姉弟波乱組
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──祭り当日。
日が傾いた頃から始まった祭りは大勢の人達で賑わっていた。将軍様も出向いてる今回の祭りは真選組総出での警備をしているが、今のところ事件など起きず至って平和だ。
そして祭りも終盤にかかった今、気を引き締めていたはずの綾日は出店の誘惑に勝つことができず、周りを見渡しワクワクしていた。
「まったく…高杉の野郎が潜んでるかもってのに呑気な奴でさァ」
「美味そうにイカ焼き食ってる奴に言われたくねぇよ」
「これは毒味でィ。将軍を殺めようとする怪しい店がないか調べてるんでさァ」
自分が食いたかっただけだろ、と綾日は呆れたが、まあ…人のこと言えないか、と自身が持つ焼きそばやたこ焼きなど入った袋を見て思った。
数日前、とある噂が屯所に舞い込んだ。
料亭で会談をしていた幕吏十数人が皆殺しにされた事件の黒幕は、攘夷浪士の中で最も危険だとされる高杉晋助の仕業だというものだ。普段、江戸にいない彼が今回の祭りを見逃すはずがない、と土方から警告されたのだ。
しかし、長時間に渡る将軍の警備に飽きた2人は、数時間前から姿を見せない一希を探すという口実で祭りを見回っていた。
「射的ですか、ちょっとやっていこうかな」
「やってやって!サービスするよ〜!」
「当てればなんでもくれるアルか?」
ふと聞き馴染みのある声に視線をやると、そこには新八と神楽がいて、これから射的をやるようだ。面白そう、と綾日は目を輝かせて沖田を引き連れたまま店へ向かうのだった。
一方その頃、沖田と綾日に探されていた一希は困った顔をしていた。
あの日以来、源外さんの手伝いができないまま今日を迎えてしまい、どうも様子が気になった僕はこっそり仕事を抜けて見に行った。するとそこにはお手伝いをしてる万事屋がいて、安心した僕はバレない内に踵を返した。
しかし、持ち場へ戻ろうと人混みを歩いてたら、店に難癖をつけるガラの悪いお兄さん達をみつけたり、酔っ払いの喧嘩を仲裁したりしてなかなか戻れなくて参ってた訳ッスが…。
「うぅ…先生どこ…?」
どうやら迷子みたいッスね。
目に涙をいっぱい溜めて小さく呟く女の子を怖がらせないように、しゃがんで目線を合わせるとその子の手を優しく握る。
「大丈夫ッスか?」
「…だぁれ?」
「僕はお巡りさんッス。今日は誰かと一緒に来たんスか?」
「…うん、先生とね、お兄ちゃんたちと一緒に来たの。先生優しいから、私たちがね、わがまま言って…それで今日お祭りに連れてきてくれたの」
鼻をすすりながらも、はぐれるまでの経緯を少しずつ話してくれる女の子に相槌を打つ。子供が一緒なら「先生」もきっと人混みの中に探しに行けず困っているだろう。
どうしたものかと考えていると、女の子の不安を晴らすかのように漆黒の空に大輪の華が音を立てて咲いた。
「わあ、綺麗…!」
「おお!江戸一番のからくり技師の見世物だ!」
近くの客の声に、花火を打ち上げるカラクリロボットの三郎と源外がいるステージへと視線を向ける。周りも歓声を上げながら、見事な打ち上げ花火に足を止め始めた。
今なら開けた場所に移動ができそうだ。
「少しあっちまで行けるッスか?」
「うん!」
綺麗な花火で少し元気が出たのか、はっきりと返事をしてくれた女の子の手を引いて歩いていく。すると、近くの広場から「先生!綺麗だよ!」と賑やかな子供たちの声が聞こえた。
女の子がさっき言っていた先生と同じ人だと願いながらそこへ向かってみる。
「あっ、先生だ!」
一希が確かめる暇もなく、女の子は手を離して一目散に走っていく。あ、と言葉を零しながら後ろをついて行くと、女の子と合流できて安堵した先生が頭を下げる。
「うちの子がお世話になったようで…ありがとうございます」
「いえいえ!見つかってよかったッス」
少し強面だが礼儀正しい先生に笑顔で返すと、どこからかわずかに、3日前と同じ気配を感じ取った。嫌な予感がした一希は周りを見渡す。
「(…まさか、高杉が近くに?)」
「どうかされましたか?」
「あ、いや」
険しい顔をしてしまったのか先生が不思議そうに問う。一希が少し言葉を詰まらせてると迷子だった子が彼の袖を引っ張った。
「お兄ちゃん本当にありがとう!」
「どういたしまして。もうはぐれちゃダメッスよ?」
「うん!」
「じゃあ、皆さんお気をつけて!」
急ぎめで先生たちにそう別れを告げると、まだ花火を見上げている人の邪魔にならぬようスルスルと間を抜けて行く。
──ドォン!!!
