姉弟波乱組
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
どこからともなく漂う花の香りと暖かい日差しに綾日は心を躍らせていた。今日は珍しく黒い隊服ではなく、隊士たちから譲ってもらったおさがりの着物を身に纏っている。
そして近藤を筆頭に一緒に歩いている皆も彼女と同じく隊服ではなく着流しや袴を着ていた。
「花見なんて久しぶりだ〜!」
屯所に出る前からワクワクしている綾日は誰かに伝える訳でもなくそう呟く。わいわいと皆も盛り上がる中、誰かが「ならめいっぱい楽しもうぜ」と返してくれる。そんな何気ないやり取りが心地よくて無意識に笑顔が綻ぶ。
「ずっとバタバタと忙しかったからなァ。今日は綾日ちゃんと一希君の歓迎会も兼ねてるから楽しんでくれ!」
「それは嬉しいけど!近藤さん、ちゃん付けはやめて下さいって!女ってことは内密でしょう?」
「あ〜悪い悪い。確かに内密だが女の子なのは事実だし、ついなぁ」
反省してるのかしてないのか分からない態度に、仕方ないなと小さく溜息をつく。綾日は内密云々もあるが、こんな性格上、ちゃん付けで呼ばれるのはむず痒いようで止めて欲しいみたいだ。
「近藤さんぐらいッスよ、姉貴を女として扱うの」
「大体の奴は稽古でボコボコにされてますからねィ。女だからって容赦した日にゃ般若でさァ」
一希や沖田の発言に近藤は目を丸くする。しかし近くで聞いていた隊士たちは2人の発言に肯定するように頷いたり、返事をしている。綾日も否定はしないが、般若と言われ少し複雑な気分だった。
「ま、その分変な気ぃ遣わなくていいから楽だけどよ」
苦笑いする綾日の近くにいた原田が彼女の肩を組みながら笑い、反対側には山崎がやれやれとした顔で横に並ぶ。
「この前の護衛の時なんて副長や沖田隊長に負けず劣らず先陣切ってたでしょ」
「今日も花見だってのに朝から稽古だぜ?」
「ああ、副長にもご教授してもらってたね」
「右之 も退も見てたのか?!」
「副長に扱 かれる奴なんざ珍しいんでね〜」
本当に女かよ、と豪快に笑う原田に、見てたなら稽古に付き合って欲しかっただなんて言えば、話を終始聞いていた近藤は「すっかりうちのエースだな!」と自慢げな笑顔を見せてくれる。
「そういえば怪我した局長のためにたくさん泣いたんだって?」
「はぁ?!誰から聞いた?!」
「総悟が言いふらしてたッスよ」
「やっぱりアンタかァァァ!!!」
山崎から思わぬ話題を振られ、皆に知られたくなかった事実がいつの間にか広まっていて顔が赤くなる。そして、その元凶である沖田を追いかけ回す。そんな様子を見て周りは笑っていたのだった。
*
街を抜け、満開の桜が覆う広場へ着く。
実は真選組は毎年同じ場所で花見をしているというので、その近くまで歩いたが、既に複数人が花見をしているようだった。
そして、近藤はそこにいる優しい笑顔の女性を見つけると、いつの間にか紛れ込んでいた。
「仕方ない奴らだな〜!お妙さん、俺が食べるのでこのタッパーに入れておいてください!」
「何レギュラーみたいな顔でいんだ!ゴリラ!!」
笑いながら輪に入った近藤だったが、その女性──お妙にアッパーされ吹っ飛んで倒れ、そのまま追い討ちをかけるように彼女は近藤を殴り続ける。
「まだあのストーカー被害にあってたのか。町奉行に相談した方がいいって」
「いや、あの人が警察らしいんですよ」
「世も末だな」
一緒に花見に来ていた銀時が、隣にいる眼鏡の少年──新八に興味無さそうに返すと後ろから、悪かったな、と低い声が落とされる。
「おうおう、むさ苦しい連中がぞろぞろと。何の用ですか?キノコ狩りですか?」
「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見の際に使う特別席だ」
「どーゆー言い掛かりだ?んなもんどこでも同じだろうが、チンピラ警察24時かてめーら!」
「同じじゃねぇ。そこから見る桜は格別なんだよ」
なァ、みんな?と問う土方だが、隊士たちは酒が飲めればどこでもいいと賛同しなかった。そんな態度に顔を引き攣らせつつ、気に食わない銀時のために場所を変えなきゃならないのが癪な土方はこうなった原因を問い詰める。
「大体さっき一足先に山崎を場所取りに行かせたはずだろ!どこ行きやがった?アイツ」
「ミントンやってるぜミントン」
綾日は、少し離れた場所で今日も元気にラケットを素振りをする山崎を指さして答える。今回は仕事ではないとはいえ、場所取りを放棄した彼にもちろん土方は怒鳴りながら殴りに行った。
「まァ、とにかくそうゆうことなんだ。こちらも毎年恒例行事なんでね、おいそれと変更できん。お妙さんを残して去ってもらおうか」
ようやくお妙の拳から抜け出した近藤は性懲りもなく彼女を要求しつつ立ち退くよう伝える。しかし土方はそれを許さなかった。
「いや、お妙さんごと去ってもらおうか」
「いや、お妙さんはダメだってば。せっかくだし綾日ちゃんの女友達としてどうだろう?」
近藤さんんんん?!!おれをダシにしないで欲しいし、何よりさっき注意したちゃん付けぇぇぇ!!!フラグ回収早すぎでしょ!!
