春風と君と
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ジェームズの部屋
春風と君と
次の日、青汰とフォックス紫姫は仕事のミーティングをしていた。
朝5時の撮影のため、とにかく眠い。
2人はあくびをふぁんふぁんし始めると、監督が至近距離にも関わらず、拡声器で朝の挨拶を始めた。
その後、ディレクターの田中が独自に編み出したネバネバ体操で体をネバネバにし、撮影準備に取り掛かった。
なぜ、早朝に行うのかというと、健康のためではない。
今日の撮影する 内容は相撲レスラー紫姫がリハビリのため、お買い物競争の練習をするシーンだ。
そのため、早朝でなければ雰囲気がでないのだ。
相撲レスラー紫姫はしこをなんども踏みしめながら、前に進んでいく。まさしくその姿はしんのアスリートといえよう。
青汰は次のシーンの待機をしていた。
巨体となった紫姫を労わりつつ、リハビリのためだと心を鬼にする少女を演じる予定だ。
内容は、紫姫を車のバンパーに縄で結びつけ、時速40キロで走行するという荒治療である。
青汰はいつかはパテシエになりたいと思っている紫姫の心境を知り、街中を引きずり回すことを決めたのである。
「いやあああああ!!ポン子ちゃーーんやめてえええええ!!」
なんども石にぶつかりながらも懸命にリハビリにのぞむ彼の姿を見て視聴者はなんと思うのだろうか。
「しっきー、あと少しよぉ!がんばりんしゃい!」
そう言って、彼女はアクセルを踏み込む。
血だらけになりながらも(特殊メイクです)、懸命にリハビリにry
こうして、撮影は順調に行われた。
しかし、途中で紫姫が電線コードに躓いて転んでしまった。
その衝撃で近くにあったスタンドが紫姫の顔面スレスレに倒れた。
「ガシャーーーン!!」
スタジオにいた全員が驚き、駆け寄った。
一番近くにいた青汰は紫姫を起こす。
「大丈夫かいな。怪我しとらん?」
心配そうに覗き込んでくる相方に、笑顔で心配かけまいと応えた。
「僕は大丈夫やで。スタンドさんは無事なん?ふふ。」
そのセリフを聞いて周りは和んだようで、含み笑いをする者もいた。
そんな様子を見て青汰もほっとしたようだ。
まるで説教をするかのように人差し指をあげ、
ふざけて言った。
「スタンドさんはえらく丈夫やから大丈夫や。
君は彼のように金属の骨格でできとらんのやから、
自分の心配せい。」
その言葉を聞いてますます周りは笑いが湧いた。
笑わせようとしなくても、周りを笑顔にさせられる彼らはやはり芸人なのだと感心させられる。
―舞台裏
?「ふふふ・・・計画通り・・・!」
?「あの、本当にこんなことして・・・」
?「ああ、自分だって好きでこんなこと・・・!しかしこうしなければいけなかったんだよ。彼の特別なアレをいただくためにはね・・・
ふふふふ・・・!!はははは!」
?「どうでもいいけど声でかいっすよ」
撮影終了後、今日は撮影も終盤に差し掛かってきていることもあってか、
早めに帰された。
楽屋には金庫があり、貴重品はそこに預けていた。
鍵もかけてあるので、関係者でなければあけることはできない。
ましてや、金庫のロック解除の番号は本人しか知らないのだ。
青汰はゆっくりと金庫を開けてみた。
中身は無事だった。
「はあ、今後はこうしないと危ないなあ。リップとかの小物は自分の手元に持っていくしかないな。」
「せやな。ほんまに面倒な世の中になったわぁ。」
「ほんまにな、それや。世知辛い世の中やなあ・・・」
そう言って青汰は腰を右手でポンポン叩いた。
その仕草がお年寄りみたいだったので、可笑しかった。
「青汰、それ世間話を始めるおっちゃんや。」
「うわー、おっちゃんはまだ早いで。青少年の枠に入れといてえな。」
「ははは、もう帰るか。貴重品も無事やし。」
「お、帰ろう、帰ろう。今日は一杯いくやろ?」
またおどけた感じで酒を呑むジェスチャーをする青汰。
「たまにはええなぁ。いこかー」
談笑をしながら2人は楽屋を去った。
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