太陽の在処~始まりの物語~
主人公の名前
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この日ヒーラーは非番だった
だからといって特にすることもないので
本でも読もうかと
あまり人が立ち入ることのない森の中へとやって来ていた
この森は自分のお気に入りの場所だ
時間があるとよく訪れている
森の奥には草原があり、キンモクセイの花が咲き、自分のプリンセスに包まれているような温かい場所
目的地へ着いたのはいいものの、そこには先客がいた
─太陽のプリンセスだ
(なんでこんなところに…)
誰もいないであろうと思っていたのに
自分の場所を取られたような気がして機嫌が悪くなる自分がいた
アイリアは自分の存在に気づいていないようで
キンモクセイに顔を近づけ匂いや形に目を輝かせていた
文句を言ってこの場所から遠ざけることも可能だが
ヒーラーはアイリアとあまり話をしたことがない
朝会えばアイリアから「ヒーラーおはよう」と、声はかけられるがそのたびに無視をしていた
ここで声をかけるのも面倒だと思い
今日は部屋でのんびりしようと踵を返したとき
「きゃっ!」
振り返るとアイリアが転んでいた
─そういえばあそこら辺に窪みがあったことを思い出した
だからといって助けるつもりはなくそのまま戻ろうとしたが
『アイリアのことをよろしくお願いしますね』
ふと、火球がそう言っていたことを思い出した
「あーもうっ!」
このまま戻っては自分の気がすまなくなってきた
「いたた…」
キンモクセイに見とれているうちに窪みにつまずいたようだ
ドレスも汚れてしまった…
う~んさすがにこれは怒られそうだね…
火球あたりは笑って許してくれそうだけど、あの三人がね…
でも最近ファイターは優しくなった気がする
分からない事があると何気なく教えてくれたりするしw
地面に座りこんだままニコニコしている
アイリアを見て
ヒーラーは怪訝な顔をした
「なに、ニヤニヤしてんのよ。気味が悪いわよ」
「あれ、ヒーラー?どうしたの?」
考え込んでいたためヒーラーが近くに来ていたことに全く気付かなかった
「いつまでそこに座ってるつもり」
「あ、あはは」
「笑ってる場合じゃないでしょ!どうしてじっとしてられないの!」
「だって私がこの星に来たのは、いろんなことを学ぶためだよ
じっとしてたってこの星の素晴らしさは分からないじゃない」
「だからって面倒事増やされるのは迷惑よ!」
「うっ…返す言葉もございません」
ヒーラーに言われしゅん…となってしまったアイリア
さっきまでの威勢がなくなり、ヒーラーもこれ以上はなにも言わなかった
「ほら」
「えっ…?」
なぜかヒーラーが自分に手を伸ばしている
「なにしてんのよ、このまま座ってるつもり?」
あいさつしてもいつも無視されて、今回もしこたま怒られて終わるのかと思っていたのでアイリアは落ちかけていた気持ちが一気に急上昇した
「ありがとう」
そう言って差し出されたヒーラーの手を掴んだ
グッと引き上げられると反動でヒーラーにぶつかった時
フワッとキンモクセイの匂いがした
「この匂い…」
「…なに?」
「ねえヒーラーたちっていい匂いがするよね」
「いきなりなによ」
「いや、ただみんないい匂いがするなって思って。そう言えば火球もこんな感じの匂いがするな…」
落ち込んだり、笑ったり…いったいなんなのよ
アイリアのころころ変わる様子についていけないヒーラーだった