ベリベリハッピーライフの描き方
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ジェームズの部屋
ベリベリハッピーライフの描き方
「はあ、何げにずっと車の中も疲れるもんですね。」
隣でメニュー表をいじる監督にカイルが言った。
「そうだなーさすがにおいらも運転しっぱなしは疲れたー!でも、まだまだ長い道のりだからね。
それに!」
監督が大げさな動きで、メニュー表を元あったスタンドに戻すと、カイルの反応を待った。
その様子をなんとなく察したカイルは、わざとらしく聞き返す。
「それにぃ?」
すると、しばらく言葉を溜めるまで溜めまくっていた監督が嬉しそうに笑いながら言った。
「オイラは鍋焼きうどんがメニュー表にあって嬉しい。鍋焼きうどん大好きなんだ!」
「ははは、何を言い出すかと思ったら、そんなことで大げさだなー。」
カイルはセルフサービスの水を少しだけ口につけた。
「カイル君も鍋焼きうどん好きなのかい?」
「まあ、好きですよ。厚焼き玉子に出汁がしみてて美味しんですよね。」
「そうそう!オイラはしいたけが好きなんだー昆布出汁のきいたやつ。」
「いいですねえ。」
2人がそうこう話している間に、アナウンスが流れた。
「番号札、20番、21番でお待ちのお客様~。」
お店の受け渡しカウンターに並ぶと、おばさんが、鍋焼きうどんをトレーに乗せて、渡してくれた。
その際に、熱いので気をつけてくださいという心遣いの言葉もついてきた。
2人は再びカウンターに向かう。
その時も、おいしそうですねーなどと声をかけあっていた。
カウンター席に座ると、2人は唐辛子に同時に手を伸ばした。
そこで重なり合う前に、お互い手を引っ込めて言った。
「先にどうぞ。スピルバーグさん。」
「先にいいぞー。カイル君。」
お互いの目が合うと同時に、目を細めた。
「ふふ、それじゃ、俺が先にかけますね。」
そう言ってカイルは唐辛子を取った。
監督もその様子を微笑みながら、見ていた。
そして、うどんにかけ終わると、それは監督に手渡される。
そのやり取りがなんとなく、面白かったのか、2人はしばらく微笑みを崩さなかった。