姉弟波乱組
名前
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「さァ、はったはった!丁か半か?」
「丁!」
「じゃあ、私も丁で」
顔には傷、肩には刺青がある強面な壺振りを目の前に臆することなく神楽と綾日は声を揃えて返事する。そよ姫も2人に続くように丁を選ぶ。
周りにも同じく身体も顔も厳つい強面な客たちがいて、彼らも丁か半か大声で返している。
「ピンゾロの丁!」
壺振りが笊を上に上げるとそこには1の目のサイコロが2つ並んでいた。外してしまった客たちは叫びながら頭を抱えた。そんな客を横目に勝った彼女たちはたくさんの木札を交換してその場を後にする。
「わあ、ここが駄菓子屋というのですね!可愛らしいお菓子がたくさん!」
先程、手に入れたお金を片手に昔ながらの駄菓子屋へ来た綾日たち。何もかも初めてなそよ姫は目をキラキラさせてお菓子を選んでいる。
紙袋いっぱいの駄菓子を抱えながら、神楽が再びかぶき町を案内する。
「…あ、プリクラ?」
パチンコ屋に行ったり、池で河童を釣ったりした後、町中を歩いていると、外装はもちろん木造の長屋ではあるが、自分の世界でもあったゲームセンターの入口近くにあるぷりんと倶楽部と書かれた機械を見つける。
不意に呟いた綾日の声にそよ姫が興味を示した。
「これはどのように使うのですか?」
「せっかくだから1枚撮るアル!」
「そうだな。おれも久々だな〜」
中へ入ると見覚えのある機械と同じ仕様で、神楽と綾日でそよ姫に説明しながら操作していく。何度か撮った後に、頬を両手で後ろに伸ばした変顔まで撮った。
「これ最高アル!」
「記念に何か書こうぜ」
変顔の写真が気に入ったのか落書きできる画面でペンを走らせる。
「かぶき町の女王と姫…っと」
「後はかぶき町の騎士って書くヨロシ!」
「え、それっておれのこと?」
「いいですね、ピッタリだと思います!」
きゃっきゃっと女の子らしく騒ぎながら落書きを済まして印刷をする。3等分に分けると早速神楽は自身の傘の柄に1枚貼り付けた。
そして、近くにあった団子屋で一休みする。
「スゴいですね〜。女王サンは私より若いのに色んなこと知ってるんですね」
「まーね。あとは一杯引っかけて『らぶほてる』になだれ込むのが今時の『やんぐ』ヨ。まあ、全部 銀ちゃんに聞いた話だけど」
神楽の言葉に綾日は飲みかけていたお茶を吹き出しそうになる。そして、今度会った時に一発殴って叱らねば、とそう固く決心した。
「女王サンはいいですね、自由で」
少し視線を落としたそよ姫はポツリと零した。
「私、城からほとんど出たことがないから、友達もいなくて外のことも何も分からない。私にできることは遠くの街を眺めて想いを馳せるだけ…」
町娘のように自由に遊び、自由に生きたい、そう考えていたら城から飛び出していた、と言うそよ姫の気持ちを全て理解できる訳ではないけど、寂しそうな顔と声にまた心が締め付けられる。
「でも、最初から1日だけって決めていた。私が居なくなったら色んな人に迷惑がかかるもの…」
その言葉を聞いて綾日はようやく、きっと真選組が探しているのでは、と気が付いた。
それと同時に見慣れた黒い制服が目の前に現れる。
「その通りですよ。さァ、帰りましょう」
綾日の予想通りそよ姫を探していた土方が声をかけると、そよ姫は抵抗することもなくスッと立ち上がる。
しかし、帰るのを阻むように神楽と綾日は彼女の手を引いた。
「何してんだ、テメー」
思わぬ2人の行動に訝しんでいると、神楽はニタリと笑い、咥えていた団子の串を勢いよく土方へ吹き飛ばす。
「姫、少し失礼します…!」
土方は咄嗟にそれを腕で弾くが、その隙に綾日はそよ姫を強く引き寄せ、お姫様抱っこをして神楽に引かれるまま走り出した。
「確保!!」
逃げた方へ土方が号令をかけると角からパトカーが出てきて、周りに待機していた隊士達も神楽と綾日に向かってくる。
「ぬわああああ!!!!!」
「えっ?!うわああああああ!?!!」
神楽は、そよ姫を抱えた綾日を担ぎ、パトカーを踏み台に、高く飛び上がって建物の上へと逃げていく。
「2人抱えて屋根に飛びやがったぞ!?」
「何者だアイツ?!」
「つーか、綾日もいなかったか?!」
「ありゃ…万事屋のとこのチャイナ娘じゃないのか?何故姫と綾日ちゃんと」
目の前で見た隊士達が口々に言っていると、パトカーから出てきた近藤は目元に手を添え、あの3人が一緒ということに疑問を持つ。
しかし、同じくパトカーから出てきた沖田は近藤の疑問に さァ、と短く返すとガチャとバズーカを取り出した。
「ちょっとォ?!総悟くん、何やってんの!物騒なモン出して!!」
