【八犬伝】“俺”を見て?
いつものように、莉芳から小遣いをもらい、村雨と一緒に協会を飛び出した。
荘介から古那屋への土産を貰ったから、帰りに寄らなくてはならない。
ま、女将が何か美味いもの食わせてくれるかもしんねーし?
ちょっと、街まわったら寄ろー
そういえば、こんな風に荘介と街まわったことってあまりないよなぁ…
荘、いっつも協会の仕事とかやってばっかりだから。
たまには休めばいいのに、あいつも変わってるよなぁ…
そんなことを考えながら、人ごみの中を歩いてゆく。
そんな俺を店の人たちは見慣れたように見るから、俺もかなり知られてるんだなって思い笑ってしまった。
あーあ…今日は暇だなぁ…
街を抜けて、グッ…と背伸びをした、その時、
ガッ…‼
突然、視界が真っ暗になった。
その衝撃で、村雨が飛ばされ、俺の名前を呼びながら飛び回っている。
勿論、こんな目に遭ったのは今回が初めてではなく、すぐに状況が理解できた。
「……信乃、久しぶり」
耳元で低い声で囁かれた。
いつも聞いている声と全く同じ声なのに、体がビクッと反応してしまった。
その反応が気に入ったのか、俺を抱きしめる腕の力はさらに強くなる。
「あっ…蒼!お前何でまたこんな所に!毛野に見つかったら大変だぞ!」
「何で…って、“信乃に会いたかった”じゃダメ?後アイツに会っても別にたいしたことはないよ」
優しいながらも力のこもった眼で俺を見つめる蒼から眼を逸らす事が出来なかった。
片方は荘と同じ瞳。
もう片方は琥珀の瞳。
見慣れてはいるのに、その綺麗さにみとれてしまっていた。
「お前、いつまで俺に抱きついてんだよ」
「出来る事ならずっと♪」
「あー…もう…」
前なら思いっきり暴れて抵抗してやったところだが、何か最近その気力も失せた。
気が済めばそのうち放すだろうし、何より、
荘と同じ温もりだから、自然と落ち着いてしまっていた。
「…………。」
「今日は俺から逃げないんだね、信乃」
蒼は優しく俺の頬を撫でた。
その大きな掌に顔を寄せると、蒼は驚いた顔を浮かべた。
「何か…甘えたくなってさ」
「…俺に?」
「うーんと…“荘介”に」
「へぇ…」
幸い、ここの路地裏に人がくる事は滅多にない。
まぁ、だからこそ蒼はこの場所で俺を狙っているのだが。
蒼な俺の言葉に薄笑いを浮かべた。
多分、さっきの言葉は荘ではなく、2人の荘介の事だと言うのがすぐにわかったのだろう。
「信乃」
「ん?何だ、蒼………んっ、」
気がついたら、蒼の顔は目の前で唇は塞がれていた。
その優しい口づけに、緊張がほどけ、自然と蒼の首に手を回して抱きついていた。
両手で包み込まれている俺の頬が徐々に熱をもっていくのがわかった。
また蒼のペースに乗せられてるなぁ…なんて頭で思っていても身体は言う事をきかない。
長い口づけが終わり、やっと蒼の唇が離れた。
互いの口から引いている銀の糸がプツリと切れ、信乃の口に垂れた。
それを蒼は丁寧に拭った。
「可愛い。信乃大好き」
「可愛いとか言うなーっ!俺だって男なんだから…っ」
「そんなの関係ないよ、俺は信乃が大好き、ただそれだけの事だよ」
「…恥ずかしいから何回も言うなっつーの」
恥ずかしくて顔を背けると、蒼は俺の顔を正面に向かせた。
「ちゃんと“俺”を見て、信乃」
何でだろう…
蒼はいつも悲しい顔をしてる。
荘介はよく笑うのに、
蒼は正反対だ。
荘介が笑うのは、無理してるのも多いけど。
いつも俺を壊れそうなガラスを見るようにみつめる蒼は一体…
何を思っているんだろう?
