姉弟波乱組
名前
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隊士として生活を始めてまだ2ヶ月しか経ってないのに、すっかり慣れてしまった。
今日も姉貴はむさ苦しい男達とバカ騒ぎしている──…僕はそれがとても嬉しく思えたのだ。
ふわぁ、と大江戸の街中で欠伸をする。
この世界に来てから誰かさんの影響で朝稽古をサボりつつあった僕は、久しぶりに早朝に目が覚めた。そして、顔を洗っていると、姉貴に見つかってしまいそのまま道場へ連れていかれたのだった。
そのためか、まだ昼を過ぎたばかりだというのに眠くて眠くて仕方がない。しかし、せっかくの非番なのに昼寝をするのはもったいない気がして、行く宛てもなくフラフラと歩いていた。
「オイィィィ!!三郎の腕を返せェェェ!!」
ふと聞き覚えのある声がしたので近くの土手へ足を運ぶ。すると、銀さんと新八、そして何故かカラクリロボットの片腕を担いだ神楽が河川敷から去っていく姿を見つける。
どうやら先程の声は、カラクリの山の前に立ち尽くしている平賀源外のもので間違いなかったようだ。独り残された彼は、無惨な姿のカラクリを修理をし始めた。
隊士になって、真剣のみならず火器を扱うようになった一希はそのカラクリに興味が沸いた。元々行く宛てもなかったのだ、少し軽い足取りで源外へ近づく。
「面白そうなカラクリッスね」
黙々と作業をする源外に声をかけると、彼はまだ幼さの残る顔立ちの一希を見て訝しむ。
一希は源外に人懐っこい笑顔を向けると、カラクリに近づき破損している部分に触れる。
「おい、餓鬼が勝手に触るんじゃねぇ!」
「えー、僕もお手伝いしたいッス」
「知らねぇ餓鬼に大事なもの触らせられる訳ねーだろ、さっさと帰れ」
「まあ、祭の見世物は幕府からの命令だし、失敗できないッスもんね」
「何で、お前がそれを」
一希の返答に驚いた源外に、いっけね、と眉を下げていると、後ろに誰かの気配を感じて反射的に振り返る。
「よう、お前さんが平賀源外か?」
そこには片手に煙管を持ち、左目には包帯、蝶が描かれた派手な着流し、そして、網傘を深く被っている男が立っていた。思わぬ彼の登場に一希はただただ驚く。
「三郎ってアンタの息子かい?」
唐突な男の問いに黙っていると、その男は煙管を吹かしながらもう一つ尋ねてきた。「三郎」という名にピクリと反応する源外だが、何もなかったようにまたカラクリの修理に戻ってしまった。
「…さァ、知らねぇな」
「昔、俺が率いてた義勇軍にカラクリに滅法強い奴がいたんだが……俺は戦 しに来たんじゃねぇ、親子喧嘩しに来たんだ、て親父の話ばかりするおかしな奴でよ」
男は源外の態度に気にもとめず話し続ける。
傍で様子を見ていた一希は、間違いなくこの男が過激派攘夷浪士の高杉晋助だと確信した。
「憎くねぇか?天人から国を守らんと戦ったのに、残酷にも幕府はいとも簡単に侍どもを斬り捨てやがった」
高杉の発言から推測するにきっと源外と喧嘩別れした息子は幕府によって粛清されたのだろう。息子の晒し首をみた源外が何を思ったかは想像にかたくない。
しかし、だからといって彼に復讐をけしかけてもいい理由にはならない、と今まで黙っていた一希が2人に割って入る。
「今時、敵討ちなんて流行らないッスよ」
「ほう、それァテメーの本心か?」
「…どうゆうことッスか」
「テメーの目は一度でも世界を憎んで、恨んだことのある奴の目だ。心当たりあるんじゃねぇのか」
フッと口角を上げた高杉の言葉に、数年前の綾日の姿が脳裏によぎる。それは、今の元気な彼女とは真逆の、心を閉ざし引きこもった綾日の姿だ。
確かに、そんな彼女を見た時、姉を追い詰めた人達を、世界を憎み恨んだ。
「…でも、それはこの世界 じゃないッス」
含みのある一希の返答に、ククッ、と高杉は喉を鳴らしながら笑う。そして、目を細めたまま一希の瞳を見て、面白い奴だ、と心の中で呟くと、煙管をもう一度ふかして踵を返した。
振り向き様に源外へ「精々、楽しませてくれや」と一言だけ残して去って行ってしまった。高杉が見えなくなった頃、源外はようやく修理をする手を止め、そして深い溜め息をつく。
「どいつもこいつも…、こっちは暇じゃねぇってのに」
「なら、やっぱり僕が手伝うッスよ!」
頭を抱えた源外に無邪気にそう言うと、追い払うのが面倒なのか、猫の手も借りたい状況だからか、諦めたように息を吐くとスパナを一希に投げ渡す。
「余計なことだけはするんじゃねぇぞ」
「もちろんッス!」
受け取ったスパナを片手に、嬉しそうに返事した一希が昔の息子の姿が重なり、源外はほんの少しだけ顔を歪めた。それを振り払うように頭をガシガシと掻くと、大量のカラクリロボットの修理に取りかかる。
口調は荒いものの的確に指示を出す源外に、機械の面白さを知った一希は夜遅くまで手伝うのだった。
