これは僕が通ってた小学校でほんとにあったっていうふれこみで広まってた噂話。昔仲のいい二人組、仮にAちゃんとＢちゃんにしようか。がいた。
普段二人はいっつも一緒に行動するくらい仲がよくてお互いのこと親友って呼び合うくらいで、喧嘩してるところなんてだれも見たことがなかった。
でもある日そんな二人が喧嘩をした。原因は噂では語られて無かった。きっと、すぐに仲直りしてそもそもなんで喧嘩をしてたかなんて忘れてしまえるような、そんな細やかな理由だったんだろうね。
だから、そこから先は誰にとっても不幸な偶然が重なったとしか言えないーーー。
その頃、夢見がちな小学生女子たちの間ではおまじないが流行っていた。Aちゃんも例に漏れずおまじないにハマって親におまじないの本を買ってもらっていた。その本の中には、人を呪う方法も書いてあった。喧嘩の直後で頭に血が上っていたAちゃんは、その方法を実践してしまった。
本に書かれていた方法は、紙に赤いペンで呪いたい相手の名前を書いて一週間肌身離さず身につけて、一週間経ったらビリビリに破いて捨てるといったものだった。
紙にＢちゃんの名前を書いてから、異変はじわじわと起き始めた。はじめの日、Ｂちゃんは顔色が悪そうだった。まだ腹を立てていたAちゃんはいいきみだと思っていた。次の日、Ｂちゃんは怪我をしていた。Aちゃんは頭が冷えたこともあって、次第に心配になってきた。さらにその次の日、Ｂちゃんの机の中に毒虫が大量に入っていた。ここでAちゃんは、あまりに尋常ではない様子にこれは自分の呪いのせいだと思って怖くなってしまった。
怖くなったAちゃんは、呪いをやめたいと思ったんだろうね。一週間経っていないのに紙をバラバラに破いてしまった。
次の日、Ｂちゃんは学校に来なかった。交通事故にあってバラバラになったんだって。
可哀想にね、始まりは他愛のない悪意のはずだったんだ。それがたまたま名前を使った強力な呪法にたどり着いてしまった。

こんな風にね、名前っていうものはその人を強力に縛る呪なんだよ。だから、得体の知れないものに簡単に名前を教えてはいけないよ。
ねぇ、ななしさん？