「ねぇ、信乃」
「何だよ」
「これ以上、そんな物欲しそうな目でみられたら俺、これだけじゃ済まない」
「…全力で逃げたいんだけど。村雨呼ぶよ?」
「それは勘弁」
蒼は一瞬、信乃に顔を埋めてニコッと笑った。
「じゃあね、信乃。また今度」
「お前、荘の玉返せよ!」
「やーだねっ、まぁでも信乃が俺のものになってくれたら少しは考えてあげる」
「そんなもん、なるかーーー‼」
大きな声を出している信乃を見つけて村雨が戻ってきた。
「何か痛いなぁ…」
首の横を摩って、急いで古那屋に向かった。
古那屋で、小文吾や現八たちと夕飯を食べていると荘介が迎えにきた。
「また夕飯まで頂いてたんですか。信乃、たまにはちゃんと協会に戻ってきてください」
「まぁ、そんな堅い事言うなって!」
「うちの女将が良いって言ってるんだしよ。荘介も食べていけよ」
「はぁ…そう言う事ではないのですが。御言葉に甘えさせて頂きます」
荘介は信乃の隣に座り、箸を割ろうとした時、ふと荘介は動きを止めた。
「…現八さん、すみません。ちょっと、席外しますね」
「あ、おぅ、わかった」
信乃、ちょっと来てください、と荘介は信乃を引っ張って部屋を出た。
「どうしたんだよ、荘す……んんっ、」
信乃が喋ろうとした瞬間、荘介は信乃の唇を塞いだ。
蒼の時と同じなのに、とても優しく感じる口づけだった。
しかし、次第に信乃を追い詰めるように激しくなっていく。
「………はぁっ、なっ、どういう事だよ荘「また俺の影に会ったんですか」
ギクッと一番きかれたくないことをきかれてしまった。
「べ、別に会ってなんかねーよ!」
「じゃあ、これは何なんです」
荘介は鏡を取り出すと、俺のうなじを映した。
「‼‼蒼のヤロー!…って、あ」
荘介が満面の笑みで俺を見つめていた。
…ヤバイ。
急いで後退さるも、残念ながら後ろは行き止まりだった。
荘介は俺の両側に腕をつき、逃げ道を塞いだ。
「信乃…俺が今、どういう気分なのかわかりますか?」
「…ごめんなさいっ」
目が笑っていなかった。
ガチで怖い。
荘介は俺の耳元に顔を寄せた。
「…信乃。」
「………っ!」
身体がビクッと跳ね上がる。
身体が熱くなっていくのがわかった。
すると荘介は、はぁ…と溜息をついて、俺の頭を撫でた。
「俺以外にそんな反応見せないでください。だから、狙われるんですよ」
そう言って、蒼が残した痕の上に深く口づけた。
よほど気に食わなかったらしい。
意外…いや、かなり独占欲強いよなぁと思いつつ静かに荘介に体を委ねた。
「もういいだろ?」
「そうですね…現八さんたちを待たせてますし、続きは帰ってからにしましょうか」
「まだ続くのかよ!」
「えぇ、この程度で終わるとでも?」
「…荘介怖い」
「信乃が悪いんですよ」
じゃあ、行きますか。と、荘介が信乃の手を引いて、髪に優しく口づけた。
「“俺”を見てくれないと、嫉妬しますよ、信乃」
*************
現「おい、信乃、首のところどうしたんだ?」
信「いや、これはその…」
荘「ちょっと、蚊に刺されて腫れたみたいですよ」
子「この時期多いもんなぁ〜。気をつけろよ、信乃」
現「いや、俺はてっきりどこぞの誰かに信乃が…ぐはッ」
子「お、おぉー兄貴?新しい酒あるから飲もうぜー!」
毛(信乃と荘介が怪しい…)
大(…賑やかだな)
道(何が起きてるんだい⁇)
荘介から古那屋への土産を貰ったから、帰りに寄らなくてはならない。
ま、女将が何か美味いもの食わせてくれるかもしんねーし?
