姉弟波乱組
名前
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あの野郎わずか数日で人のこと忘れやがって。総悟、ちょっと刀貸せ」
斬るだけなら自身の刀があるのに、と少し不思議そうにするが彼の言う通りに刀を渡すと、銀髪の侍を追うように梯子を登って行く。
「さてと、俺らは高みの見物でもしやすかィ」
「そうッスね!」
沖田と一希は殺り合うであろう2人を見るための場所へと歩き出すが、綾日は動こうとしない。
「姉貴?」
「おれ、近くで見ててもいいと思う?」
一希に声をかけられた綾日はソワソワしながら2人に問うた。どうやら土方の後を追いかけたそうだ。
「邪魔じゃなければ大丈夫と思うッスけど…」
「まあ、邪魔だったら一緒に斬られるだけでさァ」
好きにしな、と言って沖田は去っていく。一希は綾日に少しだけ心配そうな顔を見せるが、彼女は大丈夫だと笑うので、沖田の後をついて行くことにした。
綾日が2人が小さくなるまで見送ってる間、土方は銀髪の侍に声をかけていた。
「爆弾処理の次は屋根の修理か?節操のねぇ野郎だ、一体何がしてぇ」
「爆弾?…ああ、お前あん時の」
「やっと思い出したか。近藤さんを負かす奴がいるなんざ信じれなかったが、てめぇならあり得ない話でもねぇ」
「近藤さん?」
「女取り合った仲なんだろ? そんなにイイ女、俺にも紹介してくれよ」
沖田から受け取った刀を銀髪侍に投げ渡す。先日、決闘をした男の知り合いだと理解したが、刀を渡され、何の真似だ、と問うた瞬間、土方が踏み込みながら自身の刀を打ち込んできた。
「始まった…!!」
ガキィィン!と刀を打ち付けた音が響く。その音に気が付いた綾日は慌てて梯子に手をかける。
銀髪の侍は鞘を抜く間もないためそのまま太刀を受け止めたが、耐えることができず奥へ吹っ飛んでしまう。
「ゴリラだろーがな、
吹っ飛んだ彼を追いかけながら話す。
奥へと行った2人を追いかけるように綾日も屋根に登り、邪魔にならぬよう端に陣取った。
「誰にも俺たちの真選組は汚させねぇ。その道を遮るものがあるならば剣で……叩き斬るのみよォォ!!」
土方は、容赦無く銀髪の侍に向かって刀を振り下ろす。舞い上がった砂埃の中、後ろから先程の攻撃を躱した彼が現れる。
「刃物をプラプラ振り回すんじゃねぇ!!」
銀髪の彼は土方の頭に飛び蹴りをしたが、土方は受身を取り、下から刀を振り上げて銀髪の侍の肩を斬った。肩の傷口から血が溢れだす。
「銀さーん?てめっ遊んでたらギャラ払わねぇぞ」
「うるせー!警察呼べ、警察!!」
「俺が警察だよ」
「…そうだったな。代も末だな、おい」
「そうだな」
ずっと肩にかけていたタオルで傷口を抑える。
肩を斬られたというのに未だ貸した刀を抜かない彼の態度に土方は疑問をもつ。何故なら決闘の際、汚い手を使ってまで近藤を負かしたからだ。しかし、自分の命が狙われている今でさえ、そんな素振りを見せない彼が不思議だった。
読めねぇ野郎だ、と考えていると銀髪の侍はようやく刀を鞘から抜いた。
「(ふん…いよいよくるかよ。命のやりとりといこうか!!)」
ダッ、と大きく踏み込み最後の一手を振り下ろす。
斬った、と思った土方の目の前には銀髪の侍の姿はなく、2つに裂けた血の付いたタオルが舞っていた。躱されたと気づいた時には真横で刀を振りかぶっていた。
「トシ……ッ!!」
記憶が曖昧な綾日も土方が斬られると、思わず隠していた身体を起こし彼の名を叫ぶ。しかし、2人の思いとは裏腹に銀髪の侍が斬ったのは土方の刀だった。
「はーい、終了ォ」
「な…」
「いだだ…おいハゲ!俺ちょっと病院行ってくるわ!」
「待て!…てめぇ、情けでもかけたつもりか」
「情けだぁ?んなもん、お前にかける位ならご飯にでもかけるわ」
立ち止まるが振り向くことはなく答える。
「喧嘩ってもんはよ、何かを守るためにやるんだろーが。お前が、真選組を護ろうとしたようによ」
「…護るって、お前は何を護ったってんだ?」
そう問われた彼は一度だけ振り向いた。
「俺の
そう答えると痛む傷口を抑えながら去って行ってしまう。少し離れた所で様子を見ていた沖田は楽しそうに笑う。
「面白ぇ人だ。俺も一戦交わりたくなりましたぜ」
「やめとけ。お前でもキツイぞ、総悟」
隣で一緒に見ていた近藤は、彼は目の前で刃を合わせていても、勝ちも負けも越えた別のところで勝手に戦っているような男だ、と語った。
そして、残された土方はその場へ寝転がり煙草を咥える。
「ワリぃ、近藤さん。俺も負けちまったよ」
その言葉は煙とともに空へ消えたのだった。
To Be Continued.
R2.06.10.wed