「ごめんひなたちゃん、星野にタオル持って行ってくれる？」

「わかった」

うさぎちゃんからふかふかでいい匂いのタオルを受け取って私は脱衣所に向かった。

─コンコン

「星野入るよ」

脱衣所に入るとバシャバシャとシャワーの音が聞こえる


「星野、ここにタオル置いておくね」

『ひなた？ああ、サンキュー』

「─ねえ星野…」

『ん～なんだ？』


脱衣所の壁に背を預けて
中にいる星野に聞こえるように話しかけた

「私ね、考えてることがあって」

『俺たちの正体について？』

─っ！

『当たったか？』

「なんで…」

『つらいよな、仲がいい奴に隠し事なんて』

「…」

私はみんなにみんなの正体を明かせないでいる
本当に言ってしまっていいものか正直分からない
だけどこのままでいいとも思っていない

「ごめん弱気で…私うさぎちゃんに服のこと聞いてくる！！」

星野の言葉を聞いてまだちゃんと自分の中で考え切れていないのだと気が付き、慌てて脱衣所を出た。
これじゃだめだ。
まだ、伝えてはいけない。
まだ、もう少し。。

「うさぎちゃん、なんか星野に着るのも貸してあげて。
Tシャツもズボンもケーキでぐちゃぐちゃなんだって」

「うん、今用意する」

脱衣所を出て初めてうさぎちゃんが玄関にいることに気が付いた。
そして、玄関に
「ひなたちゃん…星野くんとお風呂に…？」

レイちゃん達がいた

「え、みんな！？あっ////いやそういう訳じゃ─」

「ひなた、おだんごに言ってくれたか？」

「うん、って星野みんながいるのになんて恰好で出て来てんのよ！」

「みんな？」

後ろから聞こえた星野の声に振り向けばタオル一枚の姿


「「「「「きゃー//////」」」」」

「わあ//////！！」

「あーこれちびちびの！ちびちびの！」

星野が巻いているタオルがちびちびちゃんの物だったようでちびちびちゃんが星野のタオルを外しにかかった
それはもうおもしろい光景だったけど

「おい、こらやめろって////外れるだろ！」

「星野、脱衣所に戻って！！！」

「わあああああああ////////」

─バタン！！

みんな手で顔を隠しつつ指の隙間からその光景をしっかり見ていたようで顔が真っ赤になっていた。
年頃の女の子には刺激的過ぎました。



──────────────────

はあ、上手くいかない…
どうしたら上手くいくのかな


がしゃーん！！！！


『ぎゃあああああ─黒い物体が飛んだわよ！あっちに行った！ってこないでーー』

キッチンの方では「料理は女の子に任せて！」と意気込む女子と、それに混ざって星野も「俺の腕前みせてやるよ！」と、みんなで夕食を作っているはずだが調理とはかけ離れた阿鼻叫喚が響き渡っていた

しかしその頃の私は
(どうしたいのかな)
と、心ここにあらず状態でキッチンの大惨事には気が付いていなかった


─ピンポーン

不意に聞こえたチャイムの音に現実に戻って来た私より早くちびちびちゃんが玄関へと行ってしまった

「はーい」

「ちびちびちゃん、どなた？あれ？大気、夜天どうしたの？」


玄関でちびちびちゃんが対応していたのは
本来ここにいるはずのない大気と夜天だった

「星野がご迷惑をおかけしてないかと」

「単に暇だっただけなんだけど」

「夜天それはナイショです」

「大気、ガラじゃないよ」

「ふふ、確かに」


玄関で立ち話というわけにもいかず、家主のうさぎちゃんも出てこなかったので勝手だが二人をリビングに案内した。
しかしそこに現れたのは見るも無残な出で立ちのみんな。
キッチンでなにがあったの…？