言いたいことが多すぎて思わず「ん゙ん゙ッ」と唸り声しか出てこなかった。しかしそんな綾日には気にもとめず、銀時たちは勝手に進みかける話に待ったをかける。
「何 勝手ぬかしてんだ。幕臣だか何だか知らねーが、俺たちをどかしてーならブルドーザー持ってこいよ」
「ハーゲンダッツ1ダースもってこいよ」
「フライドチキンの皮持ってこいヨ」
「案外アンタら簡単に動くな…」
要求にしては些か安いのでは?と思うが、一切退く気のない彼らに真選組の皆も対抗する気満々だ。土方に至っては先日の屋根の上での借りを返すつもりで鯉口を斬る。
「待ちなせェ! 堅気の皆さんがまったりこいてる場でチャンバラとはいただけねぇや。ここはひとつ花見らしく決着つけましょーや」
一触即発な空気を打ち破ったのは沖田だった。
必然とそこにいる全員が彼へ注目すれば、沖田と一希は何故かヘルメットを被り、ピコピコハンマーを持っていた。
「第1回陣地争奪…叩いてかぶってジャンケンポン大会ぃぃぃ!!!」
「ドンドンパフパフ〜!!」
「花見 関係ねーじゃん!!!」
沖田のテンション高めのタイトルコールにちょっと古めの盛り上げ方をする一希に、全員からツッコミが入ったのは言うまでもなかったのだった。
→
そして近藤を筆頭に一緒に歩いている皆も彼女と同じく隊服ではなく着流しや袴を着ていた。
「花見なんて久しぶりだ〜!」
屯所に出る前からワクワクしている綾日は誰かに伝える訳でもなくそう呟く。わいわいと皆も盛り上がる中、誰かが「ならめいっぱい楽しもうぜ」と返してくれる。そんな何気ないやり取りが心地よくて無意識に笑顔が綻ぶ。
「ずっとバタバタと忙しかったからなァ。今日は綾日ちゃんと一希君の歓迎会も兼ねてるから楽しんでくれ!」
「それは嬉しいけど!近藤さん、ちゃん付けはやめて下さいって!女ってことは内密でしょう?」
「あ〜悪い悪い。確かに内密だが女の子なのは事実だし、ついなぁ」
反省してるのかしてないのか分からない態度に、仕方ないなと小さく溜息をつく。綾日は内密云々もあるが、こんな性格上、ちゃん付けで呼ばれるのはむず痒いようで止めて欲しいみたいだ。
「近藤さんぐらいッスよ、姉貴を女として扱うの」
「大体の奴は稽古でボコボコにされてますからねィ。女だからって容赦した日にゃ般若でさァ」
一希や沖田の発言に近藤は目を丸くする。しかし近くで聞いていた隊士たちは2人の発言に肯定するように頷いたり、返事をしている。綾日も否定はしないが、般若と言われ少し複雑な気分だった。
「ま、その分変な気ぃ遣わなくていいから楽だけどよ」
苦笑いする綾日の近くにいた原田が彼女の肩を組みながら笑い、反対側には山崎がやれやれとした顔で横に並ぶ。
「この前の護衛の時なんて副長や沖田隊長に負けず劣らず先陣切ってたでしょ」
「今日も花見だってのに朝から稽古だぜ?」
「ああ、副長にもご教授してもらってたね」
「
「副長に
本当に女かよ、と豪快に笑う原田に、見てたなら稽古に付き合って欲しかっただなんて言えば、話を終始聞いていた近藤は「すっかりうちのエースだな!」と自慢げな笑顔を見せてくれる。
「そういえば怪我した局長のためにたくさん泣いたんだって?」
「はぁ?!誰から聞いた?!」
「総悟が言いふらしてたッスよ」
「やっぱりアンタかァァァ!!!」
山崎から思わぬ話題を振られ、皆に知られたくなかった事実がいつの間にか広まっていて顔が赤くなる。そして、その元凶である沖田を追いかけ回す。そんな様子を見て周りは笑っていたのだった。
*
街を抜け、満開の桜が覆う広場へ着く。