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今日も姉貴はむさ苦しい男達とバカ騒ぎしている──…僕はそれがとても嬉しく思えたのだ。
絡繰×御祭
事件は悪い奴ではなくはしゃぎ過ぎた奴が起こすのだ
事件は悪い奴ではなくはしゃぎ過ぎた奴が起こすのだ
ふわぁ、と大江戸の街中で欠伸をする。
この世界に来てから誰かさんの影響で朝稽古をサボりつつあった僕は、久しぶりに早朝に目が覚めた。そして、顔を洗っていると、姉貴に見つかってしまいそのまま道場へ連れていかれたのだった。
そのためか、まだ昼を過ぎたばかりだというのに眠くて眠くて仕方がない。しかし、せっかくの非番なのに昼寝をするのはもったいない気がして、行く宛てもなくフラフラと歩いていた。
「オイィィィ!!三郎の腕を返せェェェ!!」
ふと聞き覚えのある声がしたので近くの土手へ足を運ぶ。すると、銀さんと新八、そして何故かカラクリロボットの片腕を担いだ神楽が河川敷から去っていく姿を見つける。
どうやら先程の声は、カラクリの山の前に立ち尽くしている平賀源外のもので間違いなかったようだ。独り残された彼は、無惨な姿のカラクリを修理をし始めた。
隊士になって、真剣のみならず火器を扱うようになった一希はそのカラクリに興味が沸いた。元々行く宛てもなかったのだ、少し軽い足取りで源外へ近づく。
「面白そうなカラクリッスね」
黙々と作業をする源外に声をかけると、彼はまだ幼さの残る顔立ちの一希を見て訝しむ。
一希は源外に人懐っこい笑顔を向けると、カラクリに近づき破損している部分に触れる。
「おい、餓鬼が勝手に触るんじゃねぇ!」
「えー、僕もお手伝いしたいッス」
「知らねぇ餓鬼に大事なもの触らせられる訳ねーだろ、さっさと帰れ」
「まあ、祭の見世物は幕府からの命令だし、失敗できないッスもんね」
「何で、お前がそれを」
一希の返答に驚いた源外に、いっけね、と眉を下げていると、後ろに誰かの気配を感じて反射的に振り返る。
「よう、お前さんが平賀源外か?」
そこには片手に煙管を持ち、左目には包帯、蝶が描かれた派手な着流し、そして、網傘を深く被っている男が立っていた。思わぬ彼の登場に一希はただただ驚く。
「三郎ってアンタの息子かい?」
唐突な男の問いに黙っていると、その男は煙管を吹かしながらもう一つ尋ねてきた。「三郎」という名にピクリと反応する源外だが、何もなかったようにまたカラクリの修理に戻ってしまった。
「…さァ、知らねぇな」
「昔、俺が率いてた義勇軍にカラクリに滅法強い奴がいたんだが……俺は
男は源外の態度に気にもとめず話し続ける。
傍で様子を見ていた一希は、間違いなくこの男が過激派攘夷浪士の高杉晋助だと確信した。
「憎くねぇか?天人から国を守らんと戦ったのに、残酷にも幕府はいとも簡単に侍どもを斬り捨てやがった」
高杉の発言から推測するにきっと源外と喧嘩別れした息子は幕府によって粛清されたのだろう。息子の晒し首をみた源外が何を思ったかは想像にかたくない。
しかし、だからといって彼に復讐をけしかけてもいい理由にはならない、と今まで黙っていた一希が2人に割って入る。
「今時、敵討ちなんて流行らないッスよ」
「ほう、それァテメーの本心か?」
「…どうゆうことッスか」
「テメーの目は一度でも世界を憎んで、恨んだことのある奴の目だ。心当たりあるんじゃねぇのか」
フッと口角を上げた高杉の言葉に、数年前の綾日の姿が脳裏によぎる。それは、今の元気な彼女とは真逆の、心を閉ざし引きこもった綾日の姿だ。
確かに、そんな彼女を見た時、姉を追い詰めた人達を、世界を憎み恨んだ。
「…でも、それは
含みのある一希の返答に、ククッ、と高杉は喉を鳴らしながら笑う。そして、目を細めたまま一希の瞳を見て、面白い奴だ、と心の中で呟くと、煙管をもう一度ふかして踵を返した。
振り向き様に源外へ「精々、楽しませてくれや」と一言だけ残して去って行ってしまった。高杉が見えなくなった頃、源外はようやく修理をする手を止め、そして深い溜め息をつく。
「どいつもこいつも…、こっちは暇じゃねぇってのに」
「なら、やっぱり僕が手伝うッスよ!」
頭を抱えた源外に無邪気にそう言うと、追い払うのが面倒なのか、猫の手も借りたい状況だからか、諦めたように息を吐くとスパナを一希に投げ渡す。
「余計なことだけはするんじゃねぇぞ」
「もちろんッス!」
受け取ったスパナを片手に、嬉しそうに返事した一希が昔の息子の姿が重なり、源外はほんの少しだけ顔を歪めた。それを振り払うように頭をガシガシと掻くと、大量のカラクリロボットの修理に取りかかる。
口調は荒いものの的確に指示を出す源外に、機械の面白さを知った一希は夜遅くまで手伝うのだった。
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