太陽の在処~新たな運命
主人公の名前
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女子の声援が響く暑苦しい空間の中で見覚えのあるヒトを見かけた
僕がアイリアに似た彼女に気付いたように大気も彼女に気付いたみたいで声をかけるタイミングを図ってるようだ
彼女は星野の試合を他の女子たちと楽しそうに観戦している
女子たちの会話が一段落ついたところで大気が行動に移した
「こんにちは」
この悲鳴のようにうるさい声の中でもはっきりと聞こえる様に大気が声をかけた
そして彼女は今までコートを眺めていた瞳をゆっくりと僕たちの方に向けた
「─こんにちは?」
彼女の瞳が少し不思議そうな色を含んで僕たちを交互に見た
「突然すいません、私は大気光といいます。こっちは夜天光」
「どーも」
あいさつを最小限で済まし彼女を探ろうと僕はその姿を観察し始めた
「私は若宮ひなたといいます」
彼女も体をこちらに向けて会話の態勢に入った
「[若宮さんですか。実は若宮さんの横顔が知り合いに似ていた者ですからつい声をかけてしまいまして、びっくりさせてしまったならすいません」
「そうだんたんですか、ちょっとびっくりしましたけど大丈夫です」
そういうと若宮ひなたと名乗った彼女は優しく微笑んだ
─似てる、アイリアの笑顔に…
「ねえ、僕たちのこと知らない?」
不意に口をついて出たのがこの質問だった
「知ってますよ。スリーライツのお二人でしょ?恥ずかしながら最近までは知らなかったんですけど友人にCDを借りて素敵な曲だなって」
僕が聞きたいのはそんなことじゃないんだけど
やっぱり違うのかな…
「皆さんの歌には想いが込められている感じがして。
プリンセス、見つかるといいですね、って違ってたらごめんなさい!」
彼女の言葉に僕らはハッとした
気付いてくれたんだ、僕らのメッセージに
「いえ、ありがとうございます。そう言っていただけてうれしいです。
若宮さんの思っている通り、私たちは大切な方のために歌っているんです」
大気を見上げていた彼女はその言葉を聞いて
「大丈夫、みなさんの大切な人はきっと見つかります」
そう言って太陽のように微笑んだ
僕と大気は星野を連れて人気がない所に来た
「なんだよ、せっかく盛り上がってんのに…」
調子のいい時に連れ出されて不機嫌そうな星野
「僕さっき懐かしい人に会った」
「私もその方と会いました。その人は…」
「アイリア、だろ?」
「─っ!?知ってたの?」
どこか投げやりな態度の星野が少し気になる
「最初見たのはこの間のロケで、俺もアイリアかと思って声かけたんだけど、俺のこと知らないって言ってた。
申し訳ないような顔はしてたけど、隠してる感じでもなかったし本当にただ似てるだけみたいだ…」
「まさかこの辺境の星でそっくりさんに会うなんてな」
と自虐的な発言の星野
「でも、星野─」
僕が先ほど感じたことを話そうと口を開こうとした時隣にいた大気が一歩前に出て
「しかし星野、私が彼女だと思ったのはアイリアに似ているからだけじゃありません。
─香りです」
「香り?」
「ほら、覚えてませんか?
まだアイリアがキンモク星に留学していた時私と一緒に香水を作ったと話したことがあったじゃないですか」
「そういえばそんなことがあったな…」
「ええ、その時に彼女と私はキンモクセイの香水を作ったんです」
「その香りが彼女からしたってこと?」
僕は大気の言葉に反応した
「でもこの星にもキンモクセイはある。彼女がたまたまキンモクセイの香水をつけててもおかしくないだろ」
「いいえ、私たちが作った香水はただのキンモクセイの香水ではありません。
アイリアの星で採れるサンフラワーを調合して作った特別な物です」
星野はハッと顔をあげた
「若宮ひなたさん、彼女からはその香水の香りがしたんです。
それに調合の仕方は私とアイリアしか知りません」
「じゃあやっぱり彼女は…」
「それにさっき話したんだけど、ひなたは僕たちの歌に込めた想いに気付いてくれたみたいだよ。それにあの笑顔はアイリアに瓜二つだった」
星野は壁に背を預けズルズルしゃがみこんだ
そして嬉しそうに
「そっか、まだ望みはあるのか。
ありがとな大気、夜天」
いつもの星野の顔になって僕たちは安心した
星野はこうでないと
「しっかりしてよね、星野」
「私も協力は惜しみません」
****************
「だけど僕たちのこと忘れてるってどういうこと?」
疑問に思っていたことを大気に投げかけてみた
「転生した時に記憶を消しているという可能性はありますね」
腕を組んでいる大気も少し難しい表情をしている
「記憶を取り戻すことはできるのか?」
「分かりません。しかし彼女は太陽のプリンセス、記憶が戻る可能性は大いにあると思います。もうしばらく様子を見ましょう」
「でもよ、」
さっきまで真剣に大気の話を聞いていた星野が不機嫌そうに僕に視線を投げてきた
「なに?」
「なんで夜天がひなたを呼び捨てにしてんだよ」
「星野だって呼び捨てにしてるじゃん。それにそんなの僕の勝手でしょ」
僕の反応が気に入らなかったのか星野が一人騒いでいる
大気は止めるつもりがないのかただ呆れたように肩をすくめていた
~夜天~
僕たちはこの星にプリンセスを探しに来た
僕たちのたった一人のお方
だけど星野はプリンセスとはまた別の大切な人も探していた
遠い昔に離れてしまった輝き
包み込むような優しい笑顔のあの子
あの子の輝きが消えてしまったとわかったあの後
僕も大気も悲しかったけど
星野が一番辛そうだった
また会えることを信じて過ごしていた星野にはどれだけ辛かったのだろう
明るく振舞ってもふとした時に想い出しているのは知っていた
そしてこの星であの子を見つけた
どうかお願い、君の力で星野に本当の笑顔を戻してあげて…