「あの娘には花見の時の借りがあるもんで」
「待て!姫に当たったらどうするつもりだァ!!」
「そんなヘマはしねーや。俺は昔スナイパーというアダ名で呼ばれていたらいいのにな〜」
「オイィィィ!!ただの願望じゃねぇかァ!!!」
「夢を掴んだ人より夢を追う人の方が時に力を発揮するもんスよ!僕も加勢するッス!!」
「一希君まで!?あっちには綾日ちゃんもいるんだが!!」
「姉貴なら何度死んでも生き返るッス」
「自分の姉を何だと思ってんるんだァ?!」
どうしても借りを返したい沖田とバズーカを撃ちたい一希を近藤が必死に止める。建物から一向に降りてこない3人に土方が声を上げる。
「チャイナ娘、桜海も出てこい!!お前らがどうやって姫様と知り合ったが知らないが、そのお方はこの国の大切な人だ!これ以上俺たちの邪魔するならお前らもしょっぴくぞ!!」
「姉貴〜!流石に前科持ちは僕嫌ッスよ!!」
土方と渋々バズーカを手放した一希の声に屋上の物陰に隠れているそよ姫の顔が不安気になっていく。綾日もこのまま逃げ切れるとは思わないがこのまま帰るのは癪だった。
「…女王サン、騎士サン、もういいです」
「なんで?自由になりたくないアルか?私、自由にしてあげるヨ」
「自由にはなりたいけど、これ以上女王サンや騎士サンに迷惑は……」
「迷惑じゃない。約束しただろ、今日1日友達だって」
「そうネ。友達助けるのに理由いらない、それが江戸っ子の心意気アル!まだまだ楽しいこと教えてあげるヨ」
微笑みながら話す神楽と綾日を見つめ返すとそよ姫はゆっくり立ち上がる。
「そう、私たち友達です。でも、だからこそ迷惑かけたくないんです」
そう言い、立ち上がると彼女は深々と頭を下げる。
「ホントにありがとうございました。たった半日だったけれど普通の女の子になれたみたいで楽しかった」
それじゃ、と立ち去るそよ姫に神楽が叫ぶ。
「ズルいヨ!自分から約束しておいて破るアルか!私もっと遊びたいネ!そよちゃんともっと仲良くなりたい!ズルいヨ!」
「そうです、私ズルいんです。だから最後にもう一個ズルさせてください」
1度立ち止まると神楽と綾日に振り返る。
「1日なんて言ったけど、ずっと友達でいてね」
それだけ言うと本当に彼女は真選組の元へ帰ってしまう。またいつか3人で会えることを祈って綾日はプリクラを優しく握り締めたのだった。
To be continue.
20.12.27.
「丁!」
「じゃあ、私も丁で」
顔には傷、肩には刺青がある強面な壺振りを目の前に臆することなく神楽と綾日は声を揃えて返事する。そよ姫も2人に続くように丁を選ぶ。
周りにも同じく身体も顔も厳つい強面な客たちがいて、彼らも丁か半か大声で返している。
「ピンゾロの丁!」
壺振りが笊を上に上げるとそこには1の目のサイコロが2つ並んでいた。外してしまった客たちは叫びながら頭を抱えた。そんな客を横目に勝った彼女たちはたくさんの木札を交換してその場を後にする。
「わあ、ここが駄菓子屋というのですね!可愛らしいお菓子がたくさん!」
先程、手に入れたお金を片手に昔ながらの駄菓子屋へ来た綾日たち。何もかも初めてなそよ姫は目をキラキラさせてお菓子を選んでいる。
紙袋いっぱいの駄菓子を抱えながら、神楽が再びかぶき町を案内する。
「…あ、プリクラ?」
パチンコ屋に行ったり、池で河童を釣ったりした後、町中を歩いていると、外装はもちろん木造の長屋ではあるが、自分の世界でもあったゲームセンターの入口近くにあるぷりんと倶楽部と書かれた機械を見つける。
不意に呟いた綾日の声にそよ姫が興味を示した。
「これはどのように使うのですか?」
「せっかくだから1枚撮るアル!」
「そうだな。おれも久々だな〜」
中へ入ると見覚えのある機械と同じ仕様で、神楽と綾日でそよ姫に説明しながら操作していく。何度か撮った後に、頬を両手で後ろに伸ばした変顔まで撮った。
「これ最高アル!」
「記念に何か書こうぜ」
変顔の写真が気に入ったのか落書きできる画面でペンを走らせる。
「かぶき町の女王と姫…っと」
「後はかぶき町の騎士って書くヨロシ!」
「え、それっておれのこと?」
「いいですね、ピッタリだと思います!」
きゃっきゃっと女の子らしく騒ぎながら落書きを済まして印刷をする。3等分に分けると早速神楽は自身の傘の柄に1枚貼り付けた。
そして、近くにあった団子屋で一休みする。
「スゴいですね〜。女王サンは私より若いのに色んなこと知ってるんですね」
「まーね。あとは一杯引っかけて『らぶほてる』になだれ込むのが今時の『やんぐ』ヨ。まあ、全部 銀ちゃんに聞いた話だけど」
