あーやっぱりやるなんて言わなきゃよかった…
「はあ…」


「で、結局うさぎとひなたちゃんは星野くんとソフトボールって訳ね」

「そうなのよ、あたしたち苦手だって言ってんのに」

「それにしてもひなたちゃんのあの様子はどうしたの？」

そこには普段の様子とはかけ離れ元気のないひなたがいた

「顔面キャッチする夢を見たんだって」

「相当なトラウマね…」


「おーい始めるぞ！！」
やる気満々でバットを握っている星野はグラウンドの端にいたうさぎとひなたに声をかけながら素振りをした

「あ゛ーやっぱり怖い…」

「まず、お団子行くぞ！！」

「おう！！」

「がんばってうさぎちゃん！！」

ひなたは念のためブローブをはめてボールがいつ飛んで来ても
顔面キャッチだけは避けられるように備えた
そしてうさぎの特訓は始まった
が─

はれ─？
ありゃ─？
うごーー！！


「う、うさぎちゃん、大丈夫？」

「おい、お団子が顔面キャッチしてどうすんだよ…大丈夫か？」

「大丈夫、なわけないっしょ」

「おまえソフトボールやったことあんだろ？」

「あったけど忘れたわよ」

「まじかよ…んじゃお団子ちょっと休憩、次ひなた行くぞ！！」

「うさぎちゃんの見たらもう無理だよ～」

「何言ってんだよ、もともと運動神経いいんだからコツ掴めば大丈夫だろ」

「え～」
と文句を言っても星野は聞いてくれない
先ほどの定位置に再び立ってバットとボールを構えた

「行くぞ！！」
─カキーン

「うわわわああ─」

「ボールを見ろ！」

ボールを見る─；；

「ボールを見る、ボールを見る」

高く上がるボールでは無くはじめは転がるものが多かった
その様子を夜天と大気がフェンスに寄りかかって見ていた

「へーひなたやっぱり運動神経いいんだね。さっきまでただ怖がってたのに星野の言う通りにちゃんとボール見たら取れて来てるじゃん」

「そうですね、もともとスポーツの素質はあるのでしょう」



「よーし！いいぞひなた！次は上げるぞ！」

「まだ早いよ！」

「お前の課題はそこだろ！─ほらっ！！」

「うわっ、どこ！？」

一瞬目を逸らしたら青い空にボールが溶け込んでどこに行ったかわからない！！

「どこ！？どこ！？どこ！？きゃ─！！」

空を見上げていたら私のすぐ近くにボールが落ちて来て思わずしりもちをついてしまった

「ひなたちゃん大丈夫！？」

「うん、大丈夫。ありがとう、うさぎちゃん」




「その程度の実力で星野様と優勝を目指そうなんてちゃんちゃらおかしいですわ！！」

突然の声にそちらを見上げれば女の子たちがいっぱい集まっていた
美奈子ちゃんたちの話ではその集団はスリーライツの親衛隊でその中心にいるのはソフトボールの主将でスリーライツのファンクラブ１番(ここの情報はどうでもいい…)
３年の伊集院園子さんというらしい

