第八話 声だけの神様
これは私の友達から聞いた話。
友達のまた友達に霊感があるわけじゃなかったけど、たまに自分の名前を呼ぶ声が聞こえる子がいたんだってーーー
×××××××
その声が最初に聞こえたのは信号を渡っている時。後ろから誰かに名前を呼ばれた。おーーい、××ーーー。と。男とも女ともつかない抑揚のない聴き慣れない声だったから、誰だろう?と思って振り向いたけど、誰もいなかった。おかしいなと思って少しキョロキョロして、それでも誰もいなかったから前に向き直したら、目の前を物凄い速さで車が通り過ぎていった。
だからあの声は自分を助けてくれたんだって思った。不思議なことが大好きだった私は、子供特有の突飛な妄想でその声の主は自分の守り神だと思った。声だけの神様。
その声は度々私を助けてくれた。事故に遭いそうになったとき、山で迷ったとき、工事現場でうえから物が落ちてきたとき……全部その声のおかげで大怪我をせずにすんだ。
今、私はビルの屋上にいる。仕事をクビになってそのせいで婚約も破棄された私は、果たして生きている価値はあるのだろうか。自問していたその時
おーーーい、おーーーい、××ーーー。
久しぶりにあの声が聞こえた。フェンスの外から私を呼んでいる。あぁ嬉しい!そっちを選べばいいのね!最期まで私を導いてくれるなんて、やっぱりあなたは私の守神様だったのね!そして私はーーーー
×××××××
その子は最後に友達に電話をかけて、呼ばれてるから逝くねと言ったの。その後ろではたしかに声が聞こえていた。おーーい、おーーい、はやくこい……はやくしろ!こっちにこい!それはだんだんと怒鳴るような声になっていった。友達は何度も何度も止めたけど、その子はとても嬉しそうに飛び降りちゃったんだって。
友達は泣きながら止められなかったって、どうして今まで助けてくれていた声があの子を殺してしまったのって言ってたけど、私はその話を聞いて、頭の片隅の冷静な部分で少し違う感想を抱いた。
その死んでしまった子はずっと声に助けられたっていってたけど、振り向いてキョロキョロして向き直すくらいの時間があったなら、車が突っ込んでくる前に通り過ぎれたんじゃないかって。その声は、助けようとしたんじゃなくてむしろその場に留めようとーーーーー
………なんてね。これは私のただの邪推。でも、怪異は怪異。不用意に信用したらいけないよってね。
カム菜
友達のまた友達に霊感があるわけじゃなかったけど、たまに自分の名前を呼ぶ声が聞こえる子がいたんだってーーー
×××××××
その声が最初に聞こえたのは信号を渡っている時。後ろから誰かに名前を呼ばれた。おーーい、××ーーー。と。男とも女ともつかない抑揚のない聴き慣れない声だったから、誰だろう?と思って振り向いたけど、誰もいなかった。おかしいなと思って少しキョロキョロして、それでも誰もいなかったから前に向き直したら、目の前を物凄い速さで車が通り過ぎていった。
だからあの声は自分を助けてくれたんだって思った。不思議なことが大好きだった私は、子供特有の突飛な妄想でその声の主は自分の守り神だと思った。声だけの神様。
その声は度々私を助けてくれた。事故に遭いそうになったとき、山で迷ったとき、工事現場でうえから物が落ちてきたとき……全部その声のおかげで大怪我をせずにすんだ。
今、私はビルの屋上にいる。仕事をクビになってそのせいで婚約も破棄された私は、果たして生きている価値はあるのだろうか。自問していたその時
おーーーい、おーーーい、××ーーー。
久しぶりにあの声が聞こえた。フェンスの外から私を呼んでいる。あぁ嬉しい!そっちを選べばいいのね!最期まで私を導いてくれるなんて、やっぱりあなたは私の守神様だったのね!そして私はーーーー
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その子は最後に友達に電話をかけて、呼ばれてるから逝くねと言ったの。その後ろではたしかに声が聞こえていた。おーーい、おーーい、はやくこい……はやくしろ!こっちにこい!それはだんだんと怒鳴るような声になっていった。友達は何度も何度も止めたけど、その子はとても嬉しそうに飛び降りちゃったんだって。
友達は泣きながら止められなかったって、どうして今まで助けてくれていた声があの子を殺してしまったのって言ってたけど、私はその話を聞いて、頭の片隅の冷静な部分で少し違う感想を抱いた。
その死んでしまった子はずっと声に助けられたっていってたけど、振り向いてキョロキョロして向き直すくらいの時間があったなら、車が突っ込んでくる前に通り過ぎれたんじゃないかって。その声は、助けようとしたんじゃなくてむしろその場に留めようとーーーーー
………なんてね。これは私のただの邪推。でも、怪異は怪異。不用意に信用したらいけないよってね。
カム菜