神楽の言葉に綾日は飲みかけていたお茶を吹き出しそうになる。そして、今度会った時に一発殴って叱らねば、とそう固く決心した。
「女王サンはいいですね、自由で」
少し視線を落としたそよ姫はポツリと零した。
「私、城からほとんど出たことがないから、友達もいなくて外のことも何も分からない。私にできることは遠くの街を眺めて想いを馳せるだけ…」
町娘のように自由に遊び、自由に生きたい、そう考えていたら城から飛び出していた、と言うそよ姫の気持ちを全て理解できる訳ではないけど、寂しそうな顔と声にまた心が締め付けられる。
「でも、最初から1日だけって決めていた。私が居なくなったら色んな人に迷惑がかかるもの…」
その言葉を聞いて綾日はようやく、きっと真選組が探しているのでは、と気が付いた。
それと同時に見慣れた黒い制服が目の前に現れる。
「その通りですよ。さァ、帰りましょう」
綾日の予想通りそよ姫を探していた土方が声をかけると、そよ姫は抵抗することもなくスッと立ち上がる。
しかし、帰るのを阻むように神楽と綾日は彼女の手を引いた。
「何してんだ、テメー」
思わぬ2人の行動に訝しんでいると、神楽はニタリと笑い、咥えていた団子の串を勢いよく土方へ吹き飛ばす。
「姫、少し失礼します…!」
土方は咄嗟にそれを腕で弾くが、その隙に綾日はそよ姫を強く引き寄せ、お姫様抱っこをして神楽に引かれるまま走り出した。
「確保!!」
逃げた方へ土方が号令をかけると角からパトカーが出てきて、周りに待機していた隊士達も神楽と綾日に向かってくる。
「ぬわああああ!!!!!」
「えっ?!うわああああああ!?!!」
神楽は、そよ姫を抱えた綾日を担ぎ、パトカーを踏み台に、高く飛び上がって建物の上へと逃げていく。
「2人抱えて屋根に飛びやがったぞ!?」
「何者だアイツ?!」
「つーか、綾日もいなかったか?!」
「ありゃ…万事屋のとこのチャイナ娘じゃないのか?何故姫と綾日ちゃんと」
目の前で見た隊士達が口々に言っていると、パトカーから出てきた近藤は目元に手を添え、あの3人が一緒ということに疑問を持つ。
しかし、同じくパトカーから出てきた沖田は近藤の疑問に さァ、と短く返すとガチャとバズーカを取り出した。
「ちょっとォ?!総悟くん、何やってんの!物騒なモン出して!!」
「あの娘には花見の時の借りがあるもんで」
「待て!姫に当たったらどうするつもりだァ!!」
「そんなヘマはしねーや。俺は昔スナイパーというアダ名で呼ばれていたらいいのにな〜」
「オイィィィ!!ただの願望じゃねぇかァ!!!」
「夢を掴んだ人より夢を追う人の方が時に力を発揮するもんスよ!僕も加勢するッス!!」
「一希君まで!?あっちには綾日ちゃんもいるんだが!!」
「姉貴なら何度死んでも生き返るッス」
「自分の姉を何だと思ってんるんだァ?!」
どうしても借りを返したい沖田とバズーカを撃ちたい一希を近藤が必死に止める。建物から一向に降りてこない3人に土方が声を上げる。
「チャイナ娘、桜海も出てこい!!お前らがどうやって姫様と知り合ったが知らないが、そのお方はこの国の大切な人だ!これ以上俺たちの邪魔するならお前らもしょっぴくぞ!!」
「姉貴〜!流石に前科持ちは僕嫌ッスよ!!」
土方と渋々バズーカを手放した一希の声に屋上の物陰に隠れているそよ姫の顔が不安気になっていく。綾日もこのまま逃げ切れるとは思わないがこのまま帰るのは癪だった。
「…女王サン、騎士サン、もういいです」
「なんで?自由になりたくないアルか?私、自由にしてあげるヨ」
「自由にはなりたいけど、これ以上女王サンや騎士サンに迷惑は……」
「迷惑じゃない。約束しただろ、今日1日友達だって」
「そうネ。友達助けるのに理由いらない、それが江戸っ子の心意気アル!まだまだ楽しいこと教えてあげるヨ」
微笑みながら話す神楽と綾日を見つめ返すとそよ姫はゆっくり立ち上がる。
「そう、私たち友達です。でも、だからこそ迷惑かけたくないんです」
そう言い、立ち上がると彼女は深々と頭を下げる。
「ホントにありがとうございました。たった半日だったけれど普通の女の子になれたみたいで楽しかった」
それじゃ、と立ち去るそよ姫に神楽が叫ぶ。
「ズルいヨ!自分から約束しておいて破るアルか!私もっと遊びたいネ!そよちゃんともっと仲良くなりたい!ズルいヨ!」
「そうです、私ズルいんです。だから最後にもう一個ズルさせてください」
1度立ち止まると神楽と綾日に振り返る。
「1日なんて言ったけど、ずっと友達でいてね」
それだけ言うと本当に彼女は真選組の元へ帰ってしまう。またいつか3人で会えることを祈って綾日はプリクラを優しく握り締めたのだった。
To be continue.
20.12.27.