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第九話 インコ

あるところに女の子がいた。女の子はクラスで一番可愛くて大人っぽくてみんなの憧れだった。
その女の子がね、ある日水死体になって見つかった。死体は見る影もないくらいにぼろぼろで、いつ死んだのかもわからないくらいだった。
最初、警察は自殺で片付けようとしたんだけど、それは声によって防がれた。声。あの子が自殺なんてするはずないっていうクラスメイトの声、それと、女の子が飼ってたインコの声。
警官が女の子の部屋を捜査するとき、インコは隣の部屋に移されてたんだけど、それでも聞こえるくらいの大声で繰り返し繰り返しある男の名前を喋っていた。
最初は煩いなぁくらいにしか思われてなかったけど、警官の一人がその名前が彼女の通っていた学校の体育の先生だってことに気づいた。
インコが覚えるくらいだから、女の子は何度もその名前を口にしていたのでは?という発想に至ってからその先生について調べていくと、女の子と付き合っていたという情報がぽろぽろと現れ出した。
結局のところ、先生にとっては遊びだったけど、女の子は本気になってしまって、先生が離婚しないなら自分に手を出したことを公表するなんてことを言い始めるようになったから煩わしくて殺したって真相だった。
その話はクラス中を駆け巡り、インコやるじゃんせんせーサイテーなんてわいわい騒ぐネタにされた。
同情と悲しみと奇妙な事件への好奇心。
けど、特に女の子と仲が良かった友達だけは冷水をかけられたような心地になっていた。なにせ女の子は日頃、自分の飼ってるインコはおしゃべりは全然できないけどそれでも可愛いんだって話していたからだ。

友達たちが線香をあげに行った彼女の家で、そのインコは喋り続けていた。誰が教えたわけでもないのに。新しい言葉を次々と。

「さとし、さとし、どうして、さとし、だいすき、ずっといっしょ」
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