツの反応が、です。アイリアが私達の星へ始めて来た時にでさえあれだけ警戒していた3人がこの星の戦士達と歩み寄るような行動を取っている事に─。きっとアイリアが橋渡しをしてくれているんでしょう?」
「…みんな誇りある戦士。一筋縄ではいかないけど、少しずつ歩み寄っていけてると信じてるから。」
「そうですね。
─ところで星野とはどこまで?」
「どこって///ど、どこにも行ってないよ!!」
「そうなんですか?」
「う、うん////」
そういえばこっちで再会してからまだ─キス、してないかも……
いつもなんかタイミング悪いし……
改めて思えばカップルらしい事をしていただろうか?
紅茶を口にしながら思案するひなただった。
火球はそんなひなたの様子を見て、
あらあら、星野ったらいったい何をしていたんでしょうか?
困りましたね、星野?
一方、部屋で仕事をする星野。
はっ─!
なんだ、このいつもは優しいはずの人から向けられるまなざしが今は………怖い。
何かを敏感に感じ取っていたのだった。
それから火球と他愛もない話をして過ごしていた。
誰かが部屋から出てくる音がして振り向けば、
出かける様子の星野がいた。
「あれ、星野どこに行くの?」
「ちょっと学校に行ってくる。」
「学校に何しに行くの?」
「もう星野光として学校に行く事もないから荷物を取りに行くんだよ。」
「…そっか、じゃあ私も一緒に行っていい?」
「ひなたも?」
「うん、学園祭途中で抜けて荷物置きっぱなしだったから。」
「ああ、じゃあ一緒に行くか。」
「うん。火球ちょっと出かけてくるね。」
「プリンセス、すぐに戻ります。」
「大気も夜天もいますから、急がなくても大丈夫ですよ。いってらっしゃい。」
火球に見送られて私達はマンションを出て学校に向かった。
「学校行く前に私のマンションに寄っていい?
いつまでも夜天の服借りてられないから。」
気付いたときには私の服はTシャツとズボンに変わっていた。
聞いたところサイズが一番合う夜天の服を貸してくれたらしい。
もちろん着替えは火球がしてくれたようだが。
「ああいいけど─」
そう返事をした星野がなんか“ムッ”としている
「─なに?」
「なんか…彼女が他のヤローの服着てるのとかあんな見たくなかったから…」
「……ぷっ─。」
「な、笑うなよ!!」
「ごめん。」
どこか深刻そうにそんな事を言う星野に笑わずにはいられなかった。
「なんだよ、このくらいのやきもちいいだろ─!!
あーなんか俺、かっこ悪い!!」
開き直ったかと思ったら顔を赤くして照れてる星野に私は幸せだなって思う。
そっと星野の大きな手に自分の手を絡ませた。
いわゆる、恋人つなぎ。
「やきもち妬きの星野も好き。」
「そうかよ─/////」
*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*
「荷物全部まとまった?」
「ああ、もともとそんなになかったしな。ひなたは?」
「うん、私も終わったよ。
…でも、星野ともう一緒に学校に来られないんだね。」
「─プリンセスが見つかって、スリーライツとしての活動ももうする必要がなくなったからな。
高校生の星野光はもう必要ない。だから体裁を気にして入ったこの学校にももう来る必要はない。
─あっという間だったな。今まで戦士として生きてきた俺達が学生やって、ふざけて遊んで…
でもこれから必要なのは戦士としての俺ら。
プリンセスと共にギャラクシアを倒し、星を取り戻す。
けど、星野としてこの学校に入って本当に良かった。
でないとひなたに会えなかったからな。」
「うん、そうだね。
私もこの学校に転校してきて良かった。」
「ひなたはこれからどうするんだ?」
「私?」
「不謹慎かもしれないけど、この戦いが無事終わったらどうするのかなって。」
星野の質問に私はどう答えたらいいか少し迷ったが今思うこれからを伝えた。
「先のことはまだ良く分からない。
太陽王国も今はどうなっているか。
でも、きっとこの先も若宮ひなたとして生きていくんだと思う。
私に与えられた使命があるならそれを守って生きたい。」
「そっか。」
そう答えたが本当は星野と一緒に生きていきたい。
でも、この気持ちを口にしていいのか今の私には分からない。
それぞれ荷物を持ち帰ろうとした時、
「ひなたちゃん、星野くん!!」
「レイちゃん!?どうしたの?」
慌てた様子のレイちゃんが教室に飛び込んできた。
「うさぎ、見なかった!?」
「うさぎちゃんがどうかしたの?」
「うさぎのスタージードを狙われているのに一人でどこかに行っちゃたのよ!」
「─!星野、私達も一緒に探そう!」
「分かった!」
その後美奈子ちゃんたちとも合流して
他に探していないところはないか確認した。
「後は体育館と屋上がまだよ!」
「分かった、それじゃあ私と星野で屋上に行くから体育館お願い!!」
私の言葉を合図にそれぞれがうさぎちゃんの姿を探しに駆け出した。
階段を駆け上がりながら私はレイちゃんから聞いた話を思い出していた。
『私達はただうさぎが心配だったの。だけどかえってそれがうさぎを傷つけてしまった。うさぎは一人で大丈夫だって─。最近なんだか一人で抱え込んでる気がして…』
─うさぎちゃん!!!