ちょっと、街まわったら寄ろー
そういえば、こんな風に荘介と街まわったことってあまりないよなぁ…
荘、いっつも協会の仕事とかやってばっかりだから。
たまには休めばいいのに、あいつも変わってるよなぁ…
そんなことを考えながら、人ごみの中を歩いてゆく。
そんな俺を店の人たちは見慣れたように見るから、俺もかなり知られてるんだなって思い笑ってしまった。
あーあ…今日は暇だなぁ…
街を抜けて、グッ…と背伸びをした、その時、
ガッ…‼
突然、視界が真っ暗になった。
その衝撃で、村雨が飛ばされ、俺の名前を呼びながら飛び回っている。
勿論、こんな目に遭ったのは今回が初めてではなく、すぐに状況が理解できた。
「……信乃、久しぶり」
耳元で低い声で囁かれた。
いつも聞いている声と全く同じ声なのに、体がビクッと反応してしまった。
その反応が気に入ったのか、俺を抱きしめる腕の力はさらに強くなる。
「あっ…蒼!お前何でまたこんな所に!毛野に見つかったら大変だぞ!」
「何で…って、“信乃に会いたかった”じゃダメ?後アイツに会っても別にたいしたことはないよ」
優しいながらも力のこもった眼で俺を見つめる蒼から眼を逸らす事が出来なかった。
片方は荘と同じ瞳。
もう片方は琥珀の瞳。
見慣れてはいるのに、その綺麗さにみとれてしまっていた。
「お前、いつまで俺に抱きついてんだよ」
「出来る事ならずっと♪」
「あー…もう…」
前なら思いっきり暴れて抵抗してやったところだが、何か最近その気力も失せた。
気が済めばそのうち放すだろうし、何より、
荘と同じ温もりだから、自然と落ち着いてしまっていた。
「…………。」
「今日は俺から逃げないんだね、信乃」
蒼は優しく俺の頬を撫でた。
その大きな掌に顔を寄せると、蒼は驚いた顔を浮かべた。
「何か…甘えたくなってさ」
「…俺に?」
「うーんと…“荘介”に」
「へぇ…」
幸い、ここの路地裏に人がくる事は滅多にない。
まぁ、だからこそ蒼はこの場所で俺を狙っているのだが。
蒼な俺の言葉に薄笑いを浮かべた。
多分、さっきの言葉は荘ではなく、2人の荘介の事だと言うのがすぐにわかったのだろう。
「信乃」
「ん?何だ、蒼………んっ、」
気がついたら、蒼の顔は目の前で唇は塞がれていた。
その優しい口づけに、緊張がほどけ、自然と蒼の首に手を回して抱きついていた。
両手で包み込まれている俺の頬が徐々に熱をもっていくのがわかった。
また蒼のペースに乗せられてるなぁ…なんて頭で思っていても身体は言う事をきかない。
長い口づけが終わり、やっと蒼の唇が離れた。
互いの口から引いている銀の糸がプツリと切れ、信乃の口に垂れた。
それを蒼は丁寧に拭った。
「可愛い。信乃大好き」
「可愛いとか言うなーっ!俺だって男なんだから…っ」
「そんなの関係ないよ、俺は信乃が大好き、ただそれだけの事だよ」
「…恥ずかしいから何回も言うなっつーの」
恥ずかしくて顔を背けると、蒼は俺の顔を正面に向かせた。
「ちゃんと“俺”を見て、信乃」
何でだろう…
蒼はいつも悲しい顔をしてる。
荘介はよく笑うのに、
蒼は正反対だ。
荘介が笑うのは、無理してるのも多いけど。
いつも俺を壊れそうなガラスを見るようにみつめる蒼は一体…
何を思っているんだろう?
