姉弟波乱組
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神楽とおれは定春に乗っかって散歩をしていた。
まさか全速力で走り回るなんて思ってなくて、しがみつくので精一杯だったなんて情けなくて言えない。
途中で降りて、よく神楽と定春が遊んでいるという公園まで歩くと男の子2人がブランコ前で突っ立ている。
「てめー見ない顔だな、どこのもんだ?」
子供には似つかわしくない言葉使いで話す男の子の奥を覗き見れば、綺麗な着物を着た女の子がブランコに姿勢よく座っていた。
「この辺の公園はなァ、かぶき町の帝王よっちゃんの縄張りなんだよ!ここで遊びたきゃドッキリマンチョコのシール3枚上納しろ 小娘!」
帝王と上納ってドラマの見すぎでは?と彼らの言葉に思わず心の中でツッコんだ
立ち退くよう威圧する男の子たちに臆することなく、聞き慣れないものについて淡々と質問をする女の子に彼らは言い返すが、どうも上納させたいシールの種類が曖昧らしい。
「いや…ゲッソリだったような気もするな」
「いやいや違うヨ。ザックリマンの間違いアル」
「ぎゃあああ!!ザックリやられたァァァ!!」
「お、お前は…!!」
帝王と呼ばれていた男の子の頭をカプリと定春が噛んだことにより彼の頭から血が溢れる。そんな彼らの後ろから見下ろすようにふんぞり返る神楽と、その横に綾日が現れる。
「ここいらのブランコはかぶき町の女王 神楽のものアル。ここで遊びたきゃ酢昆布1年分 上納するヨロシ」
「1年分って!1日辺りの摂取量が分かんねーよ!!」
「チクショー覚えてろォォォ!!!」
それは下っ端とかが吐く捨て台詞だぞ、ともう一度心の中でツッコみながら、彼らが逃げ去っていくのを見送った。
得意げな顔をして酢昆布を咥える神楽に女の子は感謝を述べた。
「いいってことヨ。それよりここにはもう近付かない方がいいアル」
「江戸の中でも危険な町だしな」
もはや自分も人の事言えないぐらい、ドラマのように名乗りもせずに去ろうとする。その時、定春に跨る神楽を見た綾日が、えっ乗るの?と少し戸惑いを隠せないでいると女の子が再び声をかける。
「待ってください。…それ何を食べてらっしゃるんですか?」
どうやら神楽の咥えてる酢昆布を初めて見たらしい。
せっかくなので少し場所を変え、3人でベンチに座り酢昆布を受け取る。
何だかんだ初めて酢昆布を食べた綾日も助けた女の子も予想外の酸味に吹き出した。
「酸っぱ!こんな酸っぱいもん?!」
「何ですかコレ、酸っぱい!じいやの脇より酸っぱい!」
「その酸っぱさがクセになるネ。きっとじいやの脇もその内クセになるアル」
「なりません!てか嫌です」
初めての体験に驚きつつも、どこか羨ましそうに酢昆布を見つめる彼女に神楽は問う。
「お嬢さん他所者アルか?この街の住人はみんなビンボ臭いけど、お嬢さんイイ匂いするネ」
「…ハイ、私あそこから来たんです」
相変わらずの神楽の毒舌っぷりに綾日は苦笑いになりつつ、女の子が指差す方へ視線をやれば、現代風の高い建物の中にそびえ立つ江戸城がある。そう、彼女はあの城の持ち主の姫様──そよ姫だ。
天人襲来後、お飾りとなった城には可哀想な侍がいると聞いた、と神楽が話すと、見栄えだけのハリボテの城なんていっそ壊れてしまえばいい、と自由を求める彼女の言葉に綾日は胸が苦しくなった。
「お嬢さん、何か困り事アルか?私何でも相談に乗るヨ。万事屋神楽とは私のことネ」
「おれは万事屋じゃねぇが、困ってる人をほっとけないんでね。おれも最後まで付き合うよ」
2人の言葉に小さく笑みを零しながら、少しだけ悩んだそよ姫は2人にお願いをした。
「今日一日、お友達になってくれますか?」
*
「あー暑い。何で俺たちの制服ってこんなカッチリしてんだ……世の中の連中はどんどん薄着になってるってのに」
まだ夏は先だと言うのにじりじり照らしつける太陽の下で土方は一人ごちる。ガゴン、と音を鳴らした自販機から缶コーヒーを取り出すと勢いよく飲む。
「おまけにこのクソ暑いのに人探しとはよ。もうどうにでもしてくれって」
「そんなに暑いなら俺が夏服作ってあげますぜ」
土方は声がした方へ振り返ろうとするが、それより先に自身の肩に向かって振り下ろされた刀に気が付き、すんでのところで躱す。