屋上についたとき扉の外からうさぎちゃんともう一人声が聞こえた。
『ひとりでだいじょうぶって言ってみたり、
寂しいって言ってみたり、
あんたって変な子ね。』
『あなたは?』
『にゃー!
やっと二人きりになれたわね。』
─っ!セーラーティンにゃんこ!
「ひなた、俺上から行くから。ひなたはここから─」
「わかった。」
星野と別れ私も屋上の扉を開けようとした時にはうさぎちゃんはすでに変身をしていて敵の攻撃を交わしているところだった。
─バンッ!!
「─うさぎちゃん!!」
「─っ!?ひなたちゃん!」
「なによ!あんた!」
「ソル・オリエンスパワー・メイクアップ!!!
母なる星・太陽を守護にもつ創設の戦士・セーラーソル!
太陽に抱かれ眠りなさい!!」
「ふーん、あんたがセーラーソル。
やれるものならやってみなさい。」
「ソル…」
私が攻撃に出ようとした時、
にゃんこと私たちの間に一本の赤いバラが飛んできた。
「まもちゃん…」
「え…?」
声は小さいけど、そう聞こえた。
「それ以上そいつらに手だしてみろ!!」
俺が許さないぜ!!」
そして星野はファイターに変身し、
にゃんこに隙をつくった。
「セーラームーン、今よ!!」
だけど呆然として動かないセーラームーン。
「何やってるのよ、セーラームーン!─っソル!!お願い!」
「うん…、フライニング・ソウル・ショック・エクスペンション!!」
「くっ─ああああああああ──!!」
あと少しのところでにゃんこは逃げてしまい、いつの間にか雨が降って来た。
「大丈夫か、ひなた?」
「うん、私は大丈夫。けど…」
戦いの時からうさぎちゃんの様子がおかしかった。
星野が現れたとき‟まもちゃん“って。
衛さんのことだよね。
「うさぎちゃん、どうかした?」
私のその声にうさぎちゃんはぽつぽつと話し始めた。
「よくかんがえてみたらさ、あたし頑張るの得意じゃなかったんだよね。
今日は頑張って宿題やるぞーとか、
ついおやつ食べて眠くなってやっぱ寝ちゃうしさ─。」
そう話すうさぎちゃんは握り拳を強く握って何かに耐えているようだった。
「なのに、星野のバラ見たら思い出しちゃったよ!!」
「うさぎちゃん…。」
顔を上げたうさぎちゃんの目からは大粒の涙が止まることを知らずに溢れ出してた。
「留守電でしか声聞けなくても、
手紙来なくても、大丈夫って。
ひなたちゃんと星野が二人で楽しく笑ってるのとか、いいなって。
羨ましいなって…
なのにあたしはなんで一人なのかなってときどき考えた。
それでも…それでも一人でしっかりしなくっちゃって─。
だけどやっぱり、一人じゃダメなんだよ─!!!
逢いたいよ…
逢いたいよ、まもちゃん─」
容赦なく私たちの体を打ち付ける雨はうさぎちゃんの心の叫びと共鳴するかのように激しさを増した。
「うさぎちゃん…」
座り込んでいるうさぎちゃんがこの悲しい雨に少しでも濡れないように私はそっと抱きしめた。
いつか悲しみの雨が虹の架かる澄んだ晴れ空になることを祈って。
私は静かにうさぎちゃんを抱きしめたのだった。