姉弟波乱組
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日常になりつつあるこの生活を維持するだけで
手一杯だし、満足してたのかもしれない。
でも、それじゃ前に進める訳がなかった…―。
もう馴染みとなった朝の会議室。
今日も大江戸を守るためのミーティングを行っているのだが、先日、宇宙海賊『春雨』の一派だと思われる船が誰かの手によって沈没したという情報が入り、各々ざわざわと話し込んでいた。
この間も会議中に騒ぎ、土方に怒鳴られたばかりというのにどうも隊士達は懲りてないようだ。近藤は仕方なく土方の名を呼ぶ。
彼は近藤の気持ちを汲み取り、話を聞かぬ隊士達にバズーカを放った。
「えー皆もう知ってると思うが、春雨の一派と思われる船が沈没した。しかも聞いて驚けコノヤロー、なんと奴らを壊滅させたのはたった2人の侍らしい…」
「え゙え゙え゙!!まじっすか?!」
「白々しい…もっとナチュラルにできねーのか」
「トシ、もういい、話が進まん」
ガチャリ、ともう一度隊士達にバズーカを発砲しようとする土方を制す。そしてようやく近藤は本題へと入る。
「この2人のうち1人は攘夷党の桂だという情報がある。春雨の連中は大量の麻薬を江戸で売り捌いていたからな…攘夷党でなくとも連中を許せんのは分かる。
だが、問題はここからだ。その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚噛んでいたという噂がある」
よくある話だった。円滑に密売ができるよう協力をする代わりに利益の一部を海賊から受け取っていた役人がいる。
本当か否かはまだ調査中ではあるが、その噂を聞きつけた攘夷浪士がその役人の暗殺を画策している。本当であれば確かに大問題だが、調査中である以上、攘夷浪士に勝手なことをされる訳にはいかない。
本日はその役人の護衛だと近藤が話し、続いて土方が隊士達の配置場所などを確認していくのだった。
「この野郎……」
早速、会議の後、護衛のため役人が匿われている屋敷へと移動した真選組だったが、屋敷の庭で目の書かれたアイマスクを着け、居眠りをする沖田と一希を見つけた土方は怒りを露わにしていた。
「寝ている時まで人をおちょくった顔しやがって。おい、起きろ!警備中に居眠りとはどうゆう了見だコラ」
「何なんスか、今日は日曜ッスよー」
「ったく、おちょこちょいですねィ」
「今日は火曜だ!!」
ふわぁ、と欠伸や伸びをしながら答える2人の胸ぐらを掴む。
「てめーら、こうしている間に攘夷浪士が乗り込んで来たらどーすんだ?仕事なめんなよコラ」
「僕らがいつ仕事なめたって言うんスか!」
「俺らがなめてんのは土方さんだけでさァ!」
「よーし勝負だ!剣を抜けェェェ!!」
「仕事中に何遊んでんだァァァ!!修学旅行気分かコノヤロー!!」
いつの間に仕込んだのかと思うほど、息の合った返答についに土方も怒鳴り散らす。しかし、そんな3人の後ろから近藤が現れ、騒ぐ彼らにゲンコツを喰らわせた。
「お前が一番うるさいケロ!!ただでさえ気が立っているというのに!!」
だがまたその近藤の後ろから蛙の姿をした天人が、彼の頭を殴り怒鳴ったので「スンマセン」と謝る。彼こそが本日の護衛対象の官僚、禽夜 だ。あからさまに機嫌の悪い彼は、役立たずの猿どもケロ、と捨て台詞を吐きながら去って行く。
「何でィ、こっちは命がけで身辺警護してやってるというのに」
「お前は寝てただろ」
「幕府の官僚だか知らないッスけど、本当にあんな蛙を護らなきゃダメッスか」
既に小さくなった天人の背中を見ながら問う。近藤は近くの縁側にドカッと座ると腕を組みながら答える。
「一希君、俺らは幕府に拾われた身だ。幕府がなければ今の俺達はない」
近藤に続いて沖田も土方も縁側に座る。
「恩に報い、忠義を尽くすのは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある!」
