地球滅亡企画


第一話「常日ごろ」~スピルバーグ×天龍 ランクA


アパートの一室。いつもの朝がやってきた。1人の男が背伸びをしながら朝日を浴びていた。
彼の名をスピルバーグという。

ネクタイを締めるのと同じように、付け鼻を装着すると、いつもの顔になる。

「あはは、オイラは今日も決まってるー!ベリべりハッピーライフ」

そんなことをシャウトしながらテレビのニュース番組をつける。

日曜日の朝はなんて清々しいのだろうか。そして彼の好きなアニメもいつも通り放送されていた。

「うーむ!今回はどうなってしまうんだろう。気になるぞー。」

テレビの陽気な音楽は番組のオープニングテーマであることを意味している。

アニメが始まり目を輝かせるスピルバーグ。

エンディングが流れだす頃、スピルバーグ(以降監督)は呟いた。

「次回はどうなるんだろう・・・」

しばらく部屋の中でごろごろしていた。何気なく視線を右斜め上に移すと、これでもかというほどの晴天だった。

「こんな日に出かけないなんてもったいないぞ。どこかにでかけようかな。明日の朝食の仕入れなんかもしなきゃ。」

そう言って、街に出かけようとした。しかし、監督は玄関の前でほんの数秒間だけ動かなかった。





ここは、商店街。いつもの商店街だ。

「スピルバーグではないか。買い物か?」
たまたま、天龍と出会った監督は、手にたくさんの荷物を抱えていた。

「おお!天龍じゃまいか~。ほら、明日は朝食をオイラが作るからな、今から仕込みをいれて完璧に済ませなきゃな。ははは!」

「・・・・そうか。うまくできると良いな。」

「ああ!天龍も楽しみにするんだぞ~オイラのお手製スクランブルエッグを披露するからな!がははは!」

天龍と監督はその後、共に買い物をし始めた。普段あまり接点のない2人。だが、意外にも話はよく噛み合っていた。職業柄が少し似ているからだろうか。

楽しい時間は刻一刻と過ぎ去っていく。

そして夕刻。


天龍の雲の上に珍しく乗せてもらった監督は楽しそうにこう言った。

「おおー素晴らしい眺めだなあ。明日は良い天気になるぞー!」

天龍は監督の表情を横目に何か深刻な顔をしたあと、ためらいがちに口を開いた。

「スピルバーグ、この地球はもうすぐ・・」しかしそれ以上は口に出せなかった。監督の横顔があまりにも楽しそうだったから。純粋な子供のような笑顔で夕日を見ていたから。
小さくかぶりを振ると、天龍は再び夕日を眺めだした。なるほど、確かに素晴らしい眺めだ。

すると次の瞬間、監督の手が天龍の頬に伸びてきた。そして無理やり、だけど優しく、顔を引き寄せられる。

なんとなく頭の片隅では理解できたのだけど、違和感を感じていた。

監督の口づけが小さくチッと音をたてて、すぐにまた離れていった。はにかむ少年が少女にするキスのようだった。

「スピルバーグ・・・」

天龍は驚いてスピルバーグを見たが、彼はうずくまって泣いていた。

手を伸ばそうとする。少しためらいがちに伸びた手は宙をさ迷っていた。

「オイラ、明日からもうみんなに会えないんだね。いつものアニメも見れないし、買い物もできない。スクランブルエッグも作れない。そして、天龍とこうやって一緒にいられないんだね」

その背中は震えていた。きっと慰めの言葉なんかじゃ足りないくらいに怖いのかもしれない。天龍はその手を監督の右手に伸ばし、ギュッと握った。冷え切った指先に触れる。

監督は驚いたように顔を上げると、少し嬉しそうに笑った。

「オイラ、弱虫でごめん。朝からずっとずっと我慢していたから。」

「奇遇だな。私もだ。朝からずっとずっと我慢していた。」

2人の体温が混ざり合い、息の白ささえも共有しているような感じがした。

もう、明日はこない。だけど、好きな人とこうしているとそんなことも夢の話のように思えてくる。


「なあ、明日は何しようかなあ。」

「そうだな。私はいつも通りだと思うが。」

「えー、それじゃつまらないぞ~。ディステニーランドに行こう。」

「すまぬが、私はそのようなところは苦手でな・・・温泉ならば行ってもよいが。」

「おっ!オイラも行きたい行きたい!マッサージしてもらったりーしゃぶしゃぶしたりー・・・」

2人の会話は途切れることがなかった。それはまるで今まであった日常のように

【完~常日ごろ~】
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