「動いちゃ危ないッスよ〜」
「そうでさァ。せっかくノースリーブにしてやろうと思ったのに」
「嘘つけェェェ!明らかに腕ごと斬り落とすつもりだったろうが!!」
「土方さんもどうです、ロッカーになれやすぜィ」
「誰が着るか!明らかに悪ふざけが生み出した産物じゃねぇーか!」
沖田と一希が開発したという、いつもの制服の袖を肩から切り落としただけのノースリーブの制服を薦められるが、土方は当然断った。
「おーい、捜査の方はどうだ?」
しかし、後ろから現れた近藤は上裸の上にそのノースリーブ制服を着ていて、その姿を見た土方は言葉を失う。
「潜伏した攘夷浪士なら目星はつくッスけど…探し人があの方じゃお手上げッスよ」
「お姫さんが何を思って家出なんざしたんだか……人間 立場が変わりゃ悩みも変わるってもんだ。俺には姫さんの悩みなんざ検討もつかねぇ」
制服についてもう言及するのを止めた土方は手がかりとして渡された写真を見ながら、近藤へ状況を伝える。
「姫さんとはいえ年頃の娘に変わりない。きっと色々あるんだろう……最近、お父さんの視線が気持ち悪いとか、お父さんの匂いが嫌いとか」
「お父さんばっかじゃねーか」
「綾日ちゃんがいたら早めに検討がついたかもしれんのだがな」
「こんな可憐な姫様とじゃ、月とすっぽんだと思うッスけどね」
「お前、自分の姉に酷い言い様だな?」
「まず江戸の街全てを正攻法で捜すなんざ無理があるんでさァ。ここはひとつパーティでも開いて姫さんを誘き出しやしょう!」
「そんな昔話みてぇな罠に引っかかるのはお前だけだ」
「大丈夫ですぜ 土方さん、パーティはパーティでもバーベキューパーティでさァ」
「スイカ割りも追加すれば完璧ッスね!」
「何が大丈夫で完璧なんだ?お前らが大丈夫か?」
一向に捜査が進みそうにないまま街中を歩いていると山崎が局長!と急いだ様子で駆けて来た。
「どうした!山崎」
「目撃情報が。どうやら姫様はかぶき町へ向かったようです」
「かぶき町?!よりによってタチの悪い……」
いつも通り、監察としての仕事を報告する山崎だが、彼も肩からバッサリ切り落とされたノースリーブ制服を着ているのを見て、土方は再び顔を引き攣らすのだった。
→
まさか全速力で走り回るなんて思ってなくて、しがみつくので精一杯だったなんて情けなくて言えない。
途中で降りて、よく神楽と定春が遊んでいるという公園まで歩くと男の子2人がブランコ前で突っ立ている。
「てめー見ない顔だな、どこのもんだ?」
子供には似つかわしくない言葉使いで話す男の子の奥を覗き見れば、綺麗な着物を着た女の子がブランコに姿勢よく座っていた。
「この辺の公園はなァ、かぶき町の帝王よっちゃんの縄張りなんだよ!ここで遊びたきゃドッキリマンチョコのシール3枚上納しろ 小娘!」
帝王と上納ってドラマの見すぎでは?と彼らの言葉に思わず心の中でツッコんだ
立ち退くよう威圧する男の子たちに臆することなく、聞き慣れないものについて淡々と質問をする女の子に彼らは言い返すが、どうも上納させたいシールの種類が曖昧らしい。
「いや…ゲッソリだったような気もするな」
「いやいや違うヨ。ザックリマンの間違いアル」
「ぎゃあああ!!ザックリやられたァァァ!!」
「お、お前は…!!」
帝王と呼ばれていた男の子の頭をカプリと定春が噛んだことにより彼の頭から血が溢れる。そんな彼らの後ろから見下ろすようにふんぞり返る神楽と、その横に綾日が現れる。
「ここいらのブランコはかぶき町の女王 神楽のものアル。ここで遊びたきゃ酢昆布1年分 上納するヨロシ」
「1年分って!1日辺りの摂取量が分かんねーよ!!」
「チクショー覚えてろォォォ!!!」
それは下っ端とかが吐く捨て台詞だぞ、ともう一度心の中でツッコみながら、彼らが逃げ去っていくのを見送った。
得意げな顔をして酢昆布を咥える神楽に女の子は感謝を述べた。
「いいってことヨ。それよりここにはもう近付かない方がいいアル」
「江戸の中でも危険な町だしな」
もはや自分も人の事言えないぐらい、ドラマのように名乗りもせずに去ろうとする。その時、定春に跨る神楽を見た綾日が、えっ乗るの?と少し戸惑いを隠せないでいると女の子が再び声をかける。
「待ってください。…それ何を食べてらっしゃるんですか?」
どうやら神楽の咥えてる酢昆布を初めて見たらしい。