「それは重々承知してるッスけど…」
仮入隊してから近藤から何度か聞かされている話だ。しかし今回の仕事は納得いかないようで。
「だって、海賊とつるんでたかもしれねぇ奴ですぜ?どうもノれねぇや、ねぇ土方さん?」
「俺はいつでもノリノリだよ」
一希と同じ意見だった沖田は素直に伝える。同調を求められた土方は否定しながら煙草をふかす。
しかし、他の隊士達も沖田や一希と同じ気持ちのようで屋敷中に配置されている隊士達の士気は低かった。
「アレを見なせェ。皆やる気をなくしちまって……山崎なんかミントンやってますぜ、ミントン」
「あ、今日は姉貴も一緒ッスね」
「桜海、山崎ィィィ!!何やってんだてめーらァァァ!!」
少し離れた所で仲良くバトミントンをしている2人を見つけ、土方は怒鳴りながら走り出した。サボっているのがバレた綾日も山崎も逃げ出すが、逃げきれなかった山崎は彼にボコボコに殴られている。
土方が居なくなって空いた沖田の隣に一希は座る。
「総悟も一希君もあまりごちゃごちゃ考えるのはやめとけ。目の前で命狙われている奴がいたら良い奴だろうと悪い奴だろうと手ェ差し伸べる……それが人間のあるべき姿ってもんよ」
当然のように語る近藤を見ていると、どこかへ行こうとする禽夜が目に入る。近藤は慌てて彼の元へと走り出してしまった。その様子を見て沖田は少し呆れる。
「ハァ、底無しのお人好しだ あの人ァ」
「そうじゃなきゃ、僕らだって保護してくれないッスよ」
「間違いねぇや」
どれだけ調べても身元の情報がない綾日と一希を今日まで隊士として接してくれた彼を思い出す。そして、同じく接してくれる沖田も変わらないと伝える。
「少しでも変なことすれば斬るつもりですがねィ。でもまあ、アンタら面白ぇし斬るのは勿体ないと思っただけでさァ」
「僕、総悟のそういうところ好きッスよ!」
「よせやい、俺ァ男には興味ねーでさァ」
「そういう意味じゃないッスから!!」
ケラケラ笑う沖田に危うく誤解されるところだった一希は、もう、と苦笑いするしかなかった。
そんな穏やかな時間は、一発の発砲音で幕を下ろしたのだった。
→
手一杯だし、満足してたのかもしれない。
でも、それじゃ前に進める訳がなかった…―。
雨蛙×泣言
男には蛙に触れたら1人前という謎ルールがある
男には蛙に触れたら1人前という謎ルールがある
もう馴染みとなった朝の会議室。
今日も大江戸を守るためのミーティングを行っているのだが、先日、宇宙海賊『春雨』の一派だと思われる船が誰かの手によって沈没したという情報が入り、各々ざわざわと話し込んでいた。
この間も会議中に騒ぎ、土方に怒鳴られたばかりというのにどうも隊士達は懲りてないようだ。近藤は仕方なく土方の名を呼ぶ。
彼は近藤の気持ちを汲み取り、話を聞かぬ隊士達にバズーカを放った。
「えー皆もう知ってると思うが、春雨の一派と思われる船が沈没した。しかも聞いて驚けコノヤロー、なんと奴らを壊滅させたのはたった2人の侍らしい…」
「え゙え゙え゙!!まじっすか?!」
「白々しい…もっとナチュラルにできねーのか」
「トシ、もういい、話が進まん」
ガチャリ、ともう一度隊士達にバズーカを発砲しようとする土方を制す。そしてようやく近藤は本題へと入る。
「この2人のうち1人は攘夷党の桂だという情報がある。春雨の連中は大量の麻薬を江戸で売り捌いていたからな…攘夷党でなくとも連中を許せんのは分かる。
だが、問題はここからだ。その麻薬の密売に幕府の官僚が一枚噛んでいたという噂がある」
よくある話だった。円滑に密売ができるよう協力をする代わりに利益の一部を海賊から受け取っていた役人がいる。
本当か否かはまだ調査中ではあるが、その噂を聞きつけた攘夷浪士がその役人の暗殺を画策している。本当であれば確かに大問題だが、調査中である以上、攘夷浪士に勝手なことをされる訳にはいかない。
本日はその役人の護衛だと近藤が話し、続いて土方が隊士達の配置場所などを確認していくのだった。
「この野郎……」
