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僕はトナカイさんにはなれない。

クリスマス・・・それは、僕にとって素敵な一日です。

なぜなら、そこら中に幸せそうな雰囲気が転がっているから。

楽しそうに談笑する家族、手をつなぎ合う恋人たち・・・

僕は独り身だけど、そういった人たちをみると、ひとりじゃない気がしてきるんです。

そしてなによりも楽しみなのが、そう。

テレビ番組のお笑いタレントを鑑賞すること。
毎年、クリスマスとお正月にはお笑いのビッグイベントがありますからね。
この時期はかなり出番が多い。

そして最近、僕の中で、ブームなんです。
お笑いタレント同士の掛け算をすることが。

妄想の中で、絡み合う芸人たち。
普段毒舌を吐いているピン芸人が、若手たちによって屈辱的な行為をされたり、
普段はおちゃらけているボケが、相方に欲情し、押し倒す場面だったり、
ああ、あとは楽屋の裏側で行われるリハーサル中に、誰にも聞こえないように秘部を弄り合う様なんていうのもいいなと思います。

えっと、ここまで言うと、気付くかと思うのですが、僕は所謂「腐っている」んです。

これはもう、5年くらい前からで・・・とある、女子達に薄い漫画を読まされたことがありました。
そこに描かれていたのは、まさしく美男子同士の絡み合いでした。かなり細部まで、その描写が描かれていました。
向こうは完全におふざけだったんだと思います。
しかし、僕は衝撃を受けました。そして、何か、こう胸の中に、モヤモヤとした感情が生まれたんです。「もっと読みたい」と。
当時は悩みました。
僕は、実はホモなんじゃないかって。
だから、高校生の時にゲイバーを訪れたこともありました。
しかし、そこではトラウマを残すだけだった。思い出したくない。
まさか、あんなムードもへったくれもなく、自分のお尻を・・・!ああああ!!

なんであんなことされなければならなかったんだろう。あんなのくそみそテクニックもいいところ。

つまり、僕はただ単に男が好きというわけではないということ。

男同士の絡み合いが好きなんです!

だから、今年もウキウキした気分でクリスマスを待っていました。

しかし、今年は違いました。
なんと、僕に音楽活動の仕事が舞い込んできたのです。

これはなんとか成功させたい。
お笑いも録画をすればいいし、今から出てくる芸人さんもチェックしながら練習だってすればいい。

そして当日から1週間前ぐらいのときに、またもや嬉しいニュースが飛び込んできたのです!

それは、「赤いきつねと緑のたぬき」コンビとの共演でした。

僕は最近この二人もチェックしていたので、もう間近で見られるんだなと思うと、嬉しい半面、とても緊張しました。

なぜかというと、もちろん初めての共演というのもあるのですが・・・
2人の前でニヤニヤしてしまいそうで、怖いのです。
人には知られたくない、僕の感情の吐露を見られてしまうと困るんです。


―当日のリハーサルにて

「へえ、すごいな。あんたみたいな小さい子が歌、歌うん?こりゃ、ぼくらもまけていられないなー。なあ?ぽんぽこ。」

「誰がぽんぽこや。わいには青太っちゅう立派な名前があるんやで?」

さっそくですが、僕は今ニヤケ顔をなんとか、手で抑えている状況です。

だって目の前に繰り広げられているのは、生の絡み合いなんですから。

そして、とうとう僕は小さく吹き出してしまい、それをなんとか咳払いで誤魔化しました。

すると青太さんがこちらをチラリと見たので、まずいと思い、自己紹介をすることにしました。
「あの、僕は鹿助といいます。青太さんと、紫姫さんでしたよね。赤いきつねと緑のたぬきっていうコンビで活躍中の。」

すると青太さんは、意外そうな顔をする一方で、紫姫さんは嬉しそうに言いました。

「おー!覚えててくれたの?嬉しいなー。」

ああ、この人は左かな。
そんな感じでリハーサルも終え、本番になりました。

僕が歌った後に、サプライズゲストとして登場するのですが、
その際に舞台の裏で励まし合う2人を見ました。
僕はそのやり取りを横目に、益々感極まって歌を歌い上げました。


そして、クリスマスライブも終り、2人も楽屋に戻って行きました。

僕は、歌の練習をし、DVDに映される自分・・・の横で談笑する2人を見ていました。

本当に、この2人は仲が良くて可愛いなあ。と一人でニヤケていた、その時でした。

人の気配がしたのです。

そこで僕は急いで歌の練習を再開し、あたかも今までそれを練習していたフリをしました。

しかし、中々立ち去ろうとする気配はありません。

そこで、僕は振り向きました。すると、青太さんがドア越しに半分だけ顔をのぞかせていました。

「あ、青太さん。その、なんというか。」

僕は先程まで妄想のネタにしまくってしまった本人を目の前にし、たじろぎました。

またニヤケてしまうからです。

しかし僕よりも先に相手が笑いました。
僕の様子が可笑しかったのかな・・・?

「あんま人に見られるのいやなん?」

これ以上ここにいると、さらに変に見られると思い、僕は適当に誤魔化すことにしました。

「いえ、そんなことはないです。もうそろそろ僕も帰ろうとしてたところなんです。」

そうだ、帰って録画したものを見なければ。
そんなことが頭にふと浮かんだものですから、
僕足並みも、どことなく焦っていました。

その後青太さんが一緒に帰らないかと言ってくれましたが、帰りに注文したBL本を取りに行かなければならないことも配慮して、
遠慮しました。その時ちょっと焦っていたこともあったので、困り顔になっていたかもしれません。

しかし、僕はその時、ピンときました。
青太さんとメアドを交換することによって、
今後の妄想に役立つかもしれないと。

しかも今後、このようなチャンスは二度とないかもしれない。

そして、帰宅へ急いでいた足をピタッと止め、
青太さんにお願いをしてみることにしました。

「えっと、メールアドレス交換してくれませんか。」

「ええよ。ほれ」

快くメアドを交換してくれました。
いい人だなあ、きっと右ですね。

そう考えて微笑むと、相手も微笑み返してくれました。

そして、そのまま帰ろうとすると、僕のリュックに付けてある、BLゲーのキャラ絵が描かれたチャームが鳴りました。

そうだ!今年もコミケのためにお金をたんまり、おろさなきゃ。

そしてクリスマスの夜に1人、軽やかな足取りで鈴を鳴らしながら、夜の闇に消えていった。

それは、まるでクリスマスのトナカイさんのように・・・。
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