実は真選組は毎年同じ場所で花見をしているというので、その近くまで歩いたが、既に複数人が花見をしているようだった。
そして、近藤はそこにいる優しい笑顔の女性を見つけると、いつの間にか紛れ込んでいた。
「仕方ない奴らだな〜!お妙さん、俺が食べるのでこのタッパーに入れておいてください!」
「何レギュラーみたいな顔でいんだ!ゴリラ!!」
笑いながら輪に入った近藤だったが、その女性──お妙にアッパーされ吹っ飛んで倒れ、そのまま追い討ちをかけるように彼女は近藤を殴り続ける。
「まだあのストーカー被害にあってたのか。町奉行に相談した方がいいって」
「いや、あの人が警察らしいんですよ」
「世も末だな」
一緒に花見に来ていた銀時が、隣にいる眼鏡の少年──新八に興味無さそうに返すと後ろから、悪かったな、と低い声が落とされる。
「おうおう、むさ苦しい連中がぞろぞろと。何の用ですか?キノコ狩りですか?」
「そこをどけ。そこは毎年真選組が花見の際に使う特別席だ」
「どーゆー言い掛かりだ?んなもんどこでも同じだろうが、チンピラ警察24時かてめーら!」
「同じじゃねぇ。そこから見る桜は格別なんだよ」
なァ、みんな?と問う土方だが、隊士たちは酒が飲めればどこでもいいと賛同しなかった。そんな態度に顔を引き攣らせつつ、気に食わない銀時のために場所を変えなきゃならないのが癪な土方はこうなった原因を問い詰める。
「大体さっき一足先に山崎を場所取りに行かせたはずだろ!どこ行きやがった?アイツ」
「ミントンやってるぜミントン」
綾日は、少し離れた場所で今日も元気にラケットを素振りをする山崎を指さして答える。今回は仕事ではないとはいえ、場所取りを放棄した彼にもちろん土方は怒鳴りながら殴りに行った。
「まァ、とにかくそうゆうことなんだ。こちらも毎年恒例行事なんでね、おいそれと変更できん。お妙さんを残して去ってもらおうか」
ようやくお妙の拳から抜け出した近藤は性懲りもなく彼女を要求しつつ立ち退くよう伝える。しかし土方はそれを許さなかった。
「いや、お妙さんごと去ってもらおうか」
「いや、お妙さんはダメだってば。せっかくだし綾日ちゃんの女友達としてどうだろう?」
近藤さんんんん?!!おれをダシにしないで欲しいし、何よりさっき注意したちゃん付けぇぇぇ!!!フラグ回収早すぎでしょ!!
言いたいことが多すぎて思わず「ん゙ん゙ッ」と唸り声しか出てこなかった。しかしそんな綾日には気にもとめず、銀時たちは勝手に進みかける話に待ったをかける。
「何 勝手ぬかしてんだ。幕臣だか何だか知らねーが、俺たちをどかしてーならブルドーザー持ってこいよ」
「ハーゲンダッツ1ダースもってこいよ」
「フライドチキンの皮持ってこいヨ」
「案外アンタら簡単に動くな…」
要求にしては些か安いのでは?と思うが、一切退く気のない彼らに真選組の皆も対抗する気満々だ。土方に至っては先日の屋根の上での借りを返すつもりで鯉口を斬る。
「待ちなせェ! 堅気の皆さんがまったりこいてる場でチャンバラとはいただけねぇや。ここはひとつ花見らしく決着つけましょーや」
一触即発な空気を打ち破ったのは沖田だった。
必然とそこにいる全員が彼へ注目すれば、沖田と一希は何故かヘルメットを被り、ピコピコハンマーを持っていた。
「第1回陣地争奪…叩いてかぶってジャンケンポン大会ぃぃぃ!!!」
「ドンドンパフパフ〜!!」
「花見 関係ねーじゃん!!!」
沖田のテンション高めのタイトルコールにちょっと古めの盛り上げ方をする一希に、全員からツッコミが入ったのは言うまでもなかったのだった。
→