太陽の在処~始まりの物語~
主人公の名前
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太陽の生活にも慣れた、と言ったら変かもしれないが
本当にそう思ってしまうくらい
近頃は太陽から離れていることが多かった
庭に咲いていた花はまだ咲いているのか
木の上で巣を作っていたつがいの鳥は仲良くしているのか
思い出せば出すほどじっとなんかしていられない
ドレスを翻し庭に下りてみる
本当はドレスではちょっと邪魔…
裾をつまんで考えるが
「すっごい怒られるだよね…」
一度今回のようにドレスが邪魔だからと身軽な服装で走りまわっていたら
小さいころから世話をしてくれている世話係に怒られ
正座で半日こってり絞られた
太陽の偉大さだとか
プリンセスの威厳だとか
女の子はおしとやかにだとか
食事の時のマナーとか…
なんか途中から脱線した気もするけど
とにかく半日がつぶれたので
もう二度としないと決めていた
気持ちを改めて庭に下りる
ゆっくりと庭を眺めながら
両手を広げて太陽の光を全身に浴びる
とっても幸せで心がぽかぽかする
「こんなところでどうしたのです?」
声をかけられ振り返ればお母様がいた
「─お母様、太陽の光を浴びていたんです。とっても気持ちがいいんですよ」
「そうね、太陽に住んでいる私たちも太陽の恩恵を受けて暮らしている。この星がすべてを見守り育む。まさに母なる星、暖かいのもきっとそんな要因があるんでしょうね」
お母様も目を閉じ太陽の暖かさを感じているようだ
「アイリア、私とお茶でもいかが?」
「はい、ご一緒します」
メイドが運んできてくれたお茶とお菓子で楽しみながら
お母様と久しぶりにゆっくりした時間を過ごす
「これキンモク星から持ち帰ったお茶なんです。」
「─いい香りですね。とても落ち着きます」
ほころんだ顔を見て喜んでもらえたのだと嬉しい気持ちになる
「ところでキンモク星ではどんな生活を送っていたのかしら?」
カップを静かに置きながらお母様が話を切り出した
「どんなって…歴史を教えてもらったり、装飾について教えてもらったり、戦術を教えてもらったり…」
「なんだかアイリアは綺麗になりましたね。キンモク星で素敵な人にでも出会いましたか?」
「─えっ?///」
顔を真っ赤にしてアイリアはクイーンを見た
「ふふっ、やはりそうなのですね。帰って来たあなたを見たときから雰囲気が違うと思っていました。相手はどんな方なんですか?」
「えーと、私が好きになった人はキンモク星のセーラー戦士なんです///」
「─セーラー戦士?」
セーラー戦士と言えば女性ではないだろうか?
我が娘は女性に恋をしたのでしょうか…いえ決して女性との恋がいけないとは言いませんが心の準備がまだ…
「普段は女の人なんですけど変身を解くと男の人になるんです。初めは自分の気持ちに戸惑っていましたけど、あの人の素直な心根や不器用なところに惹かれたんです」
「そういうことでしたか、私ったら早とちりしてしまいました」
「…?どういうことですか?」
「いえ、気にしないでください」
なぜか顔を赤くしたお母様
何を考えていたのかしら?
目の前にある焼き菓子に手を伸ばし一口…
─うん、おいしい♪
「おや、二人で楽しそうだな」
二つ目に手を伸ばしたときにお父様がやって来た
その手にはいくつかの資料
きっと今まで大臣たちに囲まれていたのだろう
「お父様もいかがですか?」
「もらおうか」
空いている席に腰掛け
『ふー疲れた』と言いながらもニコニコ顔のお父様の前に紅茶を出した
「──初めて飲むがこれは?」
「キンモク茶です。キンモク星から持ち帰りました」
「おいしいな。疲れたときに丁度いい」
「あなた、アイリアがキンモク星で素敵な人に出会ったんですって♪」
楽しいことでも見つけたように話すお母様に不安が募る
「素敵な人!?どんな人なんだ!?」
冷や汗を流したお父様が身を乗り出して問い詰める顔は真剣そのもの
体を少しのけぞらせてお父様と距離をとる
『ふふっ♪』
と先を促す様に見つめるお母様
「お母様に聞いてください!///」
恥ずかでいっぱいになり
ばっと立ち上がって逃げ出したい一心で走りだす
「……どういうことだ?」
「いいわね、私にもあんな時があったわ」
「…なあどういうことだ;;」
キングのつぶやきだけが木霊した
はあはあ…
恥ずかしかった////
お母様ったらすっかり楽しんでお父様に話すなんて
いきなり言われたってお父様だってビクッリするでしょうに
走って逃げてきたのはよく来る
大きなモミの木のした
木の根元に座り込んで息を整える
少し汗ばむ額をなでる風はとても落ち着く
そこから見る景色がアイリアはとても好きだった
そう言えば前にファイターと一緒に丘の上で景色を眺めたな
『ねえ、ファイターあの雲なにに見える?』
一つの雲を指さしてファイターに聞いてみた
暇だった、ということもあるがファイターがどんなものに連想するか知りたかった
『そうね…おやつにでたマフィンかしらw』
『…流石ファイターね。確かにふわふわ浮いてたらお菓子に見えるかもしれないけど』
ファイターらしい答えに私は苦笑した
そしたら雲のほとんどがマフィンという事になる
『なによ、じゃあアイリアはなにに見えるの?』
『私は……あれは確かにマフィンね』
『私と変わんないじゃないの!』
『仕方ないでしょ、ファイターがマフィンって言ったらマフィンにしか見えなくなったんだもの!』
ぐー・・・
『─アイリア、さっきご飯食べたでしょ・・?』
『うっ////ファイターのせいだよ!!』
なんで今お腹がなるのよ!!
さっき食べたでしょ、私のお腹!!
『ぷっ・・あはは!!アイリアったら顔真っ赤!!』
『わ、笑わないでよ///』
もおーーー////
『ごめんなさいwwそうね、いま持ってるのは…』
そう言ってファイターはゴソゴソと何かを探し始めて出してきたのは…
『クッキーでしょ、キャンディでしょ、チョコでしょ…』
……どこからそんなに出してきたのか
ファイターのポケットはどんだけ大きいの?
『というかまたそんなにお菓子食べようとしてたの?』
『お腹すくんじゃないかと思って持って来たのよ♪』
草の上に布を広げて出してきたお菓子を並べているファイターは幸せそうだ
『また火球に怒られない?』
ニコニコしていたファイターの顔も火球の名前を出した途端に笑顔が消えた
『…プリンセスには内緒ってことで』
やはりあの火球の氷のようなオーラはファイターも堪えたようだ
『しょうがないな~それじゃ私とファイターの秘密ってことで』
『本当よ!』
お菓子を乗り越えて私に迫ってくるファイターについ笑いが漏れてしまう
『ふふっ、うん本当wwじゃあはい、ゆびきりしよ!』
私はすっと小指を立ててファイターの前に出した
一瞬きょとんとしたファイターだが意図を理解して
そっと私の小指に自分の小指を絡めた
『ゆびきりなんて久しぶりだわ』
『そうなの?─それじゃゆびきった』
それから私たちは流れる雲を眺めながらお菓子を食べてゆっくり過ごした
夜、貯えのお菓子がなくなっていることに気付いたメイカーからお叱りの言葉をいただいたのは…また別のお話。