せっかくなので少し場所を変え、3人でベンチに座り酢昆布を受け取る。
何だかんだ初めて酢昆布を食べた綾日も助けた女の子も予想外の酸味に吹き出した。
「酸っぱ!こんな酸っぱいもん?!」
「何ですかコレ、酸っぱい!じいやの脇より酸っぱい!」
「その酸っぱさがクセになるネ。きっとじいやの脇もその内クセになるアル」
「なりません!てか嫌です」
初めての体験に驚きつつも、どこか羨ましそうに酢昆布を見つめる彼女に神楽は問う。
「お嬢さん他所者アルか?この街の住人はみんなビンボ臭いけど、お嬢さんイイ匂いするネ」
「…ハイ、私あそこから来たんです」
相変わらずの神楽の毒舌っぷりに綾日は苦笑いになりつつ、女の子が指差す方へ視線をやれば、現代風の高い建物の中にそびえ立つ江戸城がある。そう、彼女はあの城の持ち主の姫様──そよ姫だ。
天人襲来後、お飾りとなった城には可哀想な侍がいると聞いた、と神楽が話すと、見栄えだけのハリボテの城なんていっそ壊れてしまえばいい、と自由を求める彼女の言葉に綾日は胸が苦しくなった。
「お嬢さん、何か困り事アルか?私何でも相談に乗るヨ。万事屋神楽とは私のことネ」
「おれは万事屋じゃねぇが、困ってる人をほっとけないんでね。おれも最後まで付き合うよ」
2人の言葉に小さく笑みを零しながら、少しだけ悩んだそよ姫は2人にお願いをした。
「今日一日、お友達になってくれますか?」
*
「あー暑い。何で俺たちの制服ってこんなカッチリしてんだ……世の中の連中はどんどん薄着になってるってのに」
まだ夏は先だと言うのにじりじり照らしつける太陽の下で土方は一人ごちる。ガゴン、と音を鳴らした自販機から缶コーヒーを取り出すと勢いよく飲む。
「おまけにこのクソ暑いのに人探しとはよ。もうどうにでもしてくれって」
「そんなに暑いなら俺が夏服作ってあげますぜ」
土方は声がした方へ振り返ろうとするが、それより先に自身の肩に向かって振り下ろされた刀に気が付き、すんでのところで躱す。
「動いちゃ危ないッスよ〜」
「そうでさァ。せっかくノースリーブにしてやろうと思ったのに」
「嘘つけェェェ!明らかに腕ごと斬り落とすつもりだったろうが!!」
「土方さんもどうです、ロッカーになれやすぜィ」
「誰が着るか!明らかに悪ふざけが生み出した産物じゃねぇーか!」
沖田と一希が開発したという、いつもの制服の袖を肩から切り落としただけのノースリーブの制服を薦められるが、土方は当然断った。
「おーい、捜査の方はどうだ?」
しかし、後ろから現れた近藤は上裸の上にそのノースリーブ制服を着ていて、その姿を見た土方は言葉を失う。
「潜伏した攘夷浪士なら目星はつくッスけど…探し人があの方じゃお手上げッスよ」
「お姫さんが何を思って家出なんざしたんだか……人間 立場が変わりゃ悩みも変わるってもんだ。俺には姫さんの悩みなんざ検討もつかねぇ」
制服についてもう言及するのを止めた土方は手がかりとして渡された写真を見ながら、近藤へ状況を伝える。
「姫さんとはいえ年頃の娘に変わりない。きっと色々あるんだろう……最近、お父さんの視線が気持ち悪いとか、お父さんの匂いが嫌いとか」
「お父さんばっかじゃねーか」
「綾日ちゃんがいたら早めに検討がついたかもしれんのだがな」
「こんな可憐な姫様とじゃ、月とすっぽんだと思うッスけどね」
「お前、自分の姉に酷い言い様だな?」
「まず江戸の街全てを正攻法で捜すなんざ無理があるんでさァ。ここはひとつパーティでも開いて姫さんを誘き出しやしょう!」
「そんな昔話みてぇな罠に引っかかるのはお前だけだ」
「大丈夫ですぜ 土方さん、パーティはパーティでもバーベキューパーティでさァ」
「スイカ割りも追加すれば完璧ッスね!」
「何が大丈夫で完璧なんだ?お前らが大丈夫か?」
一向に捜査が進みそうにないまま街中を歩いていると山崎が局長!と急いだ様子で駆けて来た。
「どうした!山崎」
「目撃情報が。どうやら姫様はかぶき町へ向かったようです」
「かぶき町?!よりによってタチの悪い……」
いつも通り、監察としての仕事を報告する山崎だが、彼も肩からバッサリ切り落とされたノースリーブ制服を着ているのを見て、土方は再び顔を引き攣らすのだった。
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