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オレはクリストファー。
今日もいつも通りの日常を過ごしている。
朝の占いは最下位。
トースターの急な故障でトーストは黒焦げ。
通勤の途中、犬の糞を思いっきりエンガチョしてしまい、それを小学生に笑われた。
ああ、なんて素晴らしい朝の始まりなのだろうか。
オレは頭上のカラスを睨みつけて呟いた。頼むから今日は落とさないでくれ。
いつもながら、通勤場所までの道のりが非常に長く感じる。
「はあ、不運っていつ治るんだろう。」
本当に疑問だ。オレが何をした。こんなはずの人生じゃなかったはずだ。
オレがこの世に生を受けて18年・・・くらい。
マジでこんなんばっかだ。
しかし、オレはそれでも前向きに生きてきた。
そしてこれからもそうして生きていく・・・
うん、生きていくのさ。
今日は通勤する前に、お得意さんのところで服の素材を買うことになっている。
いつもの柄があるといいけど。なぜかオレがいくといつもないからな。
お店に着くと、小さくため息をつきながら、中に入る。
しばらくしていつものようにお店の人と軽く会話を交わし、品物を受け取った。
今日はついている。なぜならお目当ての素材があったからだ。
オレはそれだけで少しだけ幸せになれた。
しかし、その幸せも長くは続かなかった。
オレが通勤場所がある商店街を歩いているときのこと。
「バッシャアアーーン!!」
突然、オレの全身に冷たい水がかかった。
なんですか、これスコールかなんかですか。
ここは熱帯雨林ですか。
「すいません!!本当にごめん、まさかそこに人が通るなんて思わなくて、大丈夫ですか?」
振り向くと空のバケツをもった青年が心配そうに哀れんだ目で立っていた。
よくみると黒髪だけではなく前髪が白いという特徴をもった青年だった。
人がよさそうな顔だ。怒る気も失せてしまったよ。
「いいえ、大丈夫です。今暑いなと思ってたところだったんで、ちょうど良かったです」
「え?あ・・あの本当に大丈夫ですか?(今冬だぞ・・・?」
オレは濡れてしまったハンカチで顔を拭うと、もう一度大丈夫と言ってその場を去っていった。
きっと後ろの青年は不思議そうな表情をしているに違いない。
もう、いいや別に。
オレはびしょ濡れになって、通勤場所である、「オレ」の店に着いた。正確にはオレ達の店であるが。
「おはよう、ポーツマス」
「あ、おはようございます。クリとファーさん。おや、全身がびしょ濡れのようですが?どうしましたか。ああ、いいえ今すぐ着替えとタオルを持ってくるので奥で着替えてきてください。」
オレは流石に寒かったので、言われたとおりにした。
「ハックシュン!・・・ああやべ、寒い」
着替えてきて、ふと気づいた。
そうだ、素材は大丈夫だったかな。
紙袋を確認してみると、もろに濡れていた。
オレはちょっと目元が濡れていた。
ホント、ついてねえ。
たまにすげえ、めげるわ。
オレはポーツマスにそのことを話すと、アイツは一応、もう一度乾かせば大丈夫だからとフォローしてくれた。
それが逆になんか、落ち込むわ。
いや、でも当然のフォローだと思うから、なんとも言えねえ。
なあ、神様っていうのは、幸運とか平等に分けてくれないもんなんだな。
あんたは、そうやって雲の上で踏ん反りかえって笑っていればいいよ。
むしろ笑っていてくれ。その方がずっと報われる。
しばらくして、オレは仕事を終えて帰宅の準備をしていた。
さっさと帰ろうとするオレにポーツマスが穏やかな笑みを浮かべて呼び止めてきた。
「クリストファーさん、ちょっと。」
「ん?なんだ。」
「あなたに差し上げたいものがありまして」
「オレに?なんで突然」
オレは少し驚き戸惑っていると、相手はやはり穏やかに答えた。
「あなたにはいつも感謝しているのですよ。常日頃から、このお店の経営が成り立っているのはあなたのおかげでもあるのです。友人として、感謝の気持ちを込めて、これを差し上げます。」
そう言ってポーツマスは手のひらくらいの大きさの箱を差し出してきた。
オレは、感激のあまり、しばらく言葉が出なかった。そして、オレは先ほどの言葉を撤回することにした。
オレが気づいていなかっただけだ。
神様はちゃんと、平等に分けてくれているんだ。
友達をオレに与えてくれたんだ。
少し目頭が熱くなったが、すぐにそれを指でゴシゴシこすると、その箱を受け取った。
「ん、ありがと。」
オレは、照れくささを感じながら、それを隠すように荷物とともにプレゼントを仕舞った。
「じゃあな。また明日。」
「ええ、お気を付けて。また明日」
ポーツマスは残りの片付けと帳簿をつけるらしい。
オレもポーツマスに感謝しないとなあ。
今度何かプレゼントしてみるか。
オレは、清々しい気持ちで綺麗に映える夕焼け空を見ながら、帰路へとついた・・・
「ピコピコーン・・・」