「ねぇ、信乃」
「何だよ」
「これ以上、そんな物欲しそうな目でみられたら俺、これだけじゃ済まない」
「…全力で逃げたいんだけど。村雨呼ぶよ?」
「それは勘弁」
蒼は一瞬、信乃に顔を埋めてニコッと笑った。
「じゃあね、信乃。また今度」
「お前、荘の玉返せよ!」
「やーだねっ、まぁでも信乃が俺のものになってくれたら少しは考えてあげる」
「そんなもん、なるかーーー‼」
大きな声を出している信乃を見つけて村雨が戻ってきた。
「何か痛いなぁ…」
首の横を摩って、急いで古那屋に向かった。
古那屋で、小文吾や現八たちと夕飯を食べていると荘介が迎えにきた。
「また夕飯まで頂いてたんですか。信乃、たまにはちゃんと協会に戻ってきてください」
「まぁ、そんな堅い事言うなって!」
「うちの女将が良いって言ってるんだしよ。荘介も食べていけよ」
「はぁ…そう言う事ではないのですが。御言葉に甘えさせて頂きます」
荘介は信乃の隣に座り、箸を割ろうとした時、ふと荘介は動きを止めた。
「…現八さん、すみません。ちょっと、席外しますね」
「あ、おぅ、わかった」
信乃、ちょっと来てください、と荘介は信乃を引っ張って部屋を出た。
「どうしたんだよ、荘す……んんっ、」
信乃が喋ろうとした瞬間、荘介は信乃の唇を塞いだ。
蒼の時と同じなのに、とても優しく感じる口づけだった。
しかし、次第に信乃を追い詰めるように激しくなっていく。
「………はぁっ、なっ、どういう事だよ荘「また俺の影に会ったんですか」
ギクッと一番きかれたくないことをきかれてしまった。
「べ、別に会ってなんかねーよ!」
「じゃあ、これは何なんです」
荘介は鏡を取り出すと、俺のうなじを映した。
「‼‼蒼のヤロー!…って、あ」
荘介が満面の笑みで俺を見つめていた。
…ヤバイ。
急いで後退さるも、残念ながら後ろは行き止まりだった。
荘介は俺の両側に腕をつき、逃げ道を塞いだ。
「信乃…俺が今、どういう気分なのかわかりますか?」
「…ごめんなさいっ」
目が笑っていなかった。
ガチで怖い。
荘介は俺の耳元に顔を寄せた。
「…信乃。」
「………っ!」
身体がビクッと跳ね上がる。
身体が熱くなっていくのがわかった。
すると荘介は、はぁ…と溜息をついて、俺の頭を撫でた。
「俺以外にそんな反応見せないでください。だから、狙われるんですよ」
そう言って、蒼が残した痕の上に深く口づけた。
よほど気に食わなかったらしい。
意外…いや、かなり独占欲強いよなぁと思いつつ静かに荘介に体を委ねた。
「もういいだろ?」
「そうですね…現八さんたちを待たせてますし、続きは帰ってからにしましょうか」
「まだ続くのかよ!」
「えぇ、この程度で終わるとでも?」
「…荘介怖い」
「信乃が悪いんですよ」
じゃあ、行きますか。と、荘介が信乃の手を引いて、髪に優しく口づけた。
「“俺”を見てくれないと、嫉妬しますよ、信乃」
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現「おい、信乃、首のところどうしたんだ?」
信「いや、これはその…」
荘「ちょっと、蚊に刺されて腫れたみたいですよ」
子「この時期多いもんなぁ〜。気をつけろよ、信乃」
現「いや、俺はてっきりどこぞの誰かに信乃が…ぐはッ」
子「お、おぉー兄貴?新しい酒あるから飲もうぜー!」
毛(信乃と荘介が怪しい…)
大(…賑やかだな)
道(何が起きてるんだい⁇)
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