「今はプライベートだぞ！」

「出過ぎたことだとは存じあげております。
しかし私たちには許せないのです。
自称、星野様の彼女と名乗っているそこのあなたが！！」

「自称って私誰にも名乗ってないんですけど…」

「とにかく私たちの許しもなく星野様とお付き合いだなんて許しませんわ！！」

え～；；
なぜ堂々とそんなことが言えるのか不思議だ

「ちょっと！黙って聞いてればなんでひなたちゃん達が付き合うのに貴方たちの許しを取らないといけないのよ！！」

「そこの部外者は黙ってて下さる！！」

「きーー！！」

「「「「押さえて、押さえて；；」」」」

「そこでどうでしょう？
今度の球技大会で決着を付けると言うのは私が勝ったらその方とは縁を切ってください」

「正直お前らに俺らのことで口出しされるのは迷惑だ。
でもここで決着をつけるのもいいだろ。俺たちが勝ったら…」

「その時は二人の交際を認めましょう」

「その言葉忘れんなよ！！」

「ちょっと、星野！！」
何を勝手に！！

「交渉成立ですね」

すまし顔で退場していく伊集院先輩を横目に
ひなたは何度目かわからないため息をついていた

なぜこんなことになったのか…



～練習～


「ほら、行くぞーお団子！！」

「女の子には手加減してよ！！」





「ひなた行ったぞー！！」

「星野！どこに上げてんのよ！！」


すっかり辺りは暗くなったので今日の特訓は終わることにした

「はあ、もうくたくた…」

「ごめんねうさぎちゃん、なんか巻き込んじゃったみたいで」

「気にしないで、それにここまで頑張ったんだもん、私も優勝したいし」

「したいし～」

「ありがと」

ちびちびちゃんを間に挟んでベンチに３人座っていた

「お疲れさん、いい汗かいたろ」

そこに星野が戻ってきてジュースをおごってくれた
さすがアイドル、太っ腹！

「乙女にはハードよ」

「ほんとだね」

ふと、顔を上げればそこには満天の星

「─綺麗な星」

「この宇宙に生きるすべての生き物は皆体の中に星の輝きを秘めている」

─星野？

「星の輝き？」

「どこか遠い国の言い伝え。
一人にひとつ。
俺にもひなたにもおだんごにも」

「ちびちび？」

「もちろんちびすけにも」

「星の光が強い奴ほど輝いて見える。なかでもお団子とひなたのは格別に光ってる」

「いつもそうやって女の子くどいてんの？
もしかしてひなたちゃんもこんな風に！？」

「ちょっと違うかな～？」

「おれはまじめだぜ。
いいか、お前の持ってる光もひなたの持ってる光も誰にも劣らない輝きを持っている。
俺の光も合わせて一緒に輝きたいんだ！だから今度の試合は絶対に勝つんだ！！」


「あきらめたらやる前に負けだ。
言っとくけど俺諦め悪いから」

「諦め悪いか…あたしも結構好きだよ、その言葉」

「二人にピッタリな言葉だね」

夜空には星々の力強い輝きが一面に広がっていた
球技大会、みんなでがんばれますように。





「う゛ー腕が、筋肉痛…」
昨日の特訓のせいだ…
この痛みは地味にきつい

「ひなた、ほら！」

ひなたの様子を見ていた星野が何かを空中に投げた

「えっ？」
何か飛んでくる！と、とっさに顔の上に手を持っていった
ひなたの手中に収まったのは

「─アメ？」
コロンとしたアメが一つひなたの手の中で転がった

「ナイスキャッチ！試合もその調子で行こうぜ！！」

「─うん！」




「あの二人今回のことでさらにラブラブ度が増したんじゃない？」

「うらやましいわね」

「「「「亜美ちゃん！？」」」」

「一般論よ、一般論！」

球技大会当日

私たちの1-1は仲間のファインプレーもあって
着々と勝ち進め、ついに決勝に駒をすすめた



『さあ十番高校球技大会ソフトボールの部もそろそろ大詰めです！！
さあ決勝に残ったのは我らが1-1と伊集院先輩率いる3-2！
勝利の女神はどちらに微笑むのでしょうか！！』

『なお本日の実況は学園のアイドルの愛野美奈子とゲストは…』

『火野レイちゃんでーす』


「…どうしてレイちゃんが？」

―――――――――


試合は接戦を極め
どちらも得点を許さない状況になっていた

─カキーン！

「うさぎちゃーーーん！」

「うわっ！」

『月野選手、練習の成果が発揮できていませーん！』




「ひなた走れーー！！」

「はっはっ─」

ざざっ─

『セーフ！セーフ！！』

「いいぞーひなた！！」

『これはこれは、若宮選手ファインプレーです！！』

走るのは得意なんだけどな…
パンパンとついた土を払いながら未だホームランボールが怖いひなたは自分の不甲斐なさを感じていた

─ポツ

「あれ？」

『おっと…雨です。試合は一端中止ですね』


突然の雨にいったん試合は中断となり校内に入ることになった

ちびちびちゃんが
お手洗いに行っている間に
うさぎちゃんと渡り廊下で暗い空を見上げていた

「雨止むかな、泥んこの中に突っ込んでいくっていうのも勇気いるね」

「クス、セレニティは昔、雨の中花壇の中に突っ込んだね」

「…見てたの///？」

「うん、見てたｗ」

「うわ、はずかしい─
でも、止むといいね、雨…」



「─止みます」

「伊集院先輩─！」


そこには私たちと同じように空を見上げている伊集院先輩


「雨が止んだらこの試合に決着をつけます」

伊集院先輩の言葉はどこか自分に折り合いをつけているような覚悟の気持ちがこもった一言だった。

「…私いっぱい星野に迷惑かけているんです。
未だにボールが怖いなんて、せっかく特訓してくれた星野に申し訳ないです。
だけど一緒に輝きたいって言ってくれたんです。
みんなで一緒に…
だから勝ちます、きっと」

「─お互い悔いのない試合をしましょう」

「はい、それでは失礼します」

気持ちを新たにひなたはうさぎとちびちびと共にみんなのところに戻って行った


「勝つか…キラキラしてるわね彼女」

「あなたの方が何倍もキラキラしてるわ」

ひなたの後ろ姿を見送っていた伊集院先輩のところにスタージードを狙ってセーラーレッドクロウが現れていたことに気づかずに。

――――――――――――――


「ひなたちゃん、かっこよかった！！」

「でも、勝たないと意味ないからね。がんばろう、うさぎちゃん！」

「うん！！」



『きゃああああ─』



「─！今のは！」

「うさぎちゃん行こう！！」

伊集院先輩がいた渡り廊下へ向かいながら
ひなたとうさぎはセーラー戦士へと変身した


「ソル・オリエンスパワー・メイクアップ！」

「ムーンエターナル・メイク・アップ！」




その時
「あの輝き…まさか真のスターシード」
セイレーンが見ていたなんて…