早速、会議の後、護衛のため役人が匿われている屋敷へと移動した真選組だったが、屋敷の庭で目の書かれたアイマスクを着け、居眠りをする沖田と一希を見つけた土方は怒りを露わにしていた。
「寝ている時まで人をおちょくった顔しやがって。おい、起きろ!警備中に居眠りとはどうゆう了見だコラ」
「何なんスか、今日は日曜ッスよー」
「ったく、おちょこちょいですねィ」
「今日は火曜だ!!」
ふわぁ、と欠伸や伸びをしながら答える2人の胸ぐらを掴む。
「てめーら、こうしている間に攘夷浪士が乗り込んで来たらどーすんだ?仕事なめんなよコラ」
「僕らがいつ仕事なめたって言うんスか!」
「俺らがなめてんのは土方さんだけでさァ!」
「よーし勝負だ!剣を抜けェェェ!!」
「仕事中に何遊んでんだァァァ!!修学旅行気分かコノヤロー!!」
いつの間に仕込んだのかと思うほど、息の合った返答についに土方も怒鳴り散らす。しかし、そんな3人の後ろから近藤が現れ、騒ぐ彼らにゲンコツを喰らわせた。
「お前が一番うるさいケロ!!ただでさえ気が立っているというのに!!」
だがまたその近藤の後ろから蛙の姿をした天人が、彼の頭を殴り怒鳴ったので「スンマセン」と謝る。彼こそが本日の護衛対象の官僚、
「何でィ、こっちは命がけで身辺警護してやってるというのに」
「お前は寝てただろ」
「幕府の官僚だか知らないッスけど、本当にあんな蛙を護らなきゃダメッスか」
既に小さくなった天人の背中を見ながら問う。近藤は近くの縁側にドカッと座ると腕を組みながら答える。
「一希君、俺らは幕府に拾われた身だ。幕府がなければ今の俺達はない」
近藤に続いて沖田も土方も縁側に座る。
「恩に報い、忠義を尽くすのは武士の本懐。真選組の剣は幕府を護るためにある!」
「それは重々承知してるッスけど…」
仮入隊してから近藤から何度か聞かされている話だ。しかし今回の仕事は納得いかないようで。
「だって、海賊とつるんでたかもしれねぇ奴ですぜ?どうもノれねぇや、ねぇ土方さん?」
「俺はいつでもノリノリだよ」
一希と同じ意見だった沖田は素直に伝える。同調を求められた土方は否定しながら煙草をふかす。
しかし、他の隊士達も沖田や一希と同じ気持ちのようで屋敷中に配置されている隊士達の士気は低かった。
「アレを見なせェ。皆やる気をなくしちまって……山崎なんかミントンやってますぜ、ミントン」
「あ、今日は姉貴も一緒ッスね」
「桜海、山崎ィィィ!!何やってんだてめーらァァァ!!」
少し離れた所で仲良くバトミントンをしている2人を見つけ、土方は怒鳴りながら走り出した。サボっているのがバレた綾日も山崎も逃げ出すが、逃げきれなかった山崎は彼にボコボコに殴られている。
土方が居なくなって空いた沖田の隣に一希は座る。
「総悟も一希君もあまりごちゃごちゃ考えるのはやめとけ。目の前で命狙われている奴がいたら良い奴だろうと悪い奴だろうと手ェ差し伸べる……それが人間のあるべき姿ってもんよ」
当然のように語る近藤を見ていると、どこかへ行こうとする禽夜が目に入る。近藤は慌てて彼の元へと走り出してしまった。その様子を見て沖田は少し呆れる。
「ハァ、底無しのお人好しだ あの人ァ」
「そうじゃなきゃ、僕らだって保護してくれないッスよ」
「間違いねぇや」
どれだけ調べても身元の情報がない綾日と一希を今日まで隊士として接してくれた彼を思い出す。そして、同じく接してくれる沖田も変わらないと伝える。
「少しでも変なことすれば斬るつもりですがねィ。でもまあ、アンタら面白ぇし斬るのは勿体ないと思っただけでさァ」
「僕、総悟のそういうところ好きッスよ!」
「よせやい、俺ァ男には興味ねーでさァ」
「そういう意味じゃないッスから!!」
ケラケラ笑う沖田に危うく誤解されるところだった一希は、もう、と苦笑いするしかなかった。
そんな穏やかな時間は、一発の発砲音で幕を下ろしたのだった。
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