今夜は宅配ピザがディナーになるみたいです。
大気のおごりで♪



全員がリビングに集まり各々まったりと過ごす空間の中で良い雰囲気を醸し出すのは─

「星野、このモデルさんのつけてるこれ」

「ん？ああこれは私物らしいぜ。気になるなら今度聞いてやろうか？」

「うん、お願い！」

「そしたら一緒に買いに行こうぜ！」

「うん、楽しみ♪」

ひなたと星野はソファーに腰掛け一つの雑誌を仲良く二入で眺めていた

「ねえ、あの二人って…」

「えーまさか」

「でもいい雰囲気よ」

「確かに二人だけの空間作ってるね」

「なに、どういうこと？」

「うさぎにはわかんないわよ！！」

「レイちゃんのいじわる！」

ひなたたちの様子についつい気になってしまった乙女たちは
コーヒーを優雅に飲んでいた大気たちに近づいた


「ねえ、大気さん、夜天君」

「…直接聞けばいいじゃん」

「だって…」

「ふう…付き合ってるよ、星野とひなた」

「やっぱり！！」

「ていうか今まで気づかなかったのが不思議だよ」

「そうですね、事あるごとに星野はひなたさんに絡んでましたからね」


「「ひなたちゃん─！！」」

「はいっ！！」

「どうやって星野君の心を掴んだの！？」

「なにがきっかけで付き合いだしたの！？」

「あの、レイちゃん美奈子ちゃん；；」

「は～星野とひなたちゃん付き合ってるんだ。
それで星野がくっついて来たのね」



─ピンポーン




「怖いよ、二人とも；；」

迫りくる二人の形相に恐怖を感じた時
部屋の入口に見知った二人の顔が現れた

「あっ！はるか、みちる！！」

私の保護者とも取れるはるかとみちるを見つけ、味方になってくれるかはわからなけど
この状況を回避してくれるであろうと思い瞬時に二人の方へと逃げた

「やあ、ひなたも来てたのか」

「うん！今日はうさぎちゃんの家にお泊りなの」

「そうだったの、あら？」

「おまえ…」



その時、全員が星野とはるかの間に火花が散ったのを目撃した

なんだろこの重い空気は…
はるかがピリピリ
星野もピリピリ


「ちょっとうさぎあの二人仲悪いの？」

「はるかさんってさほら、男の人は嫌いらしいよ」

「はるかはモテる男が嫌いなのよ」

「え？はるかはそっち？」

「どっちかな、ひなた？」

「いえどちらでもないです…」


あれ？
さっきよりも雰囲気が悪くなった…よね？



─ピンポーン


「お客さん多いね」


玄関に向かったはずのうさぎちゃんが大慌てで戻って来た

「大変テレビ局の人が！
ってことで美奈子ちゃんよろしく！！」

「ひなたもこっち！」

「私隠れる必要ある！？」

国民的アイドルの三人、もしくは美人バイオリニストのみちるやレーサーのはるか達なら隠れる意味は分かるがなんで一般人の私まで隠れる必要があるのかわからないまま星野に手を引かれて二人で誰かの部屋のクローゼットへと隠れた

「星野─」

「しっ！静かに！」

息をひそめ静まり返った空間では
呼吸するのも息苦しい

いつまでこのまま？

「ねえ、もう大丈夫なんじゃない？」

『うわーーーーーー！！』

─っ！？
静けさに響く誰かの悲鳴
これは行くしかないでしょ！

「星野行くよ！」

「ひなた─！おい！」


星野の声を背にリビングまで下りてきた
中の様子を見るとすでに男性のスタッフさんのスタージードは抜かれていた


─よし！

「ソル・オリエンスパワー・メイクアップ！」






「ちょっとセイレーン、なにピザなんか食べてんのよ！！」


「クロウさんも召し上がりますか？」


ピザを頬張りながら一つのピザをこちらに差し出しているセイレーンを見て
同僚であり永遠のライバルだと認識しているクロウはため息しかでなかった
ああ、私はこの子のためにと思って頑張っているのに…



「母なる星・太陽を守護にもつ創設の戦士・セーラーソル
太陽に抱かれ眠りなさい！！」


突如現れたソルの存在に警戒を示すクロウに対しセイレーンは


「あら、はじめて見る方ですね。はじめまして私セーラーアルミナムセイレーンと申します」

「は、はじめまして？」

なにあんたもあいさつなんかしてんのよ！
と、セイレーンにも敵であるソルにも呆れるクロウであった
そこへ─


「新たな時代に誘われてセーラーウラヌス、華麗に活躍」

「同じくセーラーネプチューン、優雅に活躍」

「ウラヌス、ネプチューン！！」


「信じられませんわ！！」

「そうよ、言ってやって！」


驚愕した様子でセイレーンは新たに現れた二人を見上げた
「土足でテーブルに上がるなんて」

「あ、いや」

「ごめんなさい」

ウラヌス達が動揺している間にセイレーンとクロウは電話ボックスと共に消えた
そうしているうちに部屋の中にはセーラームーンをはじめとして
太陽系の4戦士、スターライツが揃い、賑やかになった

ああ、なんか今日私いらないかも
そんなことを考えながらソルは他の戦士の様子を見ていた

「なあ、君は…」

案外近くに立っていたウラヌスに声をかけられた

「私はセーラーソル。よろしくね、ウラヌス、ネプチューン」

私がひなただとは分かっているようだけど念のためという感じの雰囲気だ

「そうか、よろしくソル」

「ウラヌスったらずーっとあなたのこと見つめてたんだから」

「そんなに怪しかった？」

「いいえ、あなたが着ているものが気になるみたいよ」

着てるもの？

「その透けてる部分が、って」

「ちょっと露出し過ぎなんじゃないか？」

「いや、みんなも変わらないでしょ」

この場の状況にそぐわない話をしていたらいつの間にかすべてが片付いていた

「それじゃ、僕たちはそろそろ失礼しようかな」

「うん、またね」







無残な部屋の状況の中、いつの間にかはるか達だけじゃなく夜天たちもいなくなり他のみんなにも遅くなると危ないからと家に帰し、残りの掃除をうさぎちゃんと星野の３人でなんとか片付けたのは時計が真上を少し過ぎたころだった。
やっとのことで布団へともぐり込むと疲れが一気に襲ってくる

因みに星野は客間へ
私はうさぎちゃんの部屋だ

「ひなたちゃん」

「なに？」

「いろいろあったけど楽しかったね」

「うん、楽しかった」

うさぎとひなたはそれぞれの放つ太陽と月の暖かさを感じながら眠りについたのだった