姉弟波乱組
名前
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「ホシは廻天党という攘夷派浪士集団。桂とは別の組織ですが、負けず劣らず過激な連中です」
「そうか。今回のことは俺の責任だ、指揮系統から配置まで全ての面で甘かった」
もっかい仕切り直しだ、と立ち上がる土方に原田が引き止める。
「副長、あのガマが言ったこと聞いたかよ!あんな事言われてまだ奴を護るってのか?!」
原田だけでなくそこにいる全員が昼間の襲撃時の禽夜の態度に不信感を募らせているようだ。そして、山崎が決定的な証拠を突き付ける。
「勝手ですが、この屋敷色々調べてみました。倉庫からどっさり
秩序を守ることが仕事なのに、罪を犯した幕府の役人を護るなんてどれほど不義理なことか。忠義を掲げたはずの幕府へ疑念を抱く。そう話す山崎に土方が何を今更、と遮ると襖を開け一歩踏み出す。
「てめーらの剣は何のためにある?幕府を護るためか?将軍護るためか?…俺は違う」
否定した土方は学も居場所もなく、剣しか脳がなかった自分たちを迎え入れ、廃刀令で剣も道場さえも失おうが見捨てないでくれたのは誰か、失くした剣をもう一度取り戻してくれたのは誰かと皆に問う。
「…幕府でも将軍でもねェ。俺の大将はあの頃から
前を見据えたまま自分が
「大将が護るって言ったんなら仕方ねェ。俺はそいつがどんな奴だろうが護るだけだ。気に食わねーなら帰れ、俺は止めねーよ」
それだけ言うとそのまま屋敷の警備に戻ってしまう。
屋敷内を少し歩くと、入口近くで護衛対象であるはずの禽夜を丸太に括りつけ、その足元で焚き火をしている沖田と姉弟の姿を見つけた。
「お前ら何してんのォォォ!?!!」
「まだ夜は冷え込むからな!暖かいぞ?」
「いや、死ぬだろうが!!」
「大丈夫大丈夫、死んでませんぜ。
要は護ればいいんでしょ?これで敵を誘き出してパパッと一掃、攻めの護りでさァ」
得意げに作戦を説明する沖田に酷い仕打ちをされている禽夜は当然の如く文句を言う。その口に彼は容赦なくまだ燃やしていない薪を詰め込んでいく。
「土方さん、俺もアンタと同じでさァ。早い話、ここにいるのは近藤さんが好きでしてね」
口に薪を詰め込む手は止めず、沖田も真選組にいる理由を洩した。
「でも何分あの人は人が良すぎらァ。他人のいいところを見つけるのは得意だが、悪いところは見ようとしねぇ。
俺や土方さんみたいな性悪がいて、丁度いいんですよ真選組は」
達観したように話す彼にフッと土方は笑う。
「あー…確かに今夜は冷え込むな。薪をもっと焚け総悟」
「はいよっ!」
沖田の作戦に賛同して土方も暖を取り始めた。
これ以上焚かれたら本当に死んでしまうと焦る禽夜は必死に薪を詰め込まれた口を動かすが2人は気にもとめない。
沖田と最初から焚き火をしていた綾日は2人のやり取りを見て、隣にいる一希に呟く。
「やっぱりいいよなぁ、あーゆー信頼関係」
「仕方ないけど、羨ましいッスよね」
ね、と姉弟は互いを見合った。すると、銃声音がし、禽夜の口に詰め込まれた薪に弾丸が掠める。
飛んできた方向へ視線をやると、作戦が成功したのか、開かれた門前には『天誅』を掲げた攘夷志士らが集まっていた。
「どけェ、幕府の犬ども!貴様らが如きにわか侍が真の侍に勝てると思うてか」
「おいでなすった」
「よく吠えるッスね、どっちが犬だか」
「存分に暴れてやんよ!」
「派手にいくとしよーや」
鞘から刀を抜きそれぞれ構える。
「まったく…喧嘩っ早い奴らよ」
いざ、と踏み込もうとした瞬間、後ろから声がして視線だけ振り返る。そこには着流しのままの近藤と仲間達が刀を構えて揃っていた。
「あの4人に遅れを取るな!あのバカガエルを護れェェェ!!!」
近藤の号令に全員が敵に向かって駆け出す。
4人は少し口角を上げると、仲間達と一緒に攘夷志士と次々に刀を交えていくのだった。
翌日の新聞には『おてがら真選組、攘夷志士大量検挙』と大きく掲載され、幕府の要人であった禽夜と犯罪シンジゲートとの癒着についても白日のもとに晒されるのであった。
To Be Continued.
R2.7.8.wed