すると、先程までの打ち上げとは違った轟音が背後から突き刺さる。慌ててステージへ視線を戻したが、既に周りは白い煙が立ち込めていた。
「源外さん…!!」
結局、彼の復讐は行われるのか、と悔しさに下唇を噛む。ただこれ以上の被害は出さまいとまだ近くに感じる殺気の元へ駆け出したのだった。
→
日が傾いた頃から始まった祭りは大勢の人達で賑わっていた。将軍様も出向いてる今回の祭りは真選組総出での警備をしているが、今のところ事件など起きず至って平和だ。
そして祭りも終盤にかかった今、気を引き締めていたはずの綾日は出店の誘惑に勝つことができず、周りを見渡しワクワクしていた。
「まったく…高杉の野郎が潜んでるかもってのに呑気な奴でさァ」
「美味そうにイカ焼き食ってる奴に言われたくねぇよ」
「これは毒味でィ。将軍を殺めようとする怪しい店がないか調べてるんでさァ」
自分が食いたかっただけだろ、と綾日は呆れたが、まあ…人のこと言えないか、と自身が持つ焼きそばやたこ焼きなど入った袋を見て思った。
数日前、とある噂が屯所に舞い込んだ。
料亭で会談をしていた幕吏十数人が皆殺しにされた事件の黒幕は、攘夷浪士の中で最も危険だとされる高杉晋助の仕業だというものだ。普段、江戸にいない彼が今回の祭りを見逃すはずがない、と土方から警告されたのだ。
しかし、長時間に渡る将軍の警備に飽きた2人は、数時間前から姿を見せない一希を探すという口実で祭りを見回っていた。
「射的ですか、ちょっとやっていこうかな」
「やってやって!サービスするよ〜!」
「当てればなんでもくれるアルか?」
ふと聞き馴染みのある声に視線をやると、そこには新八と神楽がいて、これから射的をやるようだ。面白そう、と綾日は目を輝かせて沖田を引き連れたまま店へ向かうのだった。
一方その頃、沖田と綾日に探されていた一希は困った顔をしていた。
あの日以来、源外さんの手伝いができないまま今日を迎えてしまい、どうも様子が気になった僕はこっそり仕事を抜けて見に行った。するとそこにはお手伝いをしてる万事屋がいて、安心した僕はバレない内に踵を返した。
しかし、持ち場へ戻ろうと人混みを歩いてたら、店に難癖をつけるガラの悪いお兄さん達をみつけたり、酔っ払いの喧嘩を仲裁したりしてなかなか戻れなくて参ってた訳ッスが…。
「うぅ…先生どこ…?」
どうやら迷子みたいッスね。
目に涙をいっぱい溜めて小さく呟く女の子を怖がらせないように、しゃがんで目線を合わせるとその子の手を優しく握る。
「大丈夫ッスか?」
「…だぁれ?」
「僕はお巡りさんッス。今日は誰かと一緒に来たんスか?」
「…うん、先生とね、お兄ちゃんたちと一緒に来たの。先生優しいから、私たちがね、わがまま言って…それで今日お祭りに連れてきてくれたの」
鼻をすすりながらも、はぐれるまでの経緯を少しずつ話してくれる女の子に相槌を打つ。子供が一緒なら「先生」もきっと人混みの中に探しに行けず困っているだろう。
どうしたものかと考えていると、女の子の不安を晴らすかのように漆黒の空に大輪の華が音を立てて咲いた。
「わあ、綺麗…!」
「おお!江戸一番のからくり技師の見世物だ!」
近くの客の声に、花火を打ち上げるカラクリロボットの三郎と源外がいるステージへと視線を向ける。周りも歓声を上げながら、見事な打ち上げ花火に足を止め始めた。
今なら開けた場所に移動ができそうだ。
「少しあっちまで行けるッスか?」
「うん!」
綺麗な花火で少し元気が出たのか、はっきりと返事をしてくれた女の子の手を引いて歩いていく。すると、近くの広場から「先生!綺麗だよ!」と賑やかな子供たちの声が聞こえた。
女の子がさっき言っていた先生と同じ人だと願いながらそこへ向かってみる。
「あっ、先生だ!」
一希が確かめる暇もなく、女の子は手を離して一目散に走っていく。あ、と言葉を零しながら後ろをついて行くと、女の子と合流できて安堵した先生が頭を下げる。
「うちの子がお世話になったようで…ありがとうございます」
「いえいえ!見つかってよかったッス」
少し強面だが礼儀正しい先生に笑顔で返すと、どこからかわずかに、3日前と同じ気配を感じ取った。嫌な予感がした一希は周りを見渡す。
「(…まさか、高杉が近くに?)」
「どうかされましたか?」
「あ、いや」
険しい顔をしてしまったのか先生が不思議そうに問う。一希が少し言葉を詰まらせてると迷子だった子が彼の袖を引っ張った。
「お兄ちゃん本当にありがとう!」
「どういたしまして。もうはぐれちゃダメッスよ?」
「うん!」
「じゃあ、皆さんお気をつけて!」
急ぎめで先生たちにそう別れを告げると、まだ花火を見上げている人の邪魔にならぬようスルスルと間を抜けて行く。
──ドォン!!!
すると、先程までの打ち上げとは違った轟音が背後から突き刺さる。慌ててステージへ視線を戻したが、既に周りは白い煙が立ち込めていた。
「源外さん…!!」
結局、彼の復讐は行われるのか、と悔しさに下唇を噛む。ただこれ以上の被害は出さまいとまだ近くに感じる殺気の元へ